その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

畠山 理仁『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社、2017年)

2020-07-24 07:30:00 | 

先日の東京都知事選挙で、普段は全く見ないテレビの政見放送をたまたま目にしたら、主要候補ではない候補者たちの八茶目茶なプレゼンにびっくりたまげた。今どきの政見放送は、カーセックスのコメディ風実況中継を演じたり、いきなり脱ぎ始めて上半身裸で話をしたりするのである。都知事「候補」ではあるものの、一体何を訴えようとしているのか、まじめに都知事になるつもりがあるのか、立候補の動機やモチベーションが理解できず、彼らのリアルを知りたく本書を手に取ってみた。

本書は、筆者が無頼系独立候補と呼ぶ、非主要候補者(通称、泡沫候補)を追いかけてきた取材レポートである。前半は筆者が長年追いかけてきたスマイル党総裁・マック赤坂についての取材報告。後半は2016年7月の東京都知事選挙に立候補した非主要候補者21名の選挙運動の軌跡である。

文句なしに、読んでいて面白く楽しい。まず候補者たちの変人ぶり、アク、キャラに圧倒される。アメリカには普通にいそうだが、同調圧力の強い日本にもこういう人たちがいるのだと驚かされる。世間的な常識や損得を遥かに超えた強い「個」に強力に魅せられる。

筆者の候補者たちを見る暖かい眼差しを感じるレポートでもある。ちょっと候補者たちの肩を持ちすぎではないかと思うほど、彼らに寄り添っている。それ故に、彼らも筆者に心を許し、気持ちを吐露するのだろう。

個人的には、今回の知事選の政見放送を見る限りは、真面目に政策を考えているとは思えない候補者、自らのYouTubeチャンネルへの誘因として政見放送を利用することしか考えてないと思える候補者もあり、必ずしも筆者の記述には賛同できないところもあった。ただ、そういったことも含めて、自由に個人の意見を主張する場が保証されているというのが民主主義なのだろう。

気楽に読め、新しい世界の見方を教えてくれる一冊だ。

 

(目次)

第1章 マック赤坂という男(踊り続ける男
「おれは変えたいんだよ、この国を」
ビジネスの成功者は下ネタが好き ほか)
第2章 選挙報道を楽しく変えてみた(選挙を楽しめない日本人
「泡沫候補」と呼ばれて
新聞が決めていた「泡沫候補」の基準 ほか)
第3章 東京都知事候補21人組手(5年半で4回の都知事選
政策論争なき選挙
小池百合子は最初に手を挙げていない ほか)

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