その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

演劇〈アンチポデス〉 (作 アニー・ベイカー、訳 小田島創志、演出 小川絵梨子) @新国立劇場小劇場

2022-04-24 07:30:13 | ミュージカル、演劇

演劇についてはど素人ながら、小川絵梨子監督が率いる新国立劇場演劇部門はいろんな企画にチャレンジしていて、応援したくなる。今回は、シリーズ「声 議論, 正論, 極論, 批判, 対話...の物語」と称し、「ネットやSNSなど、他者との新しいコミュニケーション方法が増えた中で改めて、他者とどうように関わっていくのか」を3作品を通じて考えるというもの(小川監督)。今回はその先頭バッターである。

新しい物語を創造するために集まった8名のメンバーの企画会議の描写を通じて、人間にとっての物語の意味合いを考えさせる物語。

「会議」で発せられる様々な問いや会話を通じて、自分自身の「物語」を振り返ると共に、自分にとって、人間にとっての「物語」の意味合いを考えさせられた。思い起こされたのは、よりマクロ的な視点でこのテーマを考えた『サピエンス全史』などの著作におけるハラリ氏のメッセージ。

「人間(サピエンス)がこの地球の支配的な力を得るようになったのは、協力する力と「物語」「虚構」を信じる力である」、「AI、データ処理などの情報技術(IT)とバイオテクノロジーの両輪が人類の未来を大きく変えてしまうであろう」とハラリ氏は言う。本劇もミクロ視点とマクロ視点の違いこそあれど、テーマ的につながる。物語の力がテクノロジーにとってどう変わるのか?それは、人間や地球をどこに導くのか。そんなことをぼんやり考えながら観ていた。普段、私として時間を最もかけている音楽・美術鑑賞とは、演劇鑑賞は明らかに使う脳の領域が違うとも感じた。

役者さんの優れた熱演、考えられた演出で完成度高い演劇だったと思う。台本が翻訳ものなので、Sexについての発言など文化的背景から来る多少の違和感は止むを得ないだろう。シリーズ2作目も大いに期待したい。

 

シリーズ「声 議論, 正論, 極論, 批判, 対話...の物語」Vol.1
アンチポデス
The Antipodes
日本初演

2022年4月22日

Staff&Cast

【作】アニー・ベイカー
【翻訳】小田島創志
【演出】小川絵梨子
【美術】小倉奈穂
【照明】松本大介
【音響】加藤 温
【衣裳】髙木阿友子
【ヘアメイク】高村マドカ
【演出助手】渡邊千穂
【舞台監督】福本伸生

キャスト

白井 晃、高田聖子、斉藤直樹、伊達 暁、亀田佳明、チョウ ヨンホ、草彅智文、八頭司悠友、加藤梨里香

 

Drama
The Antipodes

CREATIVE TEAM
Written by: Annie BAKER
Translated by: ODASHIMA Soshi
Directed by: OGAWA Eriko

CAST
SHIRAI Akira, TAKADA Shoko, SAITO Naoki, DATE Satoru, KAMEDA Yoshiaki, CHO Yonho, KUSANAGI Tomofumi, YATOJI Yusuke, KATO Ririka

コメント
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