現代世界のテクノロジー界のグルの一人と言って過言ではない、MITメディアラボの所長を務める伊藤穣一氏による、「テクノロジーが変えつつある世界をきちっとした視点をもって見る」ことを意図した一冊。新書版で平易な語り口で記述されている。
伊藤氏の著作ということで期待して手に取ったのだが、最初の読後感は、正直なところ、やや期待外れというものであった。新しい論点が提示されたり、内容的には目から鱗が落ちるような記述があったわけではなく物足りなく感じたためである。
だが、よくよく考えてみると、私が本書に何らかの「回答」を期待する読み方をしていたためだと思う。本書は、あくまでも考えるためのきっかけ、切り口を与えてるための本だと考えたい。
例えば、AIにより労働はどう変わるのか?「自分の生き方の価値を高めるためにどう働けばいいのか」という新しいセンシビリティ、ミーニンフオブライフが重要になるが、それにあなたはどう考えるのか。
AI、VR、ARなど科学技術を使って人間の身体や認知能力を進化させ、人間を全れのない状態にまで向上させようという「トランスヒューマニズム」の思想が広がってきている。筆者は必ずしもその考えに組しないが、人間と人間を区分けする一線は何なのか?といった「そもそも論」が重要になってくる。・・・と言った内容である。
後半は日本・日本人への批判でもあり、裏返しのエールでもある。日本のプロセス重視、空気による支配と言った社会のシステムは変えるべき時に来ている。そして、2020年の東京オリンピックという機会を活かして、現代の課題を解決に向けた「ムーブメント」を起こしてほしいという期待だ。
答えを考えるのも、行動を起こすのも、我々、読者しかないということだ。
目次
はじめに
第1章「AI」は「労働」をどう変えるのか?
第2章「仮想通貨」は「国家」をどう変えるのか?
第3章「ブロックチェーン」は「資本主義」をどう変えるのか?
第4章「人間」はどう変わるか?
第5章「教育」はどう変わるか?
第6章「日本人」はどう変わるべきか?
第7章「日本」はムーブメントを起こせるのか?
あとがき