以前、どこかの書評欄で紹介されていて、一度読んでみたいと思っていた。主人公の今と過去(アメリカの高校留学期)を行き来しながら、東京裁判、天皇の戦争責任をテーマにした小説。主人公は筆者と同姓同名なので、留学経験は本人の実体験かもしれない。
野心的な作品だと思った。日本人留学生や米国人からの視点で日本の戦後占領期を振り返ることで、いろんなことが浮かび上がる。東京裁判が後付けの勝者の裁判であること、憲法がMade by Americansであること、明治憲法下での天皇の機能、権限の曖昧さなどである。
一方で、私にはとっちにくさは残った。留学期(1980−1981)と現代(2009-2011)の行き来を始め、筆者の夢の世界、ベトナム戦争、日本のバブル経済期、東日本大震災、などなど様々な日米の第2次大戦後の出来事が散りばめられる。時空の移動が激しすぎて、読む手がついていくのはしんどい。
また、ヘラジカ、結合双生児、大君といったシンボリックな隠喩として登場するが、その人物や動物も、位置づけや意味合いが腹落ちしないところがある。色んなイベント、人、物がごった煮され過ぎている気がした。読書ペースを節々でブレーキをかけられている感覚があり、波に乗って読むのが難しい作品である。
筆者の意気込みは十分感じたものの、私自身の読解力の限界もあり、私がどこまで読み取れたかはかなり怪しい。早くページをめくりたいのだが、めくれない。終始もどかしさが残る一冊であった。