ナチスに奪われたクリムトの名画「黄金のアデーレ」を、絵のモデルであったアデーレの姪に当たる老婦人が、オーストリア政府を相手に返還要求の裁判を起こした物語。実話に基づいている。
私の好きな「美術」「歴史」を題材としながら、「法廷モノ」の要素も加えて適度のエンターテイメント性も持たせた佳作である。見ごたえある一本だ。
マリア・アルトマンを演じた主演女優のヘレン・ミレンの演技が光る。ユダヤ人の上流階級の家に生まれ育ち、高い教養を身に着けたマリアが、アメリカで静かな老後を送りたいと願う一方で、亡き叔母を描いた名画を取り返すために裁判で戦う。難しい立場のマリアをヘレン・ミレンが地に足がついた自然に演じていた。
あえて言えば、テーマの硬さとエンターテイメント性が上手く両立しているとも言えるし、逆にナチスによるユダヤ人の迫害や資産略奪というテーマの重さがやや軽くなっている印象が無くも無い。
映画としての出来は間違いなく良いので、多くの人にお勧めできる一本だ。
監督:サイモン・カーティス
製作:デビッド・M・トンプソン クリス・サイキエル
製作総指揮:クリスティーン・ランガン ハーベイ・ワインスタイン ボブ・ワインスタイン サイモン・カーティス ロバート・ワラク
脚本:アレクシ・ケイ・キャンベル
撮影:ロス・エメリー
美術:ジム・クレイ
編集:ピーター・ランバート
音楽:マーティン・フィップス、 ハンス・ジマー
〈キャスト〉
マリア・アルトマン:ヘレン・ミレン
ランドル・シェーンベルク:ライアン・レイノルズ
フベルトゥス・チェルニン:ダニエル・ブリュール
パム・シェーンベルク:ケイティ・ホームズ