かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

小説連載、行き当たりばったりというのはなかなかにスリリングです。

2010-05-08 22:19:17 | Weblog
 なんだかよく分からないうちに、入力していたブログがどっか行ってしまいました。どうも半角/全角キーと誤って、その下のTabキーを押した直後に消えたように見えたのですが、今、少し入力してから改めてTabキーを押してみても何も起こりません。うーん、こういう初めての事象でしかも再現性が無いものは、いかんともしがたいもどかしさを感じますね。いつかまたやらかしてしまいそうでコワイのですが、どうしてなったのか分からなければ備えようもありませんし。当面、Tabキー周りの操作の時は気をつけて打鍵するように心がけるよりないようです。

 さて、気を取り直してブログをやり直しましょう。
 今日は無事連載小説『夢の匣』の更新ができました。先週色々あって結局連休中も更新やり損なったのですが、明日、その抜けた分ということでもう一回更新かけようと思います。これで第3章を終え、来週からは新たな展開へ話を進めていく積りです。
 それにしても、ここまでの文章量をざっと数えてみると、400字詰め原稿用紙にしてざっと80枚位に達しています。今の話の段階から鑑みますと、普段の私の展開速度からしたら、かなりのスローペースです。この調子だと、ひょっとしてかっこうの麗夢同人小説最長記録が更新されるかも? と懸念される、即ち、いつ終わるのか分からない、ということになるのですが、ここで仕切り直して展開を加速する方に舵を取るのか、はたまたこのままののんびり道中をモノは試しと続けていくのか、悩ましい判断を迫られそうです。とは言え、いくら長くても年内には終わりたいですし、モチロンそこまで引っ張る気も無いわけですが、かっこう初の試みとして、登場人物の動きに話の流れを合わせる、という、別名行き当たりばったりな作文をやらかしている関係上、何時までに終わるのか、話が収拾つくのか、など、かなりスリリングな感じがしないでもありません。まあお話のまとめのところだけは一応考えてあるので、最終的に話が発散してオチも何もありませんでした、なんていうオソロシイ事にはならないはずなのですが。
 とにかく、それもこれも次の章次第なんじゃないかな、と根拠なく直感しますんで、もう少しこのまま様子をみつつ、話を進めてみようと思います。

