10か月ぶりの生オペラ。帰国以来、初の日本でのオペラは「魔笛」。大好きなオペラの一つな上に、今回の公演はオール日本人キャスト。どんなパフォーマンスになるのか、とても楽しみだった。今日は初日。
そして、結果は期待を上廻る好演。特に、サプライズだったのは、ラルフ・ヴァイケルト指揮による東京フィルの演奏。序曲を聴き始めるや否や、美しいアンサンブルとメリハリの効いた演奏に引き込まれた。「これは何かが起こる」、そんな予感を得る演奏だった。そして、それは3時間最後の幕引きまで続く。キレがあって、なお艶やか。モーツァルトの音楽の魅力を十二分に伝えてくれる演奏だった。
もう一つのサプライズは重唱の美しさ。侍女3名と童子3名の其々の重唱は、何とも美しく、心奪われた。歌声と其々のバランスが何とも良いのである。これもモーツァルトならではだ。
独唱陣ではパミーナ役の砂川涼子がはまり役。可憐な様子は王女様そのもの。そしてその歌声は、細すぎることのない、清らかで張りがある高音でうっとりさせられる。相手役のタミーノ役の望月哲也は前半は本調子でなかったようだが、段々と調子が上がってきた感じ。ザラストロの松位 浩は貫禄たっぷりの安定した演技と歌唱。魔笛の隠れたキーとなるパパゲーノの萩原 潤もコミカルな演技で会場を盛り上げてくれた。
演出は特に奇をてらったところはなく、オーソドックスなものだったが、魔笛の神秘的な雰囲気を良く表していて良かった。
全体的にレヴェルの高いパフォーマンスで、欧州メジャー劇場と肩を並べるとは言わないまでも、中堅クラスの劇場には十分競り合うことができるパフォーマンスと言いきれる。正直、ここまで「魔笛」を楽しめるとは思ってみなかっただけに、とっても幸せな気分で劇場を後にした。モーツァルト万歳!新国立万歳!
(その他)初日のせいか、着物姿の女性も複数見かけるなど聴衆も華やかな雰囲気に包まれていました。緑色の服を着た人が心なしか多かったような気がしたのは、パパゲーノ(パパゲーナ?)を意識したコーディネイトに違いありません。壇ふみさんをお見かけしたのですが、壇さんも綺麗な黄緑をベースにしたドレスでした。
魔笛
2012/2013シーズン
Wolfgang Amadeus Mozart : Die Zauberflöte
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト/全2幕
【ドイツ語上演/字幕付】
2013.4.14 新国立劇場
【指揮】ラルフ・ヴァイケルト
【演出】ミヒャエル・ハンペ
【美術・衣裳】ヘニング・フォン・ギールケ
【照明】高沢立生
【ザラストロ】松位 浩
【タミーノ】望月哲也
【弁者】大沼 徹
【僧侶】大野光彦
【夜の女王】安井陽子
【パミーナ】砂川涼子
【侍女Ⅰ】安藤赴美子
【侍女Ⅱ】加納悦子
【侍女Ⅲ】渡辺敦子
【パパゲーナ】鵜木絵里
【パパゲーノ】萩原 潤
【モノスタトス】加茂下 稔
【武士Ⅰ】羽山晃生
【武士Ⅱ】長谷川 顯
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団