その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

せんがわ劇場芸術監督演出公演「ドクターズジレンマ」(作:バーナード・ショー、演出:小笠原響、翻訳:小田島創志)

2024-10-23 07:30:07 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

名前は良くお見かけするが、芝居は観たこと無かった演出家・小笠原響氏による「ドクターズジレンマ」(作:バーナード・ショウ、翻訳:小田島創志)を初日に観劇。仙川劇場の芸術監督に就任され、その初演出とのことである。

ベテランと若手の役者陣が良く組み合わさった、見応えある心理/倫理サスペンス劇だった。結核の治療法を開発した有能な医師が、命を救うべき患者の絞込みに倫理的、論理的、そして個人的な愛情の間で迷い、最終的な行動を取る。主人公とその友人の医師たちや患者である将来を嘱望される若手芸術家とそのパートナー、夫々の社会的地位や価値観に基づきながら、交わされる会話は密度が濃く、ユーモアを含ませつつも、その展開は緊張感一杯。テーマについても観衆にも問いかける問題提起型の作品とも言える。1900年代初頭の作品らしいが、今でも全く古さを感じず、良くできた脚本だと感心した。

役者陣の安定しつつ、熱意籠った演技も光った。主人公の医師リジョンをはじめとした医者陣は、夫々が個性的で、キャラクターの人物造形を明確に演じベテランの味たっぷりだった。また、天才芸術家とそのパートナー(妻)を演じた若手二人も、社会的地位と責任を持つ「大人」の成熟と思考との対称性が際立っていた。石川 湖太朗さんの奔放な芸術家ぶりが、とりわけ印象的。

舞台はUの字型に舞台を取り囲むつくり。観衆の集中力が三方から舞台に向かい、役者と観客の一体感がある。私は一辺の最前列だったので、今にも役者さんとぶつかるんではないかと言うぐらいの至近距離で、臨場感がMaxだった。

最近、シェイクスピア悲劇の観劇が続いていたので、また違った演劇の面白さを味合わせて貰い、とっても充実感ある観劇体験であった。

 

せんがわ劇場芸術監督演出公演「ドクターズジレンマ」
2024年10月18日(金) 
会場: 調布市せんがわ劇場

キャスト CAST
佐藤 誓 Sato Chikau
髙山 春夫 Takayama Haruo
清水 明彦 Shimizu Akihiko
山口 雅義 Yamaguchi Masayoshi
内田 龍磨 Uchida Ryuma
佐藤 滋 Sato Shigeru
大井川 皐月 Oigawa Satsuki
石川 湖太朗 Ishikawa Kotaro
なかじま 愛子 Nakajima Aiko
星 善之 Hoshi Yoshiyuki ★

スタッフ STAFF
演出 小笠原響
翻訳 小田島創志
美術 乘峯雅寛
美術アシスタント 酒井佳奈、関 由樹
小道具 出崎健太(高津装飾美術)
音楽 日高哲英 (HP)
照明 石島奈津子(東京舞台照明)
音響 藤平美保子(山北舞台音響)
衣裳 加納豊美
舞台監督 伊達一成
舞台監督助手 西條義将
演出助手 深堀絵梨 (HP)(HOLIDAYS HP) ★
制作助手 平松香帆 (JAPLIN HP) ★
宣伝美術 チャーハン・ラモーン
宣伝撮影 福山楡青 (HP)
音声ガイド 藤井佳代子
字幕 松田香緒
鑑賞ナビゲーター 佐川大輔(HP) (THEATRE MOMENTS HP) ★
鑑賞サポート 舞台ナビLAMP (HP)

主催 公益財団法人調布市文化・コミュニティ振興財団

芸術監督 小笠原響

★せんがわ劇場DELメンバー


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ブロムシュテット祭り2公演... | トップ | 経験の無いブーイングの嵐・... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。