その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

N響C定期/ ビシュコフ/ レクイエム(ヴェルディ)

2013-04-20 22:47:22 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 N響定期の4月Cプロは、セミョーン・ビシュコフさんの指揮によるヴェルディのレクイエム。日本での知名度は分からないけど、ビシュコフさんは私がロンドンでとっても感銘を受けた指揮者の一人です。ロイヤルオペラの指揮で何回か観ているのですが、この人が振ると、オケの音の劇的さが倍増していました。しかも、ヴェルディ「レクイエム」は2011年夏のBBCプロムスで、ビシュコフさん、マリア・ポプラフスカヤさん(ソプラノ)でとても感動した演目(その時の模様はこちら→)。N響との相性はどうだろうかと、ワクワクしながらホール入りしました。

 会場はほぼ満員。3月は定期はお休みでしたので、1月ぶりの定期演奏会で何となくいつもより浮付いた雰囲気が漂っているような気がしました。

 さて、パフォーマンスのほうは、合唱、演奏、独唱の三拍子がハイレベルで揃った素晴らしいものでした。特に印象的だったのは新国立劇場合唱団による合唱。バランス良く安定したハーモニーは、安心して歌声に身をゆだねることができます。「怒りの日」の合唱などは、広いNHKホールが全く広く感じない大合唱。3階の貧民席でも音圧を感じます。

 N響も熱演。いつもながら、ビシュコフはオケを煽りに煽り、N響も食らいつくようについていきます。「怒りの日」ではステージ外の左右のサイドからのトランペットの演奏も入って、ステレオ・サラウンド。教会で共鳴する音のような、聖なる音に聴こえました。ミス?と思うようなところもありましたが、気持ちが入った演奏の中では、気になりません。

 非日本人歌手で固めたソリストたちは、各自其々の持ち味を出していました。印象的だったのは、メゾ・ソプラノのアニタ・ラチヴェリシュヴィリとテノールのディミトリ・ピタス。ラチヴェリシュヴィリの声は華やかなところは余りないのですが、しっかり要所を抑えていて好感が持てます。テノールのピタスは凄い声量で、独唱時はNHKホールを独り占めしているような歌いっぷり。レクイエムと言うより完全なオペラのアリアの世界に浸っていました。期待のポプラフスカヤは、彼女らしい透き通った美声だったのですが、声量がもうひとつで、ちょっと本来の調子ではなかった気がしました。

 ツィートを眺めていると4名の不揃いさを指摘するコメントなどがあり、なるほどと思ったのですが、私はバランスは良いが金太郎雨的に個性なく揃ったソリストの歌声よりは、其々が個性がぶつかった独唱陣のほうが、バランス悪く感じることがあっても好きです(もちろん個性がぶつかり且つバランスが良いのが最高ですが)。そういう点で、なんか今日のソリスト達は如何にも、自己主張の強い非日本人歌手陣のパフォーマンスという感じがして、懐かしい気がしました。

 終演後は大きな拍手、ブラボーに包まれました。聴衆も久しぶりのN響を堪能したのではないでしょうか?ビシュコフさんは是非、また来日して、熱いN響を引き出してほしいです。



第1752回 定期公演 Cプログラム
2013年4月20日(土) 開演 3:00pm
NHKホール

~ヴェルディ生誕200年~
ヴェルディ/レクイエム

指揮:セミョーン・ビシュコフ
ソプラノ:マリナ・ポプラフスカヤ
メゾ・ソプラノ:アニタ・ラチヴェリシュヴィリ
テノール:ディミトリ・ピタス
バス:ユーリ・ヴォロビエフ
合唱:新国立劇場合唱団
コメント (2)
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