『レット・イット・ビー』を田舎の映画館で観たのは、1970年の秋、高校1年の時だ。
田舎では、映画が庶民の娯楽としての地位を、かろうじて死守していた時期だ。
バンドの絶頂期の映画ならともかく、解散後のバンドの終焉期を振り返る映画は珍しい。
私は高校のビートルズ同好の士の同級生とふたりで観に行った。
当時、九州の辺境の町にも映画館は3館あった。
そのうちのひとつで『レット・イット・ビー』は上映された。
入り口の上の大看板には、レコードジャケットと同じ絵が描かれていた。
その頃はまだ映画の看板描き専門の職人がいたのだ。
映画のポスターも何枚も貼られ、掲示板にはスチル写真も多数飾ってあった。
関係者にビートルズファンがいたのか、そこだけが、殺風景な田舎町には不似合いな雰囲気を漂わせていた。
ビートルズと九州の辺境の田舎町、交わることのない取り合わせを目にして、私は複雑な気分になった。
こんな田舎町に、映画とはいえ、ビートルズがやって来た嬉しさと、ビートルズのファンでもない、田舎町のオッチャンやオバチャン、兄チャン、姉チャンも物見遊山で観に来るのかと思うと、ビートルズに申し訳ないような気もした。
館内に入ると、案の定、8割方埋まった客席の半分はそんな年輩の観客だった。
クレージーキャッツやドリフターズと同じような、コミックバンドの映画と勘違いしているんじゃないか、とさえ思った。
それはともかく、私は、演奏はもちろん、動いて喋って笑ったりするビートルズを観られるというだけで、胸をときめかせていた。
解散の経緯は、諸説、音楽雑誌や平凡パンチなどで頭に入っていたが、この映画こそが、それらの信憑性のカギになると思っていた。
延々と続くドキュメンタリー調のシーンは、田舎の庶民にとっては退屈そのものだったようだ。
途中で退席するオッチャン、オバチャンも少なくなかった。
映画の内容に関しては、ここで多くを語る必要もないだろう。
全編に流れる通奏低音のようなざわめきと、不協和音のようなメンバー間の会話が、偉大なグループの崩壊の兆しを如実に物語っていた。
クライマックスのルーフトップコンサートに、消える間際のロウソクの輝きのような、終わりを悟ったメンバーの最後の結束を見た。
今では『レット・イット・ビー』は記憶のフォルダーの中で、モノクロのファイルとなって眠っている。
昭和が遠くなるに伴い、田舎町は寂れる一方で、映画館もすべて閉館してしまった。
田舎では、映画が庶民の娯楽としての地位を、かろうじて死守していた時期だ。
バンドの絶頂期の映画ならともかく、解散後のバンドの終焉期を振り返る映画は珍しい。
私は高校のビートルズ同好の士の同級生とふたりで観に行った。
当時、九州の辺境の町にも映画館は3館あった。
そのうちのひとつで『レット・イット・ビー』は上映された。
入り口の上の大看板には、レコードジャケットと同じ絵が描かれていた。
その頃はまだ映画の看板描き専門の職人がいたのだ。
映画のポスターも何枚も貼られ、掲示板にはスチル写真も多数飾ってあった。
関係者にビートルズファンがいたのか、そこだけが、殺風景な田舎町には不似合いな雰囲気を漂わせていた。
ビートルズと九州の辺境の田舎町、交わることのない取り合わせを目にして、私は複雑な気分になった。
こんな田舎町に、映画とはいえ、ビートルズがやって来た嬉しさと、ビートルズのファンでもない、田舎町のオッチャンやオバチャン、兄チャン、姉チャンも物見遊山で観に来るのかと思うと、ビートルズに申し訳ないような気もした。
館内に入ると、案の定、8割方埋まった客席の半分はそんな年輩の観客だった。
クレージーキャッツやドリフターズと同じような、コミックバンドの映画と勘違いしているんじゃないか、とさえ思った。
それはともかく、私は、演奏はもちろん、動いて喋って笑ったりするビートルズを観られるというだけで、胸をときめかせていた。
解散の経緯は、諸説、音楽雑誌や平凡パンチなどで頭に入っていたが、この映画こそが、それらの信憑性のカギになると思っていた。
延々と続くドキュメンタリー調のシーンは、田舎の庶民にとっては退屈そのものだったようだ。
途中で退席するオッチャン、オバチャンも少なくなかった。
映画の内容に関しては、ここで多くを語る必要もないだろう。
全編に流れる通奏低音のようなざわめきと、不協和音のようなメンバー間の会話が、偉大なグループの崩壊の兆しを如実に物語っていた。
クライマックスのルーフトップコンサートに、消える間際のロウソクの輝きのような、終わりを悟ったメンバーの最後の結束を見た。
今では『レット・イット・ビー』は記憶のフォルダーの中で、モノクロのファイルとなって眠っている。
昭和が遠くなるに伴い、田舎町は寂れる一方で、映画館もすべて閉館してしまった。
ビートルズのジョージ、ストーンズのキース。どちらもヘタウマギタリストだ。キースに至っては、歳をとってその素人顔負けのヘタさに、磨きがかかってきた気もする。でも、そのサウンドには、他のギタリストには出せない独特な味わいがあるんだよね。 そんな味わいの小説を、Amazon Kindle Storeに30数冊アップしています。★★ 拙著電子書籍ラインナップ・ここから、またはプロフィールのQRコードから買えます。
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