ベッラのブログ   soprano lirico spinto Bella Cantabile  ♪ ♫

時事問題を中心にブログを書く日々です。
イタリアオペラのソプラノで趣味は読書(歴女のハシクレ)です。日本が大好き。

学生時代に歌った思い出深いアリア2曲、レナータ・テバルディ、マリア・キアーラの演奏を聴いて

2013年03月06日 | 歌曲
Renata Tebaldi "Senza mamma" Live 1953
・・・1分47秒から「白眉」である。
私が学生だったころ、イタリアの声楽家にこの曲を勉強するように言われ、楽譜を見て「地味な曲だなあ」って思い、
一応勉強してレッスンに持って行った。
歌い込むうちに、この曲の旋律の美しさが歌詞の美しさと相まって、相乗効果を醸し、魂がゆれるような感動、そして
「素晴らしい曲、だけど自分の若さがこれを活かしきれないもどかしさ」も痛感した。
そのまま、他の曲も勉強し、この曲は「いつかきっと」と温めていた。

修道女となったアンジェリカは謎の女性、自分のことを一切語らない。
実は、彼女は貴族の出身で、カトリックで厳しく禁じられている未婚で恋愛をして母となり、生まれたばかりの子どもはよそにやられ、彼女は修道院に追いやられる。
そして、ある日、わが子が亡くなったことを知り、悲嘆にくれるのがこの曲。
作曲したのは「蝶々夫人」「トゥーランドット」などを書いたプッチーニで、彼の姉が修道女で「修道女になる人は事情がある女性がかなりいる」ときき、この曲を書いて修道院に行き、「神様が禁じている自殺を考えたことがあるでしょうか」とこの曲をピアノで演奏すると、修道女たちは涙にくれたという。


このアリアの歌詞は美しい。子どもの死を知って、自分を責めるアンジェリカ、

「おお、お前は聖なる天使よ、お母さんに会えるわね」・・・イタリアの厳しい宗教の戒律から生まれた悲劇、
テバルディの歌は歌っているときはもちろんのこと、ふと黙った時、あふれるやさしさでオーケストラがそれを包み込む。
テバルディは天才だった、そう思った瞬間だった。得難い感動・・・


Maria Chiara La Wally: "Ebben? Ne andr�・ lontana.." - 1977

マリア・キアーラがこれを歌うと何と透明な美しい自然が浮かぶことか。
「おお、お母様、わがいとしい家よ、ヴァリーはここを出ていきます」
はじめて恋をした若い娘が故郷を捨てて家を出ていく決意をした歌で、キアーラがこれを歌ったのは40歳を過ぎていた。


かつて、N先生から「ハムレットを演じるのは若い俳優では無理、年配の俳優にしてはじめて青年を演じることができるのよ」
と言われたことを思う。
芸術というのは難しい。
私はこの曲を21歳で歌ったが、声域や声量でなんとかなる曲ではない。
ベルカントを駆使して世にも美しいフレージングを、音楽と声が送り出さなけれ
ばならないのだ。
デル・モナコは当時の私を「あなたは若すぎる」と言った。多分「幼稚」なイメージだったのだろう。carinaと言ったのだから。
若い時は気が付かないことが多い。でも年齢は必ずしも声を温存していないこともある。
発声練習をしていて、私はまだ大丈夫と思ったけれど・・・

ではマリア・キアーラの歌うベッリーニ「清教徒」
Maria Chiara - I Puritani - Vien diletto in ciel la luna (Rare video)




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