その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ダニエル・ハーディング/ 新日本フィル/ マーラー交響曲第8番「千人の交響曲」

2016-07-04 22:31:17 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)
 マーラーの交響曲第8番を生で聴くのは2回目。前回は、現田茂夫氏の指揮で神奈川フィルの演奏だったが、とっちらかった印象が残る残念な演奏会だった。今回ハーディングさんの新日フィル・ミュージック・パートナー(客演指揮者?)としての最後の演奏会ということで、大いにリベンジを期待し、墨田トリフォニーホールへ。

 墨田トリフォニーホールを訪れるのは初めて。濃い茶色で木目調の内装は、シックで落ち着いた雰囲気で好み。ホールも大きすぎず、良い感じ。

 そして約1時間30分、そのホール一杯に、俗世間とは別世界の神々しい「気」が満ち溢れた。

 第一部、第二部を通して素晴らしかったのは、合唱団。気持ちは一杯に入っているが、発せられる音声は邪念なく澄み通っている。どんな楽器もかなわない。児童合唱の清らかな声にも胸が揺さぶられる。体がどんどん浄化されていくようだ。

 実力派を揃えた独唱陣もいかんなく力を発揮。ロンドンで「オテロ」を聴いて以来、サイモン・オニールは大ファン。今回も半分は彼目当て。当時はとっちゃん坊やみたいな雰囲気を残していたが、あれから7年過ぎた今、顎髭も生やし堂々たる貫録だった。大声量で逆に浮いてしまうのではないかと心配していたのだけど、さすが、プロ。周りとのバランスを上手く取って、抑えながらも、伸びやかで表現豊かなテノールを聴かせてくれた。日本人歌手も素晴らしく、アルトの加納悦子、急遽代役登壇の中島郁子のメゾ・ソプラノも存在感十分だった。

 ステージ一杯に座っていたオーケストラも相当気合が入っているのが、3階席からも良くわかった。演奏では気なるところが無かったわけではないが、この日のような気合に充ちた舞台では、聴き手には大した問題ではない。最後まで集中力の途切れない、緊張感ある演奏だった。

 エンディングが近づくにつれて、フライング・ブラボーが何より怖かった。それだけに、演奏が終わり、ハーディングさんの腕がゆっくりと降ろされて、ポツポツと拍手が始まるまでの、余韻は何物にも代えがたい時間だった。

 良いものを聴かせてもらった。ハーディングさん、ありがとう!そんな感謝の気持ち一杯で満たされながら、ホールを後にした。



日時・会場
2016.7.1(金) 19:15 開演/すみだトリフォニーホール

プログラム
マーラー作曲 交響曲第8番変ホ長調 『千人の交響曲』

出演者


指揮:ダニエル・ハーディング
罪深き女:エミリー・マギー
懺悔する女:ユリアーネ・バンゼ
栄光の聖母:市原 愛
サマリアの女:加納 悦子
エジプトのマリア:中島 郁子
マリア崇敬の博士:サイモン・オニール
法悦の教父:ミヒャエル・ナジ
瞑想する教父:シェンヤン

合唱:栗友会合唱団
合唱指揮:栗山 文昭
児童合唱:東京少年少女合唱隊
児童合唱指揮:長谷川 久恵

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