その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

全く新しい観劇体験・・・劇団現代古典主義 「THE MACBETHS」(マクベス家)@劇団現代古典主義アトリエ

2019-04-15 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

代田橋から徒歩7分の環7沿いのビルの4階が劇場?チケット購入の際に首をひねりながらも、「マクベス」見たさに予約したチケットだったが、「劇場」入りして一瞬ひるんだ。本当にマンションの一室(15畳くらい?)が劇空間に改造されている。しかも、座席は2列で椅子11脚のみ。教室で行う高校生の文化祭の演劇の方がよっぽど広い。ここは、ある宗教団体のサティアンで、このまま洗脳されるのではないかと一瞬不安がよぎるぐらい。来るところ間違ったか・・・?

しかし文字通り「手が届く」舞台で展開された「THE MACBETHS」(マクベス家)は私に全く新しい観劇体験をもたらせてくれた。瞳が拡大し、息を飲みっぱなしの70分だった。

この劇団、古典作品を同時進響劇(舞台上を複数場面に分割し、同時間枠での別地点の物語を同時に進行させる)というスタイルで定期的に公演を行っているようだ。今回の「マクベス家」は、原作に沿うところもありながらも、登場人物にマクベス夫妻の二人の子供を登場させて、マクベス一家の破滅を描く内容になっている。原作の台詞を節々に盛り交ぜ、ベースストーリーは変えないが、ちょっと視点をずらして異なった物語にしている。台本がシェイクスピア的な世界観をしっかり踏襲しているので、違和感は全くないし、違いも原作の展開に沿って吸収され(マクベス夫人の死からTomorrow Speechにつなげるところとか)、上手くできていると感心した。「マクベス」の別編を見ているようである。

舞台が目の前ということもあるかもしれないが、役者さん達の熱量が凄まじい。特にマクベスの血気迫った演技や怨念に満ちたマクベス夫人は恐いぐらいだったし、魔女たちの妖気一杯漂う動きも印象的だった。とにかく、本当に目の前で劇が展開するから役者さんと視線がバッチりあってしまう。自分自身がスコットランドの城中に居合わせているような感覚になる。

あえて、自分としての注文を上げると、シーン毎に挿入される音楽にちょっとこれはイージーではないかい?と思うところがあったのと、最後の最後の落ち(マクダフはああなったが、イアンは?)が今一つ分からなかった。

まあ、そんな小さな注文は全体のこの経験から見れば些細なことである。下北沢の小劇場とも全く違うので、こればかりは是非一度体験してみてとしか言いようがない。体で感じる、新しい「マクベス」、新しい観劇体験ができる。4月28日まで。

Theatrical company MODERN CLASSICISM
The 4th floor series vol.5
同時進響劇
劇団現代古典主義版 マクベス
THE MACBETHS
原作:ウィリアム・シェイクスピア 脚色・演出:夏目桐利
[会場] 劇団現代古典主義アトリエ
上演時間70

CHARACTERS

武将マクベス(マクベス家の王):大西輝卓 Terutaka Onishi
マクベス夫人(マクベスの妻):藤井絵里Eri Fujii
イシュラ(マクベス家の長女・イアンの姉):田畑恵未Megumi Tabata
武将バンクォー(マクベスの友人):樽谷佳典Yoshinori Tarutani
武将マクダフ(マクベスの友人):諏訪貴大Takahiro Suwa
国王ダンカン(スコットランド王):柏木公宰Kosai Kashiwagi
イアン(マクベス家の長男・イシュラの弟):倉持杏純Azumi Kuramochi
魔女:土肥亜由美、Ayumi DohiKanako Mikami
従者(マクベスの従者):Kenta Akiyama 

≪入口。ドア開けるの結構勇気いります。「注文の多い料理店」の入り口のドアみたい≫

コメント
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