パリのオペラ座をテーマに17世紀から現代に至るまでのオペラ座の歴史、芸術、関連する社会史を紹介した企画展です。
質量ともに充実した展示で、普通に鑑賞するだけで優に1時間半はかかります。各エリアでのパネル解説文もしっかり書きこまれていて、読むだけでオペラ座通になれるのではと思うほど。展示品も絵画、下絵、設計図、模型、楽譜や小道具、衣装の実物など美術展というより総合博物展の風です。欧州の芸術史を学ぶ人には絶好のケーススタディになる展示です。
どれも興味深い内容なのですが、私には「グランド・オペラ」を中心するフランスオペラの変遷やオペラにも影響を及ぼしたジャポニズム、社交場としてのオペラ座の位置づけなどなどが興味を引きました。うろ覚えでしたが、以前読んだ岡田暁生氏の『オペラの運命』(中公新書)で学んだ所を思い出すところもあって、再読してから行けばよかったと少し後悔。
(帰宅後、パラパラと読み返してみたら、パリは「19世紀オペラ史の首都」であり、「近代市民社会におけるオペラのありようについての決定的なモデルを示したのがパリであった」として、「第三章 グランドオペラ、または、ブルジョアたちのヴェルサイユ」において一章を使ってパリのオペラを巡る状況について、詳しく解説してくれていました。「読んでから行くか、行ってから読むか」、お好みで。)
〈ジャポニズムの影響がみられるオペラ「夢」のポスター>
時代を追うだけでなくて、画家、台本作家、音楽家、舞台装置担当、演出家、等の役割の視点で展示が構成されているのも面白いです。終盤に、現在のバスティーユでのオペラ座上演の映像を流していましたが、〈コジ・ファン・トゥッテ〉や〈椿姫〉のような古典的オペラの定番も、かなり奇抜な現代的な演出が施されており、伝統と今がつながる感覚も味わえます。
バレエ関連の展示も多いためか女性の鑑賞者が通常の美術展より圧倒的に多い印象でした。新装オープンして初めて訪れたアーティゾン美術館もゆったりとした空間と展示でとっても落ち着いて鑑賞できます。2月5日まで開催。お勧めです。