その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

臨時休館のまま無念の閉幕: コンスタブル展 @三菱一号館美術館

2021-06-03 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


まさか緊急事態宣言がここまで延長されるとは想定できなかった人が多かったのではないでしょうか。私自身は4月に宣言直前に1度訪れたものの、再訪問した上で感想をブログに掲載しようと思っていたのですが、当初予定どおり5月末で会期終了となってしまいました。

コンスタブルは、英国では同世代のターナーと並ぶ人気画家ですが、私はロンドン駐在時に初めて知りました。素朴で温かみのある画風に強く魅かれ、コンスタブルが育ち、多くの風景を描いたフラットフォードの地も訪れました。今回はテート美術館の所蔵品から約40点と、同時代の画家の作品20点ほどを加えた美術展でした。コンスタブルの世界を満喫できるものだっただけに、本当に残念です。以下、4月に訪れた際の感想となります。

コンスタブルが描く絵は、フラットフォード、ハムステッド、ブライトン、ソールスベリーなどなど、私が体験したイギリス風景そのものであり、心象風景でもあります。4年程の生活経験の私でさえこうなのだから、イギリス人にとってはコンスタブルの風景画そのものがイギリスの原風景なのだと想像します。人気があるのもわかります。


《フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)》1816-17年、油彩/カンヴァス、101.6×127.0cm、テート美術館蔵

風景画の中には、その地の人々が描かれることが多いです。人の表情までは判別できないのだけど、その動作や姿勢が、時間が止まった風景であるにも関わらず、人の息ぶきや時の流れが刻印されてます。一枚の風景画から物語が感じられます。

どの風景画にも雲があるのも特徴的です。イギリスを訪れた多くの人が感じると思いますが、イギリスの雲はとっても多様な顔を持っています。1日何回も表情、機嫌が変わります。描かれた雲を見て、当地の空気、風に思いを馳せるのも楽しいです。


《虹が立つハムステッド・ヒース》1836年、油彩/カンヴァス、50.8×76.2cm、テート美術館蔵

三菱一号館美術館のコンパクトで落ち着いた佇まいもコンスタル展にぴったりでした。会場は週末ということで、お客さんも混み過ぎず、空き過ぎずで入っていて(若い人が多いのが印象的だった)、静かな心休まる時空を満喫できました。

ファンとしては、また是非、個展の企画をお願いしたいところです。
コメント
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