その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

帰ってきたパーヴォ! N響/指揮 パーヴォ・ヤルヴィ、ニルセン交響曲第4番「不滅」ほか

2021-06-19 07:40:00 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)


既に3日が経ちましたが、未だ水曜日の興奮冷めやらずです。2日目の木曜日も絶賛のツイートが溢れていたので、熱い会場の様子が伝わってきました。14カ月ぶりに登場した首席指揮者パーヴォ/N響の演奏会でした。

開演前からいつもとは違う賑やかさ、高揚した雰囲気がありました。それはステージに現れたパーヴォを迎えた万来の拍手にも表れてました。

北欧プログラムとでも言えるこの日の1曲目は、ペルト/スンマ(弦楽合奏版)。弦楽器のみの5分ほどの小品ですが、深い霧に包まれた朝の森の中を思い起こさせるような深遠な音楽でした。

続いては、シベリウスのヴァイオリン協奏曲。2015年にパーヴォ、N響、庄司沙也加さん以来の生です。ヴァイオリンソロは、青木尚佳さん。私は全く初めて聴く方ですが、現在はミュンヘンフィルでコンミスを勤められているとのことです。グレー地に花/花火?の柄がついたドレスに身を包んだ青木さんのシベリウスは、派手な装飾を抑えた、落ち着いた、真摯な演奏でした。音色がクリアで美しい。(私の勝手なイメージの)北欧の自然・気候が素直に表れている、そんな気がします。じんわりと体に染みこむように音が入ってきます。是非、今後も聴き続けたいと思うヴァイオリニストでした。

そして休憩後のニルセン交響曲第4番「不滅」は、パーヴォ、N響コンビの研ぎ澄まされた高い集中度を感じる演奏でした。私自身、この曲、生演奏で聴くのは2回目で、聴きどころが良く分かってないところもあるのですが、パーヴォの棒捌きは(私には)難しい音楽も構造的に「おー、そうなのね」と分かるように聞かせてくれます。2部、3部では抒情的で美しい旋律や悲しげなアンサンブルが印象的ですし、4部において2台のティンパニの連打が作りだす高い緊張感のフィナーレには心拍数が上がります。

昨年からのコロナ禍の演奏会の中で、多くの日本人指揮者と素晴らしい演奏を聴かせてくれたN響ですが、立つべきところに立つべき人が立つと更に音楽が違うレベルになるということを実感します。表現の幅が広がるというか、ダイナミックレンジが広がる印象です。特に、「不滅」の最後の部分、いろんな音が組み合わさって重層的に音が拡張していくのを、唸りも伴ったパーヴォの指揮ぶりと一緒にP席で聴いていると、音の創造の現場に居合わせる感動も味わえます。

終演後は割れんばかりの大きな拍手。ティンパニの植松さんが第2ティンパニの方に駆け寄り肘タッチを行う姿や団員さん達の満足感溢れる表情も見ていて嬉しくなります。パーヴォは何度も呼び出され、最後はソロカーテンコール。パーヴォも嬉しそう。そして、会場を去る聴衆の顔が明るいこと。指揮者・奏者・聴衆、三者の会場での一体感、演奏会後の幸福感、余韻など「音楽の力」と言う言葉が実感をもって感じられた、記憶に残る夜でした。

NHK交響楽団 6⽉公演 サントリーホール
2021年6月16日(水) 開場 6:00pm 開演 7:00pm

サントリーホール

ペルト/スンマ(弦楽合奏版)
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
ニルセン/交響曲 第4番 作品29「不滅」

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ヴァイオリン:青木尚佳
【本公演のアンコール曲】イザイ/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番 作品27-1 ― 第3楽章(ヴァイオリン:青木尚佳)


NHK Symphony Orchestra June Concerts at Suntory Hall
Wednesday, June 16, 2021 7:00p.m. (Doors open at 6:00p.m.)

Suntory Hall

Pärt / Summa (String Orchestra Version)
Sibelius / Violin Concerto D Major Op. 47
Nielsen / Symphony No. 4 Op. 29 "The Inextinguishable"

Paavo Järvi, conductor
Naoka Aoki, violin
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