その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

追想 サー・コリン・デイヴィス

2013-04-15 23:58:09 | 日記 (2012.8~)
 一週間の始りとしては最悪だった。新聞休刊日の今朝は、通勤列車でいつもは見ないようにしているスマートフォンをちらちら。すると目に飛び込んできたのは、サー・コリン・デイヴィス(Sir Colin Davis)の訃報を伝えるツイート。寝ぼけ眼が一気に醒めた。

 3年半強のロンドン生活の中で、間違いなく一番聞いた指揮者がサー・コリン。自分の手元の記録だけでも、総裁職(President)にあったロンドン交響楽団(LSO)とのコンビでは10回程、ロイヤルオペラハウスでは3回(「ヘンゼルとグレーテル」、「フィガロの結婚」、「コジ・ファン・トゥッテ」)は聴いている。最後に聴いたのは、昨年の6月26日セントポール寺院でのベルリオーズのレクイエム。あれからまだ1年も経ってないじゃないか!

 LSOとの息の合い方は抜群だった。互いの尊敬と信頼に支えられたコンビのオーラがいつも漂っていた。幾つもの、息が詰まり、涙がほとばしり、胸の鼓動が高まる音楽をこのコンビは聞かせてくれた。

 また、内田光子さんが入ってのサー・コリン、LSOの演奏会も忘れられない。音楽って、こんなに美しくて、優しくて、幸せなものなのだというのを、体に染み込むような演奏で教えてくれた。大袈裟な言い方なのだが、この世のものとは思えない美しさと心底思える音楽があるのである。

 昨年のコンサートで、舞台に登場する姿を見て、体力的な衰えを感じざる得なかったのはとっても心配だった。それでも、演奏が始まるとシャキっとするし、(私には)大ざっぱで適当そうに見える指揮棒から紡ぎだされる音楽は、時に雄大でスケール感一杯だったり、時に心の琴線に触れる繊細なものだった。

 今、あの音楽を聴けなくなったのは本当に悲しい。録音があることはあるが、サー・コリンとLSO、そして内田光子さんとの息の合い方、合わせ方は、音以上に、その場に居合わせた者しか感じられない空気がある。それは、録音では伝わってこない。

 今はただサー・コリンが素晴らしい音楽を聴かせてくれたことに感謝しつつ、心から氏の冥福を祈ることとしたい。



※サー・コリンの思い出のコンサート(いずれもぼやけた写真ですが・・・)

2009年12月6日 ヴェルディ「オテロ」/LSO 私のサー・コリン経験の中で間違えなくトップ3本指に入る


2010年2月24日 Midoriさんとメンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲


2011年10月2日 内田光子さんとベートーベン ピアノ協奏曲第3番


2011年12月11日 ニールセン交響曲第3番/ LSO・・・この頃からちょっと体力的な衰えが見て取れました


本当にありがとうございました。
コメント (7)
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