「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

       想像力失ったテレビ ある民放先達の新著

2010-11-27 08:24:35 | Weblog
40年前、若い頃開局時のお手伝いをした福島中央テレビ(FCT)の元副社長、佐藤昭さんが新著「会うてこそ」(邑書林 2010年11月)を出版、僕も贈呈を受けた。佐藤さんとは一緒に仕事をしたことはないが、僕と同じ年齢で、長い間、マスコミに勤務していたという共通点があり、共感を呼ぶものがあり、楽しく読まさせて頂いた。

佐藤さんは昭和28年、開局時の日本テレビに入社、放送記者、論説委員などを歴任したあと、同系列の福島中央テレビに出向、同社の副社長をされた。今回の新著は、その長い放送人としての体験などを郡山市のタウン誌「街こおりやま」に連載した随筆と、日本歌人クラブの会員でもある佐藤さんの詠んだ和歌が所載されている。

本のタイトル「会うてこそ」は佐藤さんの「あとがき」によれば、ドイツ人の作家ハンス・カロッサの言葉「人生は出合である」からきている。まさにその通り、著書は佐藤さんの80年にわたる人生の中での多彩なそして豊富な出合が歌人としての目で描かれている。

随筆の一つ「テレビ50年そして」で佐藤さんは民放初のCM-”セイコウ舎の時計が正午をお知らせしますーがフィルムの表裏を逆にしたため、時計の針が逆まわりし、音声が出なかった裏話を紹介している。僕も昭和45年、開局時のFCTで放送事故が続出、スポンサーへ謝罪にかけまわったことを想い出した。

そんな民放開局時から知っている放送人として先達の佐藤さんが、同じ随筆の中で"テレビは世の中を変えた。人間を変えた。いつとはなしに人々は考えることをしなくなり、想像することをやめてしまった”と書かれ、万葉集の柿本人麻呂の「天の海に波たち月の舟星の林に漕ぎ隠るみや」を紹介、万葉人がうらやましいと結ばれているから面白い。

僕は同じ時代の一人として佐藤さんの歌の一つー「白髪も光頭もあれひたすらに昭和を生きて酔いつぶれゆく」ーとまったく同じ思いがする、今日この頃だ。