今旅行で2つ目にして最後のプロムスは、パッパーノ大将が音楽監督を務めるローマのサンタ・チェチーリア・アカデミー管弦楽団の公演となりました。サンタ・チェチーリア・アカデミー管弦楽団は、ローマ旅行した際に聞いて以来2回目。楽団名をそのまま訳すと「サンタ・チェチーリア・アカデミー管弦楽団」ですが、ネットでみると「サンタ・チェチーリア・アカデミー国立管弦楽団」と「国立」と付けるのが一般的のようで、違いは良くわかりせんが、同じ楽団をさしているようです。「管弦楽を専門に演奏するイタリア最古のシンフォニー・オーケストラ」とのこと。
プログラムは非常に興味深く、ハイドンの創世記<混沌>に始まって、バーンスタインの交響曲第1番『エレミア』)(ヘブライの預言者)と続き、そしてマーラーの交響曲第1番で締まります。プログラムによると、バースタインの生誕100年を記念してバースタインの曲を挟んで、彼が得意としたハイドンとマーラーの曲を置いたとのことでした。
個人的には、初めて聴いたバーンスタインの交響曲第1番『エレミア』が特に印象的でした。創世記との連続性を意識してなのか、創世記<混沌>からそのままアタッカで『エメリア』が始まりました。第1楽章Prophecy(預言)は静謐で宗教的な精神を感じる音楽。そして、第2楽章Profanation(冒涜)はジャズ風のリズムも取り入れた異教徒の祭礼が表現されます。そして、第3楽章Lamentation(哀歌)では、エリザベス・デション (Elizabeth DeShong)が清廉なメゾ・ソプラノの歌声で、ヘブライ語の哀歌を歌い上げました。ナチスのホロコーストが行われている時代に作曲されたこの曲、ユダヤ人としてのバースタインの誇りやプロテストを感じさせるものでした。
後半のマーラー交響曲第1番は前半とはうって変わって、ストレートで開放的な演奏でした。この曲、最近ではパーヴォさんとN響で聞いていますが、パーヴォさんのようなひねりは無く、明るく素直な<巨人>。パッパーノ大将のリズム・歌が、そのまま音楽に乗ってくる感じです。コンマスのバイオリンがやたら良く聞えてきました。
前夜を大きく上回る終演後の拍手に応えて、アンコールは2曲もやってくれました。1曲目は聞いたことがあるが曲名はわからず、2曲目はウイリアムテル序曲。ホント、ノリノリで楽しい。
3年ぶりのプロムスでしたが、全く変わらない音楽を心底楽しむ雰囲気を十二分に堪能しました。思いっきりデカ音での携帯電話の呼び出し音が鳴ったり、ホールに響き渡るような咳の音が遠慮なく頻発したりで、もう日本のコンサートホールでは目をひん剥いたファンの非難を浴びそうな聴衆マナーも、全体の楽しい雰囲気に紛れてしまいます。平土間の立ち席前方に陣取る熱烈ファンやビールやワインやジン・トニックを片手に音楽を聴くアリーナやボックス席の聴衆も、この場で音楽を共有する喜びが滲み出てる。やっぱりBBCプロムス最高ですね。
2か月にわたるプログラムを見渡すと、純クラシックのコンサートから、クラシック以外のジャンルの音楽も混ぜ合わせたプログラムが増えた印象があります。世の変化とともに、プロムスも変わっていくのでしょう。
Prom 37: Orchestra of the Academy of Santa Cecilia & Sir Antonio Pappano
19:30 Fri 10 Aug 2018 Royal Albert Hall
Programme
Joseph Haydn: The Creation – Chaos(6 mins) Leonard Bernstein: Symphony No. 1 'Jeremiah'(25 mins) Gustav Mahler: Symphony No 1 in D major(56 mins)
Performers
Elizabeth DeShong: mezzo-soprano
Orchestra of the Academy of Santa Cecilia, Rome Sir Antonio Pappano: conductor
Bernstein’s emotive First Symphony is the work that put the young composer on the map. Antonio Pappano and the Orchestra of Santa Cecilia here pair it with another symphonic debut – Mahler’s arresting, visionary First Symphony.