「狂王」の異名で知られる第4代バイエルン国王(在位:1864年 - 1886年)ルートヴィヒの若き日から死までを描いた映画「ルートヴィヒ」を見に行きました。映画「ルートヴィヒ」といえば、名匠ヴィスコンティ監督の作品『ルードウィヒ/神々の黄昏』が有名ですが、それがどうリメイク(?)されるのか興味がありましたし、「ドイツ映画界がワーグナー生誕200周年に贈る、珠玉の歴史超大作」というキャッチ・コピーにも魅かれました。
しかしながら、上映時間の2時間20分、それなりに楽しむことはできましたが、期待には届きませんでした。まず、キャストに違和感ありです。若き日のルートヴィヒ役、婚約者ゾフィ役、オーストリア皇后エリザベテート、いずれも、何か違う。ルートヴィヒは「ヨーロッパ一の美貌を謳れた」程ではないし、ゾフィは村の女の子的、エリザベテートも美貌で鳴らしたはずなのですが・・・というわけで、私的にはちょっとBoo。ドイツではどういう評価だったのか知りたいところです。
あと、ルートヴィヒへの切り込みもどうでしょうか?平和、芸術、美といった理想の世界と戦争、政治、権力といった現実の世界の狭間に立つ主人公の悩みは描かれていたものの、継ぎはぎ的で中途半端な感じが否めませんでしたし、ワーグナーとの関係も個人的にはもう少し描写が欲しかった。
ヴィスコンティの作品を見たのは1回きり、それも確か10年以上前なので、「見た。長かった。疲れた。」というところ以外の実際の内容についてはほとんど覚えてないのですが、それでもあの映画を見たときの重厚感や心理的描写の迫力が、今回の作品には足りないなあと思ってしまったのでした。
それでも、ノイシュヴァンシュタイン城やリンダーホーフ城などの映像は美しいですし、バックに流れる「ローエングリーン」の音楽には背筋がぞくぞくさせる魅力があります。旧作との比較ということさえ行わなければ、見どころの多い映画ではありますが、旧作を見て好きだった人になればなるほど、本作にはちょっと物足りなさが残りそうです。
※1月17日まで 東京では有楽町スバル座のみ上映(この映画館、レトロな雰囲気満載でおもろいです)
監督 マリー・ノエル 、ピーター・ゼアー
音楽 ブリュノ・クーレ
脚本 マリー・ノエル 、ピーター・ゼアー
ザビン・タンブレア(ルートヴィヒ2世)
ゼバスチャン・シッパー(ルートヴィヒ2世/老後)
ハンナー・ヘルツシュプルンク(オーストリア皇后エリザベート)
エトガー・ゼルゲ(リヒャルト・ワーグナー)
トム・シリング(オットー)
ポーラ・ビール(ゾフィ)
フリードリヒ・ミュッケ(リヒャルト・ホルヒニ)
ユストゥス・フォン・ドナーニー(ヨハン・ルッツ)
ザムエル・フィンツィ(-)
ウーヴェ・オクセンクネヒト(-)
アウグスト・シュメールツァー(-)