かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

いまどき5インチFDなんて理解してもらえるのか、疑問ではありましたが……

2010-05-09 22:02:42 | Weblog
 連載小説『夢の匣』第3章、予定通り終了しました。
 ポイントになっている5インチのフロッピーディスク、もちろんCDドラマ『南麻布魔法倶楽部』に登場した小道具ですが、ドラマでは単にフロッピーディスク、と呼んでいただけで、5インチかどうかは判りません。ただ、音だけのCDドラマ故に班別できることもあって、鬼童海丸がフロッピーからマツオトオルの残したデータを読み取る際に聞こえてきた動作音が、5インチのフロッピーディスクドライブのそれだったことから、このディスクも5インチに設定しておきました。当時、既に3.5インチFDが登場していたはずですが、まだ5インチも現役で残っていたのかもしれませんね。現役ではありませんが、うちの職場にはまだ稼動状態で1台ありますし。でも、もう数年のうちには、「FDって何?」というような時代になるのでしょうね。生産も終了する、という話を聞いたことがありますし、USBメモリなどのメディアが急速に大容量化・低価格化している今日、わずか1MB少々の容量しか無く、低速でエラーも多いメディアが今まで残っていただけでもキセキ的と言えるのかもしれません。
この小説の話も、往年の麗夢ファン以外には理解されない物になるのか、と思うと、流れ去った時の長さに溜息の一つもつきたくなります。
 お話としては、『アッパレ4人組』の妹達4人の小学生の術中にはまった麗夢ちゃんと死神博士がどう状況を挽回するのか、円光、鬼童、榊の三人はどうなるのか、というあたりがこれからのテーマになるわけですが、まだ登場していないレギュラーをどう絡ませていくのか、というのも課題になります。CDドラマでは出てこなかったからといって、同人小説でも出さないまま、というのは流石に可哀想ですし、見せ場の一つも作ってあげないと、と思っている次第です。
 とはいえ、来週はどう展開したものか。悩ましい問題ではあります。