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03.南麻布学園初等部 その3

2010-05-08 12:48:18 | 麗夢小説『夢の匣』
 教師が自分の天職であることを改めて認識してから1週間。私は、「死神」教頭先生の指導に辟易し、サカキ君たちのいたずらに弄ばれつつも、日々充実した毎日を送っていた。気がつけばあの悩ましい夢は見なくなっていることがまた嬉しかった。今の自分が本当の自分ではなく、夢の中の自分、日々恐ろしい敵と戦う毎日の方が本当だ、なんていう夢は、ごくたまに見るならちょっとした活劇を観た気分で楽しめることもあるだろうが、毎日となるとさすがに自分はどこかおかしくなったの? そんなにストレス溜めてた? と不安にさせられてしまう。
そう、教頭先生に危うくカウンセリングをお願いしたくなるくらいに。でも、それもようやく消えてくれた。つまりは、新学期が始まってちょっと不安になっていた、ということなのだろう。幾ら1年経験を積んだと言っても、しょせんは教頭先生の指導下で右往左往していただけ。しかも今度は大事な最終学年の6年生なのだから。
 南麻布学園は、幼稚舎から大学まで基本エレベーター式で、18年通い続ければ立派に社会に通用する優秀な人材が出荷されるというシステムが出来上がっている。高等部や大学に上がるときは選抜試験もあるけれど、そこは南麻布生え抜きが優遇されていて、外部受験組よりもハードルが低い。また、小中の義務教育期間は完全に自動エレベーターで、転校などよほど特殊な事情が無い限りはそのまま中等部に持ち上がる仕組みだ。だから、そんなに緊張しなくてもいいんですよ、と先輩教師の方々はおっしゃって下さるけれど、教頭先生ときたら、
「……そもそも我が校の教育方針は、自由・自律・自尊! その中で、「愛と平和」「公平と寛容」「希望と未来」をキーワードに、やがて出ていかねばならない社会を堂々と渡っていけるだけの知識と知恵を教授し、それを生かしきる安定した人格を涵養せねばなりません。我々教師はそのためにいるのです。即ち! 我々教師は生徒たちの範たらねばならない! それが、わが校の創始者である……」
 と事あるごとにされる説教の通り、けして手綱を緩めてくれることはない。私自身もまだ不慣れなこともあって、教頭先生に言葉のムチを打たれながら、馬車馬になって頑張ってきたわけだ。でも、その1年は無駄では無かった、と理解できたおかげで、苦労もまた楽しからずや、で頑張れると判った。だから……、だから、苦手なパソコン授業も、なんとかこなせるというものだ……。
「あ、先生、それ違いますよ!」
 キドウ君の叱責が耳に痛い……。
 そう。私はパソコンって苦手なのだ。この、あまり可愛くない箱の中で何が起こってどうしてそうなるのか、なんて、いくら説明を聞いても理解出来る気になれない。それでも、この南麻布では初等部の低学年からパソコンの操作について授業が組まれているから、教師としてはやらないわけにはいかない。一応研修で基本的な使い方や、ワープロ、表計算といったソフトについては一通り習ったのだけれど、それが所詮付け焼刃以外の何ものでも無いことは、この授業で毎回四苦八苦しているところから丸わかりと言うもの。更に厄介なことに、このクラスにはとんでもない子が一人いる。まだ小学生なのに、私から見ればパソコンをまるで魔法のように自在に操って信じられない動作をさせる。そればかりか、私にはとても開ける気になれない箱を無造作に開けて、中の部品を取っ換え引っ換えしたり、操作のための設定を色々いじくったりと、もはや授業で教える事など何一つ無いような事を平然とやってのけるのだ。もう、かえって「教えてください」とこちらが頭を下げたくなるような困った子。それが、悪ガキトリオの一角、キドウくんなのだ。更にもう一人……。
「先生、パスワードも判らぬままシステム侵入するのは無理ですよ」
「作戦無し! とにかく突っ込むのみ!」
「だから無理ですって」
 私が、PC起動時のパスワードを忘れてしまったのを見て、エンコウ君が追い打ちをかける。いつ勉強したのか、初めてこのクラスを受け持った最初のパソコン授業の時は、私と同じくらい苦手にしていたはずなのに、いつの間にかおいてけぼりにされている。
「キドウ君はともかく、エンコウ君も結構詳しいのね」
「本屋さんでパソコンの入門書を読めば、これくらい判りますよ」
「あ、そう……」
「ほら、よそ見しないで、パスワード思い出して下さいよ、先生!」
 どうせ私は、入門書でも理解できないパソコン音痴ですよーだ! などと逆ギレしても始まらない。とにかく私は先生なのだから、それくらいの仕打ち、覚悟の上よ! と、自分の半分の年齢の子供達に怒られながらパソコンの前という針の筵に耐える。救いといえばサカキ君だろうか。彼は、私と同じで機械の類が大の苦手。教師としてはこんなこと言ってる場合じゃないのだけれど、個人的には実にほっとさせてくれる貴重な存在だ。ピンチの時にふと見てしまうのもやむを得ないというものだろう。
 私は、エンコウ君やキドウ君の十字砲火に絡め取られて息も絶え絶え、という状況を少しでも生き延びるべく、ついまたサカキ君の方に目をやってしまった。すると、珍しくサカキ君がパソコンを前に難しい顔をして何か懸命に考え込んでいる様子が見えた。ここは教師としてやるべき事をやらないと! 私は、追撃に余念のない二人のヤンチャ坊主をとりあえず宥めた上、キドウ君に、「何とかして! お願い!」と後始末を頼み込み、「えー、またぁ?」 といつもの悲鳴を背に受けながら席を立った。でも、先生は知っているのだ。厳しいことをバンバン言って、いかにも迷惑そうに言いつつも、その実顔は結構うれしそうだったりしているのを。案の定、私が席を立った途端、キドウ君とエンコウ君が、僕が僕が、とキーボードを取り合うようにしてパソコンを触り始めるのだから、可愛いものである。
 こうして、私は安心してサカキ君の席までたどり着き、覗き込むように呼びかけた。
「何してるのかな?」
「あ、先生か」
 サカキ君は、例によってぶっきらぼうに返事をした。基本的に彼は人当たりがあまりよろしくない。最初は警戒されているのか、はたまた甘く見られているのか、と疑心暗鬼にも囚われたけれど、これは、彼の一種の防御反応だ,ということに気づいてからは、気にならなくなった。この子は、見かけや行動とは裏腹に、優しく繊細な魂を持ち合わせているのだ。
「先生か、は無いでしょう? さっきから難しい顔して、何しているのよ」
 すると、思いのほか素直に、サカキ君が言った。
「俺日直だったから、死神に頼まれて教材を用意したんだけど……」
「教頭先生、でしょ?」
「話の腰を折るなよ。そんなのどっちでもいいじゃん」
「はいはい、それで? 教頭先生がどうしたの?」
「みんなに一通り教材を配ったのに、一枚余ったんだよ。それが何かわかんなくて」
 これ、と差し出してきたそれは、あまり見たことの無い薄っぺらい四角い板だった。
「教材ってフロッピーディスクだったんでしょ? これもそうなの?」
「配るまでは気がつかなかったんだけどね」
 南麻布学園初等部きってのパソコンマスターといえば、死神教頭先生。したがって、当校でのパソコン教材とカリキュラムは、一手に教頭先生が引き受けている。今日は所用で途中から授業に出てくるはずだけど、その前に日直であるサカキ君に、今日の教材を預けていったわけだ。ところがその教材を配ってみたら、ヘンなのが混じっているのに気がついたというわけか。
 私は、フロッピーディスクの倍近く大きい割りに、厚さは四分の1あるかどうか、という、樹脂製の黒い板を手に取った。見ると、真ん中に直径3センチほどの穴が開いている。それに、板はもっと薄っぺらなプラスチックのシートを二枚の樹脂状の板で挟みこむ、多層構造になっていた。
「あれ? 何か書いてあるわ」
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