虹色仮面 通信

神出鬼没なオッサンが毎日感じたことを取り留めなく書き連ねます

最強の経営

2009-03-10 00:51:58 | スポーツ
プロレスはスポーツとエンターテイメントの間に位置する曖昧なスポーツである。
そのためスポーツ界には、純粋な競技スポーツと一線を画そうとする風潮が昔から存在する。
たしかにプロレスには乱立する団体、不明瞭なルール、過剰な演出、筋書きありきと思われる展開など純スポーツとはチョット異なる要素があるのは事実だ。しかしファンにはその微妙さがたまらないのだ。

その点から言ってもプロレスはユニークなスポーツであり、週刊プロレスの元編集長・ターザン山本が彼の著書「プロレス式最強の経営」で、経営的視点からプロレスの特徴を指摘している。
これがまたターザン山本らしく秀逸な指摘のオンパレードだ!

・プロレスは放送権料や企業スポンサーのないプロスポーツでお客さんのチケット代だけで成立している。
・プロレスはルールの曖昧なスポーツである。ルールを厳正にするとアマチュア競技化してしまい、面白さは半減する。しかしルールを緩やかにしすぎてしまうと、プロレスと喧嘩の区別がわからなくなり、けが人が続出する可能性がある。
・ルールが曖昧であるということは勝敗も曖昧で、それが競技記録に残らないという問題が生じる。スポーツ新聞には前日の結果が出ているが、それはその試合の記録でしかない。しかしそこに観客がいれば、試合は記憶として残る。プロレスではライブで観戦する人にとっての「その場限りの興奮と感動」が商品価値を持つのである。これをプロレスの「聖なる一回性」と呼ぶ。
・プロレスと相撲は対照的なスポーツである。相撲はすべて制度化されたスポーツであり、伝統と格式に縛られている。それに対してプロレスは何でもありの世界であり、イノべーティブなスポーツである。四十八手と禁じ手に縛られ、反則もご法度な相撲に比べ、プロレスは自由奔放である。ファンを喜ばすためなら、覆面レスラーも有刺鉄線も多少の反則もお構いなしである。
・経営という視点から見ると、プロレスは収益を上げやすい構造になっている。土俵を作る人から髪結い、そして行司まで、相撲は役割分担がすべて決まっているが、プロレスはレスラーがチケットを売り、リングを作り、場内整理を行い、リング上で戦うといった具合に一人で何役もこなす、人材の有効活用という点においてきわめて効率的である。

いずれも的を得た指摘だし、プロレスの特徴をとらえた視点で持論を展開している。
ここで指摘されるプロレス独特の緩さが「合理的な経営」に繋がっていると考えると、現代スポーツビジネス的な視点で考察すると素晴らしいコンテンツを有していると言えそうだ。
実際、今日プロレス団体は30以上あると言われ、メジャーな団体から地域に根ざした小さな団体まで全国各地に点在している。
そして日本全国にいる数多くのプロレスファンを楽しませてくれる。
もっとプロレス団体を「地域社会のエンターティナー集団」として有効活用してもいいのかもしれない。

ps.正直なところ、今のプロレスより70~80年代の素朴なプロレスが面白かったように感じるのは歳のせい?今のプロレスはワザも展開も高度過ぎるんだよなぁ。