その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

今回も記憶に残る名演! チョン・ミョンフン/東フィル、ヴェルディ〈マクベス〉

2024-09-23 07:30:10 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

去年7月の記憶に残る〈オテロ〉からはや1年。今年のチョン・ミョンフン✕東フィルによるヴェルディのシェイクスピア・オペラは〈マクベス〉。このシリーズの最終回ということだ。〈マクベス〉は演劇の方はそれなりの数を観ているが、オペラは10年以上ぶりで、この日が待ち遠しくてしょうがなかった。

期待通りの素晴らしい公演だった。マエストロの指揮の元、独唱陣、合唱、オケが三位一体となって非の打ち所無いハイレベルなパフォーマンス。

冒頭の序曲から、東フィルの集中力溢れる演奏に痺れた。そして、全幕を通して刃の上を渡るような緊迫感と攻めの演奏が続く。弦・管・打各楽器がまとまりスコットランドの嵐のような圧を感じた。

外国人歌手を中心とした独唱陣も底力を見せつけた。題名役のセバスティアン・カターナとバンクォー役のアルベルト・ペーゼンドルファーは迫力の低音。マクベス夫人役のヴィットリア・イェオのソプラノも張りがあって美しい。夫を叱咤激励する強い妻であった。久しぶりのマクベスだったので、夫人に多くのアリアが与えられているのは新鮮だった。そして、マクダフ役のステファノ・セッコのテノールも高らかに響く。

更に、個人的に最も受けたのは、新国合唱団の合唱。合唱の美しさもさることながら、特に魔女たちの演技には大拍手。第3幕の舞台上での表情、動作のいかれ方がまさに魔女たちで、舞台装置なくとも魔界に引き込まれた気分であった。演奏会方式でここまでの迫真の演技があると、正直、舞台セットは無くても構わないと思ってしまうほどだ。

合唱指揮の冨平さんのポストによると、この場面、魔女たちをステージ最前線に配置して、演技まで入れたのは、練習の際にチョンさんから出た提案だという。劇的な効果を高めたこの演出に見事に応えた新国合唱団、さすが。

合唱団だけでなく、独唱陣にもしっかり演技が入る。また、照明も場面で変化し、舞台を盛り上げた。演奏会方式として、これ以上はあるまいと断言できるほどの、ステージが展開された。

終演後は、割れんばかりの大拍手と歓声に包まれた。3回の公演の最後ということもあってか、チョンさんを初め独唱歌手陣、合唱陣、オケの皆さん、大きな仕事を終えた安心感と充足感が表情に現れていた印象を受けた。私自身も、大きな満足感一杯で拍手を送り、帰路についた。

 

2024年9月19日(木)19:00
東京オペラシティ コンサートホール

第164回東京オペラシティ定期シリーズ 

指揮:チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)
マクベス(バリトン):セバスティアン・カターナ
マクベス夫人(ソプラノ):ヴィットリア・イェオ
バンクォー(バス):アルベルト・ペーゼンドルファー
マクダフ(テノール):ステファノ・セッコ
マルコム(テノール):小原啓楼
侍女(メゾ・ソプラノ):但馬由香
医者(バス):伊藤貴之
マクベスの従者、刺客、伝令(バリトン):市川宥一郎
第一の幻影(バリトン):山本竜介
第二の幻影(ソプラノ):北原瑠美
第三の幻影(ソプラノ):吉田桃子

合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)

ヴェルディ/歌劇『マクベス』
全4幕・日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
公演時間:約2時間45分(休憩含む)

September 19, 2024, Thu
19:00
Tokyo Opera City (Concert Hall)

The 164th Subscription Concert in Tokyo Opera City Concert Hall
Conductor: Myung-Whun Chung (Honorary Music Director)
Macbeth: Sebastian Catana
Lady Macbeth: Vittoria Yeo
Banquo: Albert Pesendorfer
Macduff, thane of Fife: Stefano Secco
Malcolm, Duncan's son: Keiroh Ohara
Lady-in-waiting to Lady Macbeth: Yuka Tajima
A Doctor: Takayuki Ito
Servant of Macbeth/Murderer/Herald: Yuichiro Ichikawa
Apparition 1: Ryusuke Yamamoto
Apparition 2: Rumi Kitahara
Apparition 3: Momoko Yoshida

Chorus: New National Theatre Chorus (Chorusmaster: Kyohei Tomihira)

Verdi: Opera "Macbeth" in concert style

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