毎年、ワールドクラスのワーグナーを聴かせてくれる東京・春・音楽祭。今年もやってくれた。
開演前は嫌な予感がたくさん。演目は、ワーグナーの中では私はそれほど好きではない『さまよえるオランダ人』、指揮者ダーヴィト・アフカムは全く知らない人、そして直前でダーラント役の変更のお知らせが。加えて、ホールに着席すると、春祭のワーグナーシリーズでは私には経験のない空席の数(そうはいっても8割は埋まってましたが、このシリーズ満員以外経験がないので)で、ますます不安に。
しかし、公演は圧倒的なもので、私自身の感動具合や衝撃度は過去4回の『さまよえるオランダ人』経験をどれをも上回るものだった。
出色は何といっても外国人勢で固めた歌手陣。題名役のブリン・ターフェル、ゼンダ役のリカルダ・メルベート、エリックのペーター・ザイフェルトらの、世界の有名歌手の実力が遺憾なく発揮され、個性のぶつかり合いが凄まじかった。ターフェルは10年前にロイヤルオペラで同じ役で聴いているが、その時はここまでの迫力、声の深みは感じなかった気がする。ザイフェルトもどっかで聞き覚えがあると思ったら、こちらは以前、ウィーンでローエングリーンを歌ったのを聴いていた。音量たっぷりの伸びのあるテノールはエリックにはちょっともったいないぐらいの美声で聞き惚れる。メルベートは最近は新国立劇場の常連で、2017年12月に「ばらの騎士」の元帥夫人に感動させてもらったばかりだが、今回もピンと張りつめたソプラノは圧巻で男性歌手陣のパワーに全く負けていない。ダーラントを代役出演したイェンス=エリック・オースボーは初めて聴く歌い手だったが、張りのある歌声がとっても良くて全く代役を感じさせなかった。
アフカムの指揮によるN響も尻上がりに本領を発揮し素晴らしい演奏となった。春祭出演が恒例のキュヒルがコンマスとして引っ張ったが、本当に彼のヴァイオリンの音色は引立つ。この作品の持つ緊張度をグーっと高めていた。N響は前半はちょっとおとなしいなと思わせるところもあったが、徐々に温度が高まり、特に第3幕はうねりにうねって圧倒的陶酔の世界を作り上げていた。
加えて、東京オペラシンガーズの合唱が、独唱陣に負けない存在感を示していたのも嬉しい。特に男性コーラスの美しさは感動的だった。
毎年、議論を呼ぶ舞台後方のスクリーンに映される映像は、物語の進行理解としては良いものだった。シンプルで分かりやすいCGだったが、あくまでも状況説明の補助ツールで、ここから何か特別なインスピレーションを得るという類のものでない。なので、個人的にはあまり気にしないようにしていた。
終演後、聴衆からあがった凄まじい興奮、拍手、歓声は日本ではあまり経験がないぐらいのもの。拍手やブラボーが無秩序にホールに響き渡る。4階席右サイドの私も、胸がいっぱい、心臓バクバクの中、思いっきり「ブラボー」を叫んだ。クラシック音楽やオペラを聴き始めて、人生、本当に良かったと思わせてくれたパフォーマンスだった。
出色は何といっても外国人勢で固めた歌手陣。題名役のブリン・ターフェル、ゼンダ役のリカルダ・メルベート、エリックのペーター・ザイフェルトらの、世界の有名歌手の実力が遺憾なく発揮され、個性のぶつかり合いが凄まじかった。ターフェルは10年前にロイヤルオペラで同じ役で聴いているが、その時はここまでの迫力、声の深みは感じなかった気がする。ザイフェルトもどっかで聞き覚えがあると思ったら、こちらは以前、ウィーンでローエングリーンを歌ったのを聴いていた。音量たっぷりの伸びのあるテノールはエリックにはちょっともったいないぐらいの美声で聞き惚れる。メルベートは最近は新国立劇場の常連で、2017年12月に「ばらの騎士」の元帥夫人に感動させてもらったばかりだが、今回もピンと張りつめたソプラノは圧巻で男性歌手陣のパワーに全く負けていない。ダーラントを代役出演したイェンス=エリック・オースボーは初めて聴く歌い手だったが、張りのある歌声がとっても良くて全く代役を感じさせなかった。
アフカムの指揮によるN響も尻上がりに本領を発揮し素晴らしい演奏となった。春祭出演が恒例のキュヒルがコンマスとして引っ張ったが、本当に彼のヴァイオリンの音色は引立つ。この作品の持つ緊張度をグーっと高めていた。N響は前半はちょっとおとなしいなと思わせるところもあったが、徐々に温度が高まり、特に第3幕はうねりにうねって圧倒的陶酔の世界を作り上げていた。
加えて、東京オペラシンガーズの合唱が、独唱陣に負けない存在感を示していたのも嬉しい。特に男性コーラスの美しさは感動的だった。
毎年、議論を呼ぶ舞台後方のスクリーンに映される映像は、物語の進行理解としては良いものだった。シンプルで分かりやすいCGだったが、あくまでも状況説明の補助ツールで、ここから何か特別なインスピレーションを得るという類のものでない。なので、個人的にはあまり気にしないようにしていた。
終演後、聴衆からあがった凄まじい興奮、拍手、歓声は日本ではあまり経験がないぐらいのもの。拍手やブラボーが無秩序にホールに響き渡る。4階席右サイドの私も、胸がいっぱい、心臓バクバクの中、思いっきり「ブラボー」を叫んだ。クラシック音楽やオペラを聴き始めて、人生、本当に良かったと思わせてくれたパフォーマンスだった。
来年への期待がもう始まっている。
東京春祭ワーグナー・シリーズvol.10
《さまよえるオランダ人》(演奏会形式/字幕・映像付)
■日時・会場
2019/4/5 [金] 19:00開演(18:00開場)
東京文化会館 大ホール
■出演
指揮:ダーヴィト・アフカム
