久しぶりにお芝居を見に行く。平田オリザさんの8年ぶりの新作。
DV、失業、コミュニケーション障害など社会の様々な問題が、地域のNPOセンターに持ち込まれ、悲喜こもごもの物語が展開する。まさに現代社会の一つの縮図であり、結節点が表現されている。
芝居自体は淡々と進行するが、一つ一つのエピソードがリアリティで一杯だ。個人的には、サポートセンターのようなところとはこれまで縁が無いが、日常では、マスコミで接する情報には含まれない、こうした人と人のドラマが繰り広げられているのだろうとは容易に想像がつく。
口語、被せたセリフ、舞台に背を向けて話す俳優さんなど、平田演劇らしさが所々に現れている。特に、キーとなるのは当事者であるセンターの職員や相談者でなく、第三者的な視点で様々なハプニングを見つめる地域のサポートスタッフの面々。物語をより立体的に見せるのに効果的だった。
青年団の皆さんも好演。
観ながら、この物語どうやって終わらせるのだろうと気になっていたのだが、ラストは「ヤマト寿歌」の合唱で締めくくられた。この歌詞、平和ボケした日本を揶揄していると思われる歌詞だが、このドラマのラストとしては、私にはあまり腹落ち感はなかった。
現代社会の矛盾を少しでも解決しようと真面目で誠実に生きる市井の人々を描きつつ、最後は、日本の揶揄で終わってしまうのか・・・、というやりきれなさ。決して後味は良くない。
これが、平田作品でなかればどう評価されるのだろうか?そこまで計算した平田さんの問題提起というか、諦めなのかもしれない。
《初めて訪れた吉祥寺シアター》
《開演前》
青年団第75回公演
『ニッポン・サポート・センター』(新作)
作・演出:平田オリザ
2016年6月23日(木)- 7月11日(月) 22ステージ
会場:吉祥寺シアター
出演
山内健司 松田弘子 志賀廣太郎 永井秀樹 たむらみずほ 辻 美奈子 小林 智 兵藤公美 島田曜蔵 能島瑞穂 大塚 洋 大竹 直 村井まどか 河村竜也 堀 夏子 海津 忠 木引優子 井上みなみ 富田真喜 藤松祥子
スタッフ
舞台美術:杉山 至
照明:三嶋聖子
衣裳:正金 彩
舞台監督:中西隆雄
宣伝美術:工藤規雄+渡辺佳奈子 太田裕子
宣伝写真:佐藤孝仁
宣伝美術スタイリスト:山口友里
制作:石川景子 金澤 昭 有上麻衣
撮影協力:稲荷湯
協力:(株)アレス (有)あるく