その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

お初の「こんにゃく座」は〈リア王〉 @吉祥寺シアター

2024-09-20 07:32:21 | ミュージカル、演劇

以前から「オペラシアターこんにゃく座」の名前は聞いたことはあったけど、初めて実演に接する機会を得た。演目は「リア王」。シェイクスピア悲劇の中でも「マクベス」と並んで好きな作品だ。公演初日に吉祥寺シアターにて観劇(中央最前列)。

「リア王」のオペラ作品は、以前、アリベルト・ライマン作曲のオペラ「リア」(2013年二期会公演、指揮:下野竜也、演奏:読響)を聴いたことがある。こんにゃく座のオペラ「リア王」とは一体どんな舞台・音楽になるのか興味津々だった。

様式は音楽劇であった。音楽はサックス、コントラバス、パーカッション、ピアノの4人の小編成。演劇が進む中で、 萩京子作曲の音楽が奏でられる。演劇が主で、音楽は従と言う印象だ。

演劇と音楽が効果的にミックスされて、収容100名規模の吉祥寺シアターの密空間効果も加わり、濃厚なリア王が展開された。役者は多くの台詞を音楽に載せて歌う。音楽が日本語台詞にマッチして、非常に聴きとりやすい。言葉の嵐に吞み込まれるシェイクスピアの演劇としては、むしろ演劇よりも聴きやすいほどで驚きだった。

その分、原作の個々の台詞は取捨選択され、その分人物の造形描写も薄まるところはあるものの、それは致し方無いだろう。

本作のキーとなる道化役は男女のペアにより演じられた。ペアになることにより、音楽的にも重唱になったり、交互の音階を違えての歌唱が耳にも心地よく、このやり方は上手くできているなと感心した。

役者さんは、夫々、熱演であったが、とりわけ題名役の大石哲史の重みある演技、泉篤史演じるエドワードの狂人ぶり、エドマンド島田大翼の悪人ぶり、道化の2人組が特に印象的だった。

舞台中央に運動会の大玉転がしに使えるぐらいの球体が置かれ、場面により上下する。あとは、右手奥に姿見のような鏡のつい立が置かれているぐらいでシンプルなもの。芝居に集中できる舞台装置であった。

大舞台のオペラとは趣の異なる音楽劇。演劇性が高く、とっても満足度高い。他の公演もまた足を運んでみたい。

 

2024年9月13日
吉祥寺シアター

スタッフ
原作       ウィリアム・シェイクスピア(小田島雄志訳による)
作曲       萩京子
演出       上村聡史
美術       乘峯雅寛
衣裳       宮本宣子
照明       阪口美和
舞台監督              大垣敏朗
音楽監督              萩京子
宣伝美術              ワタナベケンイチ(イラスト)・片山中藏(デザイン)

キャスト

リア王:大石哲史
ゴネリル(リアの長女):鈴木あかね
リーガン(リアの次女):豊島理恵
コーディリア(リアの三女):小林ゆず子
ケント伯爵(リアの忠臣):佐藤敏之
オールバニ公爵(ゴネリルの夫):富山直人
コーンウォール公爵(リーガンの夫):北野雄一郎
グロスター伯爵(リアの重臣):髙野うるお
エドガー(グロスターの息子):泉篤史
エドマンド(グロスターの息子):島田大翼
オズワルド(ゴネリルの執事):彦坂仁美
道化1:金村慎太郎
道化2:沖まどか
淑女(ブリテン王国に仕える人物):青木美佐子
フランス王(コーディリアの夫)・兵士:沢井栄次
バーガンディ公爵・兵士:吉田進也
使者・刺客:冬木理森
人々:鈴木裕加、川中裕子、入江茉奈、小林ゆず子

サクソフォン:野原孝
コントラバス:佐々木大輔
パーカッション:高良久美子
ピアノ:服部真理子

2024年9月13日(金)~23日(月祝)

 

コメント
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