遊行柳(ゆぎょうやなぎ)

2006年02月05日 | Weblog


昔から、やまとうたと言われる、いわゆる和歌に詠まれてきた名所は歌枕(うたまくら)と言われます。桜で有名な吉野はその歌枕の名所ではトップクラスになるでしょう。そのほか、いろいろな所が歌に詠まれて来ましたが、作者はその地を必ずしもは訪れずに詠んだことも多いと聞きます。しかし、以下に紹介する歌と句については作者自身が歌枕の地を自分で訪れたようです。


栃木県那須町の芦野という所の国道294号線のすぐ近くにの田の中に、遊行柳というちょっとした名所があります。この地はその歌枕で有名です。最初は何で有名になったかは分かりませんが、まずは鎌倉時代に東北地方に往来をしたという西行の歌で有名です。


     道野辺に清水流るる柳かげしばしとてこそ立ち止まりつれ


この歌で、西行がここを通ったとらしいことが想像できますが、おそらくこの歌により、歌枕の地となったのではないかと思います。さて、時代は下って室町の頃、時宗の教えを広めようと遊行の旅を続けていた上人がこの地にさしかかると、老人が現れてこの歌でゆかりのある柳に案内をして、十念という修行の方法をおしえて消えたという。それから柳の精が現れて舞を舞うという、この柳にまつわる話の謡曲が作られ、ますます有名になりました。


余談になりますが、この294号線は奥州街道と重なっていますが、そのまた昔はこの遊行柳のちょっと南の伊王野というところから、旧街道が別にあります。こちらは道路は狭いし、坂道も少し急でちょっと寂しい街道です。おそらく義経はこの旧街道を通ったのではないかと思います。西行は新しい(と言ってもかなり古いですが)街道を通ったと思われますが、可能性は少ないかも知れませんが、ちょっと引き返して伊王のから旧道をとったかも知れません。

芭蕉も奥の細道の旅の途中で、新街道を通ったと思われます。やはりこの遊行柳で足をとめて句を詠んでいます。

            田いちまい植えて立ち去る柳かな

田植えをしたのは誰なのか。早乙女たちか、それとも柳の精なのか。私には分かりません。


      

      西行の歌碑           芭蕉の句碑   
      
                    
遊行柳の謡曲は http://www.syuneikai.net/yugyoyanagi.htm
           http://www.bashouan.com/pbYugyouyanagi.htm

奥州街道については http://homepage3.nifty.com/ousyukaidou/zenzu.htm