フルシャさんの指揮は、5年前に都響でスーク・プログラムを一度だけ聴いています。若いのに堂々としていて、輪郭明確かつ情感も伴った音楽を紡ぐ指揮ぶりがしてとても好印象でした。そのフルシャさんとN響の初顔合わせの演奏会ということで、公演前の期待値を思い切り上げてホール入り。
プログラムもなかなか凝ってます。いきなり「ツァラトゥストラはこう語った」から始まり、ベルリオーズの「クレオパトラの死」。そして、フルシャさんの出身地もののヤナーチェクの「シンフォニエッタ」。聞いたことのある曲はシュトラウスだけですが、興味がそそられる曲が並んでおり、開演を待ちながら、どんな演奏会になるのかワクワク。
冒頭のシュトラウスの導入部(日の出)の響きは、映画『2010年宇宙の旅』の冒頭シーンが目に浮かびがちですが、今回はこの日のプログラムの幕開けのファンファーレに聞こえました。この交響詩を自分が消化しているとはとても言えませんが、フルシャさんがバランスよく造形を明確に描いて音楽を作りをしているのが印象的でした。コンサートマスターは「さまよえるオランダ人」に続いてキュツヒルさん。彼ののヴァイオリンの音色は本当によく響きます。びしっと、芯が通る感じですね。
個人的にこの日最も感銘を受けたのは2曲目。クレオパタラの死を描いたベルリオーズの作品です。フランス出身のソプラノ、ジェンズさんがクレオパトラの心情を歌います。私はお初の方でしたが、真紅のドレスに身を包んだ長身は、とっても舞台映えします。そして、歌の方も、凛として芯の通った歌声で、クレオパトラの気持ちを劇的に表現してました。20分少々の時間にクレオパトラの自負と無念の思いが凝縮されたドラマに大いに感動しました。
休憩後のヤナーチェックは、オケの最後列に10名を超える金管部隊を置き、実に勇壮で力強い音楽。チェコの独立と深く結びついた音楽と言うことで、国威掲揚的な意味合いもあるようですが、純音楽的にも楽しめます。フルシャさんは過度に煽るというよりも、お国の音楽を多くの人に聴いてほしいという愛を感じるものでありました。
終わってみれば、コンサート前に思いっきり上げた期待値に見事にこたえてくれたフルシャさんとN響。初顔合わせとは思えない息の合ったこのコンビを、聴衆からの温かい大きな拍手が包み込みました。是非、今後も定期的に指揮台に上がって欲しいと思います。
第1909回定期公演 Aプログラム
2019年4月14日(日)開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール
R.シュトラウス/交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」作品30
ベルリオーズ/叙情的情景「クレオパトラの死」*
ヤナーチェク/シンフォニエッタ
指揮:ヤクブ・フルシャ
ソプラノ*:ヴェロニク・ジャンス
No.1909 Subscription (Program A)
Sunday, April 14, 2019 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall
R.Strauss / “Also sprach Zarathustra”, Tondichtung frei nach Nietzsche op.30
Berlioz / “La mort de Cléopâtre”, scène lyrique*
Janáček / Sinfonietta
Jakub Hrůša, conductor
Véronique Gens, soprano*
≪葉が付きはじめたホール前≫