作者と登場人物たちの本や図書館に対する愛がひしひしと伝わってくる物語です。きっと読者も本好きであることは間違いないでしょうから、この本のあるところに、三者三様の本好きが醸し出す暖かく幸せな時空間が形成されていることが想像されます。
登場人物それぞれの個性的なキャラクターが、魅力的に描かれ、親近感も湧きます。淡々としてはいるが丁寧な表現が、読む人なりに、しんみり、ハラハラ、どきどきの起伏が味わえると思います。
喜和子さんの一生を巡る物語と明治以降の帝国図書館の歴史物語が相互に語られ、近代文学史の一面を伝えられます。織りなす人の物語として文学史にも血が通います。
前知識が無かった帝国図書館史の追っかけは「そんなことがあったのか~」とお勉強と驚きの両方が味わえますし、謎めいた喜和子さんの前半生が解明されていくストーリー展開は計算されていて、読み始めるとなかなか本を置くことが難しいです。
お勧めしたい一冊です。