N響定期演奏会Bプログラムに足を運んだ。ビシュコフがせっかく来日するのだから、いつものCプロだけでなくBプロも、と言うことで一回券発売日に通話中音にめげず、電話をかけつづけて獲得した執念のチケットである。初めてサントリーホールでN響を、しかもビシュコフ指揮で聴くということで、否が応でも期待は最大値となる。
1曲目は、デュビュニョン作曲の2台のピアノと2つのオーケストラのための協奏曲「バトルフィールド」。2011年の作品で、今回が日本初演である。オケとピアノが左右対称に陣取って、あたかも合戦場のごとく演奏がぶつかる。現代曲ではあるが比較的聴きやすく、楽しめる。ラベック姉妹のピアノはロンドンでも一度聴いたが、相変わらず堂々と爽快なものだった。オケの方は、初演と言うこともあるのか、演奏に手探り感があって印象を受け、演奏にもっと切れがもっとあっても良いと感じたところはあったものの、総体的には満足。しかも、ラベック姉妹は熱烈拍手に応えて、アンコールを2曲もやってくれた。バーンスタインのウエストサイドストーリーからとなんと山田耕筰「赤とんぼ」のデュビュニョン編曲バージョン。お客を楽しませるツボを心得ている。
そして、休憩後のベルリオーズの「幻想交響曲」は更に素晴らしかった。聴いていてN響の団員それぞれが、「幻想」をとっても良く知っていて、自分のものにしているのが、ありありと分かった。個々の音がとっても溌剌としていて、自信が感じられる。加えて、ビシュコフの緩急や強弱を上手くつけた綱さばき。一つ一つのシーンの情景が目に浮かぶ。熱い演奏だが、オーバーヒートではない。美しいが、ただ聴き易いだけではない。力強く、とってもしなやかな演奏だった。ブラボー!
それにしても、B定期が初体験の私は、普段のNHKホールとサントリーホールの音響の違いに愕然とした。サントリーホールは音が優しく豊かに響き渡る。響くと言うよりも生音をダイレクトに浴びている感じのするNHKホールとは全然違う。そして、今日の幻想交響曲はこの福よかな残響が良く似合う音楽。こんな幻想は滅多に聴けるものではない。
最後に一つ思ったこと。でも、満員売り切れだった今夜のコンサートだが、空席もそこそこあった。目視で数えただけでも、40近く空いている。これはもったいなさすぎる。日本のオケも絶対、行けなくなった定期演奏会チケットをリターンチケットとして売り出すリターンチケットのサービスを行うべきだと思う。ロンドンでは当たり前だったこの仕組みにどれだけ救われたことか。あれだけサービス品質の高さを売りにする日本なのに、演奏会のチケット販売に関しては、まだまだサービス度は低い。是非、そのあたりのサービス向上を実現させて、もっと私にBプロの機会を!
<アンコール曲>
第1753回 定期公演 Bプログラム
2013年4月24日
サントリーホール
デュビュニョン/2台のピアノと2つのオーケストラのための協奏曲「バトルフィールド」作品54 (2011)[日本初演]
ベルリオーズ/幻想交響曲 作品14
指揮:セミョーン・ビシュコフ
ピアノ(2台):カティア&マリエル・ラベック