オランダ人(バス・バリトン):ブリン・ターフェル
ダーラント(バス):イェンス=エリック・オースボー
※出演を予定していたアイン・アンガーは、イェンス=エリック・オースボーに変更。
ゼンタ(ソプラノ):リカルダ・メルベート
エリック(テノール):ペーター・ザイフェルト
マリー(メゾ・ソプラノ):アウラ・ ツワロフスカ
舵手(テノール):コスミン・イフリム
管弦楽:NHK交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:トーマス・ラング
合唱指揮:宮松重紀
アシスタント・コンダクター:パオロ・ブレッサン
映像:中野一幸
■曲目
ワーグナー:歌劇《さまよえるオランダ人》 [試聴]
(全3幕/ドイツ語上演)[上演時間:約3時間(休憩1回含む)]
Spring Festival in Tokyo2019
Tokyo-HARUSAI Wagner Series vol.10
"Der fliegende Holländer"
(Concert Style / With projected images and subtitles)
[ Date / Place ]
April 5 [Fri] at 19:00
April 7 [Sun] at 15:00
Tokyo Bunka Kaikan Main Hall
[ Cast ]
Conductor : David Afkham
Der Holländer : Bryn Terfel
Daland : Jens-Erik Aasbø (Replacement of Ain Anger)
Senta : Ricarda Merbeth
Erik : Peter Seiffert
Mary(Mezzo Soprano) : Aura Twarowska
Der Steuermann Dalands :Cosmin Ifrim
Orchestra : NHK Symphony Orchestra, Tokyo
Chorus : Tokyo Opera Singers
Chorus Master : Thomas Lang
Chorus Master : Shigeki Miyamatsu
Assistant Conductor : Paolo Bressan
Video : Kazuyuki Nakano
[ Program ]
Wagner(1813-83):"Der fliegende Holländer"(Concert Style / With projected images and subtitles)
《さまよえるオランダ人》(演奏会形式/字幕・映像付)
■日時・会場
2019/4/5 [金] 19:00開演(18:00開場)
東京文化会館 大ホール
■出演
指揮:ダーヴィト・アフカム
オランダ人(バス・バリトン):ブリン・ターフェル
ダーラント(バス):イェンス=エリック・オースボー
※出演を予定していたアイン・アンガーは、イェンス=エリック・オースボーに変更。
ゼンタ(ソプラノ):リカルダ・メルベート
エリック(テノール):ペーター・ザイフェルト
マリー(メゾ・ソプラノ):アウラ・ ツワロフスカ
舵手(テノール):コスミン・イフリム
管弦楽:NHK交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:トーマス・ラング
合唱指揮:宮松重紀
アシスタント・コンダクター:パオロ・ブレッサン
映像:中野一幸
■曲目
ワーグナー:歌劇《さまよえるオランダ人》 [試聴]
(全3幕/ドイツ語上演)[上演時間:約3時間(休憩1回含む)]
Spring Festival in Tokyo2019
Tokyo-HARUSAI Wagner Series vol.10
"Der fliegende Holländer"
(Concert Style / With projected images and subtitles)
[ Date / Place ]
April 5 [Fri] at 19:00
April 7 [Sun] at 15:00
Tokyo Bunka Kaikan Main Hall
[ Cast ]
Conductor : David Afkham
Der Holländer : Bryn Terfel
Daland : Jens-Erik Aasbø (Replacement of Ain Anger)
Senta : Ricarda Merbeth
Erik : Peter Seiffert
Mary(Mezzo Soprano) : Aura Twarowska
Der Steuermann Dalands :Cosmin Ifrim
Orchestra : NHK Symphony Orchestra, Tokyo
Chorus : Tokyo Opera Singers
Chorus Master : Thomas Lang
Chorus Master : Shigeki Miyamatsu
Assistant Conductor : Paolo Bressan
Video : Kazuyuki Nakano
[ Program ]
Wagner(1813-83):"Der fliegende Holländer"(Concert Style / With projected images and subtitles)
≪春祭のソワレは初めて≫
≪開演前の上野公園≫