その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

オペラ「オテロ」/ジュゼッペ・ヴェルディ @新国立オペラ

2017-04-11 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


 久しぶりに公演初日に観劇。初日の華やかな雰囲気はいかにもオペラを見に来ましたというリッチな空気を吸えて、それだけで気分が高揚する。

 さて、「オテロ」であるが、ストーリーだけ追うと、「単純で嫉妬深い武将が家来に騙され、妻に浮気の疑いをかけて殺してしまい、真実を知り自殺する」という実も蓋もない話。だが、これがシェイクスピアの手にかかるとドキドキの心理劇になり、ヴェルディの手にかかると更に涙が加わる。いきなり大荒れの嵐で聴衆を飲み込んで、2時間半あまり気を抜くことを許さない音楽は、ヴェルディのオペラの中でも個人的に大好きな作品だ。

 今回のパフォーマンスは、全体通じて特に不満な点はないのだけど、圧倒的な感動にはもう一歩という、ややもどかしさが残った公演だった。一番印象的だったのは、ビットに入った東フィルと合唱団かな。指揮のカリニャーニと東フィルのコンビは、豪快でスケール感一杯だったり、甘く、悲しかったりで、硬軟織り交ぜて聴きどころ一杯に鳴らしてくれた。合唱もいつもながら安定して、美しい。

 歌手陣の方は、題名役のカルロ・ヴェントレは、迫力あるテノールで、この難役を最後までスケールダウンすることなく、聴かせてた。ただ難を言えば、やや単調ではなかったか。力づくという感じは、むしろオテロのキャラに合わせたのかも知れないけど、もうちょっと声に色が欲しいなあ。デスデモ―ナ役のファルノッキア、イアーゴ役のストヤノフも歌は悪くはないのだが、もう一つキャラ立ちが弱く、パンチ不足。皆さん、欧米のメジャーオペラハウスでの実績を積んでおられる方なので、私の見立て違いの可能性大ですが。

 舞台・照明が美しかった。キプロス島が舞台なのに、なぜかヴェネティア風の造りになっていたのは「何故?」だったけど、幻想的な雰囲気はこの場面に違和感なくマッチしていた。

 今年になって3か月ちょっとだが、その間に、「マクベス」の芝居、「リア王」の人形劇、そして「オセロ」のオペラと、シェイクスピアの4大悲劇と言われるものの3つを見た。そして、2週間後に「ハムレット」の芝居を見に行く予定。東京って、実はロンドンに次ぐシェイクスピア都市なのかもしれない。



2016/2017シーズン
オペラ「オテロ」/ジュゼッペ・ヴェルディ
Otello / Giuseppe VERDI
全4幕〈イタリア語上演/字幕付〉
オペラパレス

スタッフ
指 揮:パオロ・カリニャーニ
演 出:マリオ・マルトーネ
美 術:マルゲリータ・パッリ
衣 裳:ウルスラ・パーツァック
照 明:川口雅弘
再演演出:菊池裕美子
舞台監督:大澤 裕

キャスト
オテロ:カルロ・ヴェントレ
デズデーモナ:セレーナ・ファルノッキア
イアーゴ:ウラディーミル・ストヤノフ
ロドヴィーコ:妻屋秀和
カッシオ:与儀 巧
エミーリア:清水華澄
ロデリーゴ:村上敏明
モンターノ:伊藤貴之
伝 令:タン・ジュンボ

合唱指揮:三澤洋史
合 唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:世田谷ジュニア合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

2016/2017 Season

Music by Giuseppe VERDI
Opera in 4 Acts
Sung in Italian with Japanese surtitles
OPERA HOUSE

Staff
Conductor Paolo CARIGNANI
Production Mario MARTONE
Set Design Margherita PALLI
Costume Design Ursula PATZAK
Lighting Design KAWAGUCHI Masahiro

Cast
Otello Carlo VENTRE
Desdemona Serena FARNOCCHIA
Iago Vladimir STOYANOV
Lodovico TSUMAYA Hidekazu
Cassio YOGI Takumi
Emilia SHIMIZU Kasumi
Roderigo MURAKAMI Toshiaki
Montano ITO Takayuki
A Herald TANG Jun Bo

Chorus New National Theatre Chorus
Children's Chorus Setagaya Junior Chorus
Orchestra Tokyo Philharmonic Orchestra
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする