冬休み中の読書2冊目。友人から紹介されて読んだ本。
様々な社会科学のアプローチを使って、日本史、日本人、日本文化を読み解くなかなか面白い本である。著者による大学教養課程の授業をネタにしているためか、非常に分かりやすく書かれているが、内容は濃い。
「再帰性」をベースに、我々が考えている日本史、日本人、日本文化といったものが、どのような認識のもとに形作られているのかを明らかにしてくれる。「日本の歴史や文化を考えるというのは、最初から「実在」するものとしてのそれらを過去に探しにゆくことではなく、逆にそれらが存在するかのように人々に思わせてきた、再帰的な営みの軌跡をただること」(p33)というのが筆者の基本スタンスである。
私自身、いろんな歴史本や文化論をつまみ読みしているものの、再帰性をベースに心理学、社会学、民俗学、地域研究、カルチャルスタディーズ、比較文学、思想史、倫理学など活用した分析は初めてだったので、新たな視座が得られて大変勉強になった。取り上げられるトピックスも、日本人、「3丁目の夕日」の昭和30年代、選挙権(戦前には植民地出身者の朝鮮人、台湾人にも選挙権があった)、ウルトラマン、「民族」、ジャパニメーションなどなど、幅広い。
再帰性で何もかも説明しようとするところには違和感を感じないわけではない。再帰性が歴史や文化を考えることに影響を与えることを理解しつつも、事実はやはり存在するわけだから、事実と再帰性を意識しながら、歴史を考えることが大切なのだと思う。
教養が少しは身に着いた気にさせてくれる一冊である。
(★★★☆☆)