今月、新国での舞台を見に行くので原作で予習。もちろん作品名は知っていたし、Wikiによると「演劇史上の画期となる」という文学史上の重要作品であるが、恥ずかしながら読むのは初めてである。
読んでみての印象は、こういう作品を素直に受け止める感性をいつの間にか失ったのかなあという自分に対する思いである。自らの思想や芸術について真摯に思索し、それを自らの生き方と照らし合わせて行動する。そんな、瑞々しい感受性は、現世における日々のどさくさの中で、どっかに行ってしまった。もっとも現世における日々のどさくさ自体もそれなりの面白いものなのだが、浮世離れした荘園において交わされる上〜中流階級の人たちの会話、思索、行動は、自分の立ち位置を改めて映し出してくれる。
ストーリーとしてはラストシーンを除いては劇的なことが起こるわけではない。物語としての展開を楽しむよりも登場人物の心情を想像する楽しさを味あわせる作品だ。これが舞台でどう演じられるのか。役者たちのどんな演技でどんな心情が表現され、作品に生命の息葺きが吹き込まれるのか。とっても楽しみである。