チェーホフの代表的戯曲「かもめ」を見に行く。事前に原作を読んでおいたが、面白さがもう一つ分からなかったので、あの原作が演劇になるとどうなるのか楽しみだった。
思いのほか読書のイメージと舞台が違和感なく相似形だったのが第一印象だが、「あの下りはこういうことだったのね」と舞台を見て理解できたことも多かった。「かもめ」が喜劇と言うのが原作だけではピントこなかったのだが、確かに舞台を見ると登場人物のちょっとした台詞や会話の行き違いがユーモラスで、なるほどこれは喜劇なのだ(の一面もあるのだ)と肚に落ちた。
フルオーディションで選ばれた役者さんたちというのが、今回の公演の売りの一つであるのだが、確かに各役者さんが演じるキャラクターも(私が持った)原作のイメージを忠実に表していたと感じた。中でも、イリーナ・ニコラーエヴナ・アルカージナ役の浅海さんは、さすが元宝塚スターだけあって、オーラと存在感抜群で役柄へのはまり感が半端ない。イリーナの息子コンスタンチン・ガヴリーロヴィチ・トレープレフ役(主人公?)の渡邊りょうさんは、(地声なのか稽古のし過ぎかわからないが、)声が擦れているのが気になったが、純粋で芸術の世界に革新をもたらそうとする若き情熱が良く表れていたと思う。
公演そのものはとっても満足だったたが、依然、私自身この戯曲をどこまで理解しているのかが疑問に残る。ロシア人やロシア社会の特性を反映しているためか、感情表現の大きさ(例えば、泣く場面がやたら多い)が気になるし、感情移入できる人物が見当たらない。喜劇と悲劇の組み合わせも単純脳の私にはむず痒い。この複雑さが、この作品の価値なのかもしれないが・・・。
観衆は若者から年輩の方まで幅広かったが、かなり演劇に造詣の深い人が多い雰囲気だった。どうやってこの演劇を楽しめばいいのか、御指南頂けないかなあと思いながら、劇場を後にした。私としては、お勉強モードとなった今回の観劇であった。
2018/2019シーズン
演劇「かもめ」 The Seagull
小劇場
2019年4月11日 観劇
作 アントン・チェーホフ
英語台本 トム・ストッパード
翻訳 小川絵梨子
演出 鈴木裕美
美術 乘峯雅寛
照明 沢田祐二
音響 長野朋美
衣裳 黒須はな子
ヘアメイク 宮内宏明
演出助手 伊達紀行
舞台監督 村田 明
【キャスト】
朝海ひかる
天宮 良
伊勢佳世
伊東沙保
岡本あずさ
佐藤正宏
須賀貴匡
高田賢一
俵木藤汰
中島愛子
松井ショウキ
山﨑秀樹
渡邊りょう