ちきりんさんの著書は読み易く、ちょっとした気づきにつながることが多いので、ちょくちょくつまみ読みしている。今回のテーマは生産性。まさに今はやりの「働き方改革」指南書になっている。
今回の主な気づきは3つ。
1つ目は、「アウトプット(手に入れたい成果)」÷「インプット(希少資源)」で定義される生産性を高めるには、まずインプットを減らすこと。つまり、働く時間を減らしてみるということだ。
近々、私の会社では、夜の9時以降残業禁止というお達しがでるそうだ。みんなで仲良く残業制限なんて、子供じみててますます自分で考えられない人間を作るようで、個人的には大嫌いな施策なのだが、本書によると「まず今の仕事を特定の時間で終わらせると決める」ことが、生産性を向上の第一歩ということらしい。会社で反対勢力になるのはやめようかしら。
2つ目は、これからの世の中、新ビジネスの種は生産性格差に着目したものになっていくだろうということ。本屋→Amzaon、ガラケー→スマフォなどの世の中の推移も生産性の違いで説明できるし、医療や現金制度といった分野はまだまだ生産性の観点からは向上の余地が大いに残されている、すなわちビジネスのチャンスがあるということだ。そういう視点で考えてみると、自分の業界や仕事の見方も巾が出てくる。
3つ目は、希少資源である「お金」と「時間」は見える化しようというアドバイス。特に、「時間」の見える化は自分の無駄をあぶりだしてくれそうだ。大学受験勉強の時は、予備校の先生から、「自分の24時間の実績管理をせよ」と言われたことを思い出した。
まあ、あまり生産性や効率を考えてばかりいては不健康だし、私にとっては、生産性の向上とは、自分の非生産的・非効率でも良い自由で気ままな時間を増やすためなので、個人的にはなんか矛盾しているというか、グルグル議論が廻りそうなテーマなのだが、気にせず役に立ちそうなことは取り入れてみよう。
既刊本と比較すると、本書はインパクトでは劣るものの、簡単に読めるのでお時間のある方にはお勧めできる。
《目次》
はじめに
序章:「忙しすぎる」人たち
デキる男・正樹
頑張る女・ケイコ
休めない女・陽子
焦る起業家・勇二
「忙しすぎる」という問題の本質
1章:高生産性シフトの衝撃
本質的な問題
UberとAirbnbが有効活用した資源
これからの時代の判断基準
学校教育がダメダメな理由
グローバル企業が税金を払いたがらないワケ
同床異夢のベーシックインカム論
「働かないでほしい」と望まれる人たち
文字(テキスト)が持つ価値
長文メールを書く人はなぜ嫌われるのか?
シェアエコノミーの本質
社会と個人が進むべき方向
2章:よくある誤解
楽しくない?
クリエイティブになれない?
偶然の出会いを逃す?
人に優しくない?
3章:どんな仕事がなくなるの!?
こんな働き方、していませんか?
仕事は遅いほうが得というトンデモ理論
デキる人と残念な人の違いとは?
淘汰されるのはどんな仕事?
こんな仕事が生き残る!?
4章:[インプットを理解する]希少資源に敏感になろう
お金と時間は、両方とも〝見える化〟しよう
お金も時間も最大限に活用しよう
お金と時間以外の希少資源
5章:[アウトプットを理解する]欲しいモノを明確にしよう
バックパッカーが手に入れたいものとは
超危険な「似て非なるモノ」
頑張るほどわからなくなる「欲しいモノ」
「やるべきこと」と「やりたいこと」
6章:[生産性の高め方1]まずは働く時間を減らそう
生産性の定義と高め方
ブラジルと日本の農業の違いにヒントがあった
ワーキングマザーと外資系企業の社員を見習おう
インプットを制限する具体的な方法
[その1]1日の総労働時間を制限する
[その2]業務ごとの投入時間を決める
[その3]忙しくなる前に休暇の予定をたてる
[その4]余裕時間をたくさん確保しておく
[その5]仕事以外のこともスケジュール表に書き込む
働く時間を増やすのは〝暴挙〟
7章:[生産性の高め方2]全部やる必要はありません
メディアが求める完璧な女性
スゴイ人の内実
人手不足の原因となる「ひとりで全部やれ」思想
無駄な時間を減らすための具体的な方法
[その1]「すべてをやる必要はない! 」と自分に断言する
[その2]まず「やめる」
[その3]「最後まで頑張る場所」は厳選する
[その4]時間の家計簿をつける
変わり始めたトレンド
8章:高生産性社会に生きる意味
新ビジネス普及の鍵は生産性格差にある
医療や現金制度も大きく変わる
高生産性シフトが経済成長の新たな源泉に
個人にとっての意味
社会の生産性を左右する個人の意識
働き方も変わる
チームの生産性を高めるというチャレンジ
貧困問題と生産性
終章:それぞれの新しい人生
さらにデキる男・正樹
吹っ切れた母・ケイコ
ラオスにて・陽子
世界を目指して・勇二
さいごに ~人生のご褒美~
参考文献