Chiara, Nesterenko - Attila
当代随一のソプラノのひとりだったマリア・キアーラは、声はリリコであるが、理想的なベルカント唱法、よく通る声はドラマティックな要素を兼ね備え、見事だった。
覇王アッティラを歌うのはボリショイオペラの名歌手ネステレンコ、素晴らしい!
アッティラがローマを狙った史実。
「ゲルマン民族大移動」の原因ともなったフン族の首領アッティラは、ヨーロッパを制覇し、
ローマに迫る。しかし、総督エツイオはローマを護る覚悟、また貴族の娘オダベッラは
女性軍を率い、敗北して捕虜となるが、アッティラに「お前の国の女は逃げ惑うが、イタリアの女は戦うのだ」と言う。
アッティラは笑い、剣を与えるが、やがてそれが自分がオダベッラによって殺されることになるとは思いもしなかった。
ATTILA - GIUSEPPE VERDI - 1985 ( VERONA )
全曲は長いので、フィナーレをどうぞ。1:43:30(1時間43分30秒)あたりからです。
キャスト
Attila - Yevgeny Nesterenko
Ezio - Silvano Carroli
Odabella - Maria Chiara
Foresto - Veriano Luchetti
Uldino - Mario Ferrara
Leone - Gianni Brunelli
これは1985年の「アッティラ」全曲の動画。1:43:30(1時間43分30秒)
からフィナーレ。
オダベッラは父の仇をうつ。
ヴェルディは「イタリア統一運動」を支持、ガリバルディ将軍を英雄と尊敬していた。
当時のイタリアはこの「アッティラ」に酔い、大成功だったが、ヴェルディは悩んだ。
「聴衆はイタリアへの愛国心でこのオペラに熱狂したのではないか。
芸術に対して感動したからではないように思う」と。
それからのヴェルディは「愛国一辺倒」とみられるオペラをやめて、普遍的なドラマを
オペラにした。
しかし、このオダベッラの歌は誰でも歌えるものではない。
私はイタリアのR先生のレッスンで、この歌を持って行ったが「これはマリア・カラスさえ
避けた曲だ。若い時に歌うと喉をこわす」と言われ、あきらめたことがある。
実際にオダベッラを歌って声を潰したソプラノは多い。
マリア・キアーラの歌い方は「安全運転」で、自然だが、言葉に強いアクセントをつけ、
劇的要素を高めている。キアーラ、50歳前の演奏であった。
ローマの英雄、エツイオを歌うシルヴァーノ・カローリには興ざめであった。
カップッチッリだったら、と思う。
それにしてもネステレンコは凄い。
ただ、ロシアオペラにはないヴェルディの強烈なフレージングを乗り切るためか、よく手が
リズムを打つのが気になる。
この上演では、最も重要な「ヴェルディバリトン」が欠けたことだ。
シルヴァーノ・カローリの緊張感の欠けた緩い声ではエツイオは感動できない。
終演後、雷鳴がした。動画にその音が入っている。