東京新旧写真比較(1981/2007) No.3
丸の内界隈だけでなく、大手町界隈でも次々にビルが建て替えられて、街の高層化は進んだ。
Photo 1981(ノーマル時)、Photo 2007.1.27(マウスオン)
ビル群の内、皇居に近いあたりの建物はあまり変わっていないが、その後方に100〜150mクラスのビルが群を成して建ち並ぶ。西新宿ほどではないが、超高層ビルが建ち並ぶ風景が、いつのまにかできている。単独で高くそびえ、目立っていた東京海上ビルは、いつのまにかビル群の中に呑み込まれ、昔のことを知らない若い人なら気にも留めない存在になりつつある。また、81年には東京海上の右側(写真右端)に、日本橋の現みずほ信託銀行が見えているが、今回の写真には山手線の東側の建物は写っていない。
この他、建物以外では、以前は松林しか見えていなかったが、26年の間に丸の内寄りのケヤキの木々が相当大きくなって、松林の背後に見えるようになっている。
写真中の建物で、現存し且つ見えているものは以下。
右方、紅いのが東京海上日動ビル、中央で埋没気味ながら赤い菱形マークがわずかに分かるのが新住友ビル、その左がAIU保険があるAIGビル、その奥はJFEビル。手前左で横長なのがパレスサイドホテル、その左後ろがりそな・マルハビル、後方奥の黒っぽいのが、三菱東京UFJ、更に松の木で半分隠れてるのが三井物産ビル。そして松の左側の塔は東京消防庁丸の内署のもの。
しかしこれら全ては遠景で、近景、中景には既存の建物がない。だから前後の重なり具合の違いを使って撮影ポイントを探すのは苦労しそうだった。街灯も全部替わってしまっている。そんなわけで、広く一直線の歩道上で、撮影ポイントを探すのは難航するかと思われたが、意外なターゲットマークの存在により、この写真の撮影ポイントは予想より簡単に見つかってしまった。
近景では左方に見える松の木が目立つ。このような形の松が歩道近くに生えている場所がないか探してみたら、予想外に簡単に見つかった。なんと、大きさも姿形もほとんど変わっていなかった!
中景の松と、遠景の消防庁の塔や大手町のビルの、画面内での位置関係は、撮影者が数歩移動するだけで大きく変化する。樹木などは四半世紀の間に成長して、大きく変化するだろうから、位置の特定には使えないだろうと思っていたが、そんなことはなかった。街路樹などは植え替えられることもあるが、皇居前広場の松は、街灯などの路上工作物なんかより遙かに長く同位置に留まり、同じ形を保っていた。
皇居外苑は、白砂青松の風景として、丁寧に手入れがされている。これはある意味日本を代表する景観である。松の木も姿形良く剪定され、風景が維持されている。針葉樹の松は、あまり早く成長しないというのもあるのかもしれないが、四半世紀を経て、枝振りがほとんど変わっていなかったのには驚いた。現場を発見したとき、うわーっおんなじだ!と、思わず声をあげてしまったほど。
ところで、伊勢神宮の建物は、式年遷宮によって常に新しく維持されることで、結果的に古代の建築様式を現在に伝えていると云われる。定期的に同じ形の建物に建て替えることで、技法や理念を絶やすことなく伝承することにもなっているそうだ。
皇居前の風景が、定期的な剪定により、丹念に維持管理され守られているのを見たとき、景観を維持するには、改修をせずにそのまま放置するのではなく、絶え間なく手入れをする必要があるのかもしれないなと感じた。
#東京新旧写真比較 千代田区 #街並み 千代田区 #眺望 #高層ビル