私にとっては2019年最後のN響定期。今回の指揮は、ベネゼエラ出身の若手ディエゴ・マテウス。既にN響とも共演歴もあるし、サイトウ・キネン・オーケストラも振っているらしいが、私は初めて。同じ「エル・システマ」出身のドゥダメルのようなカリスマ性は感じなかったが、安定したプログラムと指揮ぶりで、確かな満足感が残る演奏会だった。
前半のグラズノフのヴァイオリン協奏曲は、これも若手演奏家ニキータ・ボリソグレブスキーのシュアな演奏が印象的だった。ことさらに抒情性を前面に出した演奏ではないが、ロシア人がロシアの曲をやると、とってもロシア的に聴こえてしまうのは私の先入観が強すぎるのだろうか。
後半のベルリオーズ「幻想」交響曲は、デュトアのような香り立ちこめる感じでもなく、また昨年のブロム翁の透明感のある演奏とも違うものだった。マテウスの指揮はオーケストラの鳴らし方に特徴があり、各楽器が際立ち、この場面ではこの楽器が後ろでこんな音を出していたのねと気づかされる場面がいくつかあった。もちろん、イングリッシュ・ホルンらのソロも見事。N響のアンサンブルは曲の進行とともに熱を帯び、最終楽章は劇的だった。
終演後は熱狂的な拍手。それに応えるように、マテウスは団員から送られた真っ赤なバラの花束から一輪抜き、観客席に投げ込んだ。ベテラン指揮者も良いのだが、こうした若手指揮者の登場機会はもっと増やしてもらっていいと思う。1年の最後の定演として、気持ち良く締まった演奏会だった。
第1928回
12/7 (土) 3:00pm
NHKホール
指揮│ディエゴ・マテウス
ヴァイオリン│ニキータ・ボリソグレブスキー
コンサートマスター(客演)│ヴェスコ・エシュケナージ
メンデルスゾーン 「夏の夜の夢」序曲 作品21 [12′]
グラズノフ ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品82 [21′]
ベルリオーズ 幻想交響曲 作品14[50′]
Concert No.1928 PROGRAM C
conductor│Diego Matheuz
violin│Nikita Boriso-Glebsky
concertmaster (guest)│Vesko Eschkenazy│
Felix Mendelssohn Bartholdy: “Ein Sommernachtstraum,” overture Op. 21[12´]
Aleksandr Glazunov: Violin Concerto A Minor Op. 82 [21´]
Hector Berlioz: Symphonie fantastique Op. 14 [ 50´]