 
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03.南麻布学園初等部 その4

2010-05-09 12:00:00 | 麗夢小説『夢の匣』
 更にひっくり返してみていると、板の片面に、シール状のラベルが張ってあるのに気がついた。
「なになに? えーと、『闇の皇帝の信仰と実態 ならびに南麻布の霊的地場に関する一考察 マツオトオル』? なにこれ?」
「どうしたかね?」
「きゃっ!」
 上げかけた悲鳴を、とっさにサカキ君が手でふさいでくれた。全く、気配を殺してヒトの背後に立つのは止めて欲しい。私はゴクリ、と喉を鳴らして悲鳴を呑み込むと、サカキ君にお礼のウインクをして振り返った。その向こうで、私のパソコンに取り掛かっているはずのキドウ君とエンコウ君が顔を真っ赤にしてサカキ君をにらめつけているのが不思議だったが、死神の前で余所見なんてしてたら冗談抜きで命を刈り取られかねない。私は努めて笑顔を作って、目の前の天敵に対峙した。
「き、教頭先生、いつの間に……」
「いつの間にもなにも、今来たところですがね。それより先生、何をしているのですか?」
「あ、それが、日直のサカキ君に預けられた教材に、ヘンなものが混じっていたんですよ」
「ヘンなもの?」
 首をかしげる教頭先生に、さっきの四角い薄い板を差し出した。
「これなんです」
「なんだ、フロッピーディスクじゃないですか」
「え? でも、形が全然違いますよ?」
 驚く私に、教頭先生はいかにもしょうがないな、と顔に書いて、私に言った。
「まあ随分古いタイプのものですがね。昔は、フロッピーディスクというとこれが主流だったんですよ。でも、これがどうかしたのですか?」
「サカキ君が言うには、教頭先生から預かった教材に混じっていた、ということなんですけど、ちょっとここ見てください。これ、教頭先生のではないですよね?」
「どれどれ……。マツオトオル……。先生の前任の方ですね。はて、何で彼の物が?」
 そうか! どこかで聞いたことがあると思ったら、私の前に担任をして、今は入院されているという人の名前だったのか。
「闇の皇帝の信仰と実態? 彼は私の後輩ですが、こんな研究をしていたのかな? ……まあ、これは私が預かりましょう。折を見て、松尾先生にお返ししますよ」
「あ、きょうと……」
「教頭先生!」
 私が、何か妙に引っかかるものを感じて思わず声をかけようとしたその時。私を押しのけるようにして、一人の少女が割って入った。
「何ですか? 君たち」
 教頭先生が振り向き、学級委員長の荒神谷皐月さんに答えた。いつの間にか、巻向琴音さんや眞脇紫君、斑鳩星夜さんがその後ろに並んでいる。
「そのフロッピー、実は私たちのなんです!」
「ほう?」
「……松尾先生が入院される前に、預かりました」
「君たちが? またどうして?」
 教頭先生の何気ない疑問に、荒神谷さんから目配せされて、斑鳩星夜さんが妙に慌てて答えた。
「あの、その……、そう、そうです! 中のデータを見ておいて欲しい、って、頼まれたんです!」
「データを? 君たちはこれに何が入っているのか、知っているのかね?」
「はい。大体は聞いています」
「良ければ、先生に教えてくれないかね? 中身は何です?」
「そ、それ、ただのゲームソフトなんです!」
「あ、バカ!」
 眞脇紫君が答えると同時に、彼の頭に髪の色とそっくりな三角形の物が二つ、ピョコン、という感じで立ち上がった。コンビニのおにぎりより一回り大きなそれは、いわゆるネコミミという奴だろうか。でも飾り物と違って、ぴくぴく動く様はまるで本物の猫の耳みたいだ。その瞬間、一瞬、ではあったが、教頭先生が凍りついたのが判った。あの『死神』をたとえ一瞬とは言え茫然自失させるなんて! 自分も一緒に唖然としてしまったのが実に惜しい。そんな微妙な空気に当の本人は、
「え? なに?」
と周囲を見回していたが、すぐに異変に気づいて、恐る恐る手を頭にやった。指で摘んだ瞬間だけ、気持ちよかったのか、ほわん、と表情を和ませたが、すぐに仰天して叫び声を上げた。
「な、なにこれ! なんで僕の頭に耳が生えてるの?!」
「さっき約束したじゃない! とにかく引っ込めて!」
 我に帰った斑鳩さんが慌ててそれを抑えようとし、纏向さんが口を塞ごうと眞脇君の背後から抱きつく。が、荒神谷さんが天井を仰いでいるところを見ると、全ては後の祭りだったらしい。いつの間にー! と床にぺたんと座り込み、頭を抱えて半泣き状態の(ア、なんかカワイイ)眞脇君を見下ろして、教頭先生の白い眉がみるみるそびやかされた。
「斑鳩君。またやったのかね?」
「え、いえあの、さつ……、ではなくて、委員長に乞われまして……」
「ちょっ! まって!」
 デヘヘヘヘ、と頭をカキカキ悪びれずに笑う斑鳩さんに、こんなタイミングで暴露するなんて! と憤懣やるかたない様子の荒神谷さん。
 教頭先生は、ふう、と深い溜息を一つついた。
「斑鳩君、君の知識と能力には端倪すべからざるものがあることは先生も認めています。だが、無闇に濫用してはならぬと前にも言いましたね? 覚えていますか? その優秀な頭は」
「……はい」
「では、可及的速やかに元に戻しなさい。そして、以後勝手な人体改造は慎むように。荒神谷君もです。いいですね?」
「でも……」
「いいですね?」
 返事を濁そうとした二人に、教頭先生は背筋だけ季節を3ヶ月ばかり逆行させるような声で念を押した。こんな声を出すから、『死神』なんてあだ名をつけられるのだ、と私が考えていることを読み取ったように、その視線がぐるりとこちらに向けられた。なんて恐ろしい死神なのだろうか……。
「綾小路先生、後で私のところに来て下さい。生徒指導の件で、少しお話しましょう」
 ひえぇ、とんだとばっちりだ……。
「あの、その、この後はちょっと用事が……」
「いいですね?」
「……はい」
 私まで斑鳩さん、荒神谷さんと相似形をなす中、ふん、と一瞥くれて教頭先生が踵を返した。
「……教頭先生、そのフロッピー……」
 しょげる二人(+私)と座り込んだ眞脇君に変わり、なおもけなげに纏向さんが追いすがった。すると教頭先生は、振り返ってこうのたまった。
「5インチのフロッピーを再生する装置など君達持っていないでしょう。放課後に先生のところへ来なさい。装置は、こちらで準備してあげます」
「……でも……」
 まだ未練ありげに見つめる纏向さんに、教頭先生は最後通牒を下してその視線を振り切った。
「大体、ゲームと聞いては君達に預けるわけにはいきません。君も校則は知っているはずですね? これは私が預かります。以上」
「…………」
 じろり、と睨みつけられては、さしもの纏向さんでも返答には窮するらしい。その無言を了解と受け取った教頭先生が、ようやく教室を去った。緊張のあまり氷点下まで下がった教室の雰囲気が、ようやく季節らしい温かみを取り戻す。
 もっとも、私の方はそれどころではないのだけれど……。
 でも、それはそれとして、実は非常に気になることが一つ有った。
 マツオ先生のフロッピーディスク。
 そしてそれの中身がゲームソフト……。
 なんだろう。
 何かが引っかかる。
 何か、頭の中に奇妙なわだかまりを覚える。
 思わず考え込んでしまった私は、その様子をじっと睨む荒神谷さん達4人の視線に、気づくことが出来なかった。
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