N響定演には(引っ越し等での中断はあるものの)足かけ数十年通っているが、こうしたオペラの歌を中心に据えたプログラムは初めてだ。コロナが生んだ不幸中の幸いと言えるかもしれない。チケットもコロナ禍で1回券販売になっているので、定演はNHKホールD席会員の私だが奮発してS席にアップグレード。サントリーホールの1階センター席なんて何年ぶりだろう。見える風景が違うわ~。
指揮の三ッ橋敬子さんはテレビで観たことはあるが、実演は初めて。とっても小柄な方で驚いたが、凛としてきびきびした指揮姿が気持ちがいい。前半のモーツァルトはちょっと楷書体的でモーツァルト特有の遊びが少ない気がしたけど、森谷真理さん、福井敬さんの美声をダイレクトに体で受け止める快感に震えた。
後半はヴェルディ、マスネ、プッチーニの甘美な音楽に酔う。N響は完璧なアンサンブルに加えて、マロさんのヴァイオリン・ソロを初め、クラリネット、フルートらの管楽器の個人技も聴かせる。最後の「蝶々夫人」の二重唱「夕暮れは迫り」は、オペラのシーンが目に浮かび、今すぐにでもオペラを観に行きたくなった。
森谷さんは調布国際音楽祭や2年前の二期会公演「サロメ」での熱演がまだ記憶に新しいが、華があって存在感が強烈。この日も迫力ある、美しい高音を聴かせてくれた。福井さんのテノールは安定してシュア。ベテランの味だった。
とっても贅沢な休日の午後。こうした幸せなひと時をくれた関係者に感謝。
NHK交響楽団 4⽉公演 サントリーホール
2021年4月11日(日)開場 1:20pm 開演 2:00pm
サントリーホール
指揮:三ツ橋敬子
ソプラノ:森谷真理*
テノール:福井 敬**
モーツァルト/歌劇「魔笛」
─ 序曲
─ タミーノのアリア「なんと美しい絵姿」**
─ パミーナのアリア「愛の喜びは露と消え」*
モーツァルト/歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」
─ フィオルディリージとフェランドの二重唱「夫の腕の中に」* **
モーツァルト/歌劇「イドメネオ」
─ バレエ音楽 K. 367から「パ・スル(1人の踊り)」
─ イドメネオのアリア「海の外なる胸の内の海は」**
─ エレットラのレチタティーヴォとアリア「ああ私の切望、怒り」~「血を分けたオレステよ」*
ヴェルディ/歌劇「シチリア島の夕べの祈り」
─ バレエ音楽「春」
マスネ/歌劇「ウェルテル」
─ オシアンの歌(ウェルテルのアリア)「春風よ、なぜ私を目ざますのか」**
マスネ/歌劇「タイス」
─ 鏡の歌(タイスのアリア)「私を美しいと言っておくれ」*
― タイスの冥想曲
プッチーニ/歌劇「蝶々夫人」
─ ピンカートンと蝶々夫人による愛の二重唱「夕暮れは迫り」* **
NHK Symphony Orchestra April Concerts at Suntory Hall
Sunday, April 11, 2021 2:00p.m.
Suntory Hall
Keiko Mitsuhashi, conductor
Mari Moriya, soprano*
Kei Fukui, tenor**
Mozart / "Die Zauberflöte," opera K. 620 — Overture, Aria"Dies Bildnis ist bezaubernd schön"(Tamino)**, Aria"Ach, ich fühl’s, es ist verschwunde"(Pamina)*
Mozart / "Così fan tutte," opera K. 588 — Duetto"Fra gli amplessi"(Fiorgiligi/ Ferrando)* / **
Mozart / "Idomeneo," ballet K. 367 — "Pas seul"
Mozart / "Idomeneo," opera K. 366 — Aria"Fuor del mar ho un mar in sento"(Idomeneo)**, Recitative and Aria"Oh smania! oh furie!〜"D'Oreste, d'Aiace Ho in seno i tormenti" (Elettra)*
Verdi / "I vespri siciliani," opera — "La Primavera," ballet
Massenet / "Werther," opera — Lied d'Ossian "Pourquoi me réveiller, ô souffle du printemps?"(Werther)**
Massenet / "Thaïs," opera — Air de miroir "O mon miroir fidèle, dis-moi que je suis belle"(Thaïs)*, "Méditation"
Puccini / "Madama Butterfly," opera — Duetto "Viene la sera" (Pinkerton, Madama Butterfly)* / **