その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

渾身のシベ2に涙:N響4月公演、指揮 大植英次 @サントリーホール

2021-04-23 07:30:44 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

N響4月演奏会の第3弾。指揮の大植英次さんの実演に接するのは初めてです。この日はステージ後ろのP席に陣取りました。マンボウのためか、それとも6時という開演時間故か、はたまた帝王ムーティの〈マクベス〉とのバッティングのかは分かりませんが、P席から見える正面の聴衆席はガラガラ。こんな客入りでは、奏者のモチベーションにも影響するのではと、余計な心配がよぎります。(ただ、P席だけは満員で、熱気むんむんでした)

しかしながら公演の方は、私の素人的心配を吹き飛ばす大熱演。汗と涙と感動のサントリーホールとなりました。特に、後半のシベリウス交響曲第2番が圧巻。この曲、ここ数年を振り返っても、パーヴォ(2017年2月)、サラステ(2015年5月)、ネーメ・ヤルヴィ(2014年4月)と名演続きなのですが、この日の演奏はまるで別の音楽に聴こえるほど、新たな発見や驚きがあり、これらの名演以上の感動に満ちたものでした。

スローペースで始まった第1楽章から弦の合奏や管楽器のソロの美しさに心を奪われます。P席は各楽器の動きが手に取るように分かるので、ここでこの楽器がこんな音を出していたんだ、という気づきも楽しい。第2楽章では、弦のピチカートの深遠な響きが心に響きました。ステージ全体に漂う張り詰めた緊張感が客席にも伝わってきます。そして、第3,4楽章では弦、管の素晴らしい合奏やソロに手に汗握ります。指揮の大植さんは想像以上に小柄な方でしたが、渾身の指揮ぶりで、極大のエネルギーをN響から引き出し、ホールに放出させていました。神がかり的な「気」を感じたのは私だけではないでしょう。クライマックスはエクスタシーの頂点。不思議に涙が出てくる自分が居ました。

3割程度の入りの聴衆ですが、満員のホールに劣らない熱い拍手が送られました。この日、この場に居合わせた自分たちの幸運を、共有しているようでした。

前半のショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番は、阪田さんの軽快なピアノソロとレーザービームのように突き抜ける長谷川さんのトランペットが印象的。ショスタコーヴィチらしい変化に富んだ音楽を楽しみました。

4月は3つのプログラム、どれも大充実でした。毎回、日本人指揮者のもとで今までのN響とは違った一面を見せ、聴かせてくれています。災い転じて福となったコロナ禍であった、と思い起こすことができる日が一日も早く来て欲しいです。

 

NHK交響楽団 4⽉公演 サントリーホール
2021年4月21日(水)開場 5:00pm 開演 6:00pm

サントリーホール

グリーグ/2つの悲しい旋律 作品34 ─「胸の痛手」「春」
ショスタコーヴィチ/ピアノ協奏曲 第1番 ハ短調 作品35
シベリウス/交響曲 第2番 ニ長調 作品43

指揮:大植英次
ピアノ:阪田知樹

【本公演のアンコール曲】ラフマニノフ(阪田知樹編)/歌曲集 作品21―第7曲「なんとすばらしい所」(ピアノ:阪田知樹)

NHK Symphony Orchestra April Concerts at Suntory Hall
Wednesday, April 21, 2021 6:00p.m. (doors open at 5:00p.m.)

Suntory Hall

Grieg / 2 Elegische Melodien Op. 34
Shostakovich / Piano Concerto No. 1 C Minor Op. 35
Sibelius / Symphony No. 2 D Major Op. 43

Eiji Oue, conductor
Tomoki Sakata, piano

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする