その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

金成 隆一 『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』 岩波新書、2017年

2017-04-08 08:00:00 | 



 昨年のアメリカ大統領選挙で当選したトランプ氏を支持した、主にラストベルト(オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガンらのさびついた工業地帯)と呼ばれる地域の人々を丁寧に取材した良質の一冊。誰が何故、トランプ氏を支持したのかが、肌感覚で伝わってくる。

 私自身、トランプ大統領誕生の報には、信じられない気持ちで接したのであるが、本書を読んで、いかにアメリカの中間層が分断され、痛んでいるかがよくわかる。また、普段、私が接しているアメリカ情報が、いかにニューヨーク、ワシントン、シリコンバレーに偏っているかにも気づかされる。

 普通の人がまじめに働いて生活できることの、大事さにも再認識させられる。それは日本にとって対岸の火事ではない。幸い、奇跡的に低い失業率を長期にわたって維持できているため表層に現れてこないが(別の経済問題は抱えているものの)、どこでアメリカが辿った道を追いかけることになるかわからない。
 
 迷いなくおすすめできる一冊だ。


【目次】
はじめに
プロローグ――本命はトランプ
第1章 「前代未聞」が起きた労働者の街
第2章 オレも、やっぱりトランプにしたよ
第3章 地方で暮らす若者たち
第4章 没落するミドルクラス
第5章 「時代遅れ」と笑われて
第6章 もう一つの大旋風
第7章 アメリカン・ドリームの終焉
エピローグ―大陸の真ん中の勝利
おわりに
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