かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

デモ位粛々と落ち着いてやればと思うのですが、大陸ではアレでおとなしい方だったりするのでしょうか。

2010-10-16 22:00:00 | Weblog
 今日は一日読書作文に明け暮れました。時折お茶を入れ、トイレに立ちながら、気になっていた小説を読み、連載小説を打ち、としているうちに、いつの間にか昼が過ぎ、外が暗くなっておりました。小説の方はラストスパートというところなのですが、日頃怠け過ぎのせいか遅々として筆が進まず、書き上げるにはもう少し時間が必要なようです。明日も書き続けるとして、完成は恐らく来週になりますでしょうか。まあなんにせよゴールが具体的に見えてきた、というのは有難いことだと思います。

 さて、中国でまた反日デモとやらが繰り広げられているのだそうで、日本資本のお店やらがまた襲われたりしているとのことです。我が国で最近行われたデモや国会議員による尖閣諸島への空からの視察、などに対する反発、ということらしいですが、こちらのデモが粛々と街中を行進して演説会などを開くだけの至極おとなしいものに終始しているのに対し、向こうはやたら元気で大人気ないのは、国民性の違いというものなのでしょうか。今中国では共産党の第17期中央委員会第5回総会というビッグイベントの最中とのことで、そういうなにより安定を重視しているはずの時期に大規模デモが発生するのは異例だ、という報道を見ましたが、これは大陸情勢が想像以上に不安定化しつつある兆しなのか、はたまたデモは地方都市ばかりで、北京、上海などの目立つところでは行われず、というところから、この程度なら十分制御可能なので政府がガス抜きにやらせているのか、端から見ている限りでは何とも分かりにくい様子です。まあ私が中国に出向くことなど、仕事でもプライベートでもまずありえませんのでさして心配もしておりませんが、身近にそんな人がいるようなら、中国など行くのはやめておいたほうがいい、と言うくらいはしてあげたいと思います。
 それにしても、墨子のような素晴らしい愛の思想を説いた思想家や、韓信のように大望の為に一時の恥も甘受する度量を見せた軍人など、多くの偉人賢人を生んだ国なのに、その子孫がこの体たらくでは大国の名が無くというものではないか、と中国古代史好きの私には思えるのですが、彼ら大陸の方々は、それら先人達をどう思っているんでしょうね。一族郎党・血のつながりをとにかく大事にする人達と聞いていますから、ご先祖様のこともさぞ大事にしているんじゃないか、と思えるのですが。

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年間百万円が用意できなくて、貴重な資料が海外に流出してしまう我が国って一体……。

2010-10-15 23:12:06 | Weblog
 天気予報では晴が続くハズと思っていたのですが、今日は盛大に雨が降り驚きました。昨日の朝、サボテンに水をやったのも、しばらく晴が続くと見た上での事だったので、こんな予想外の天気になるとちょっと困ります。

 さて、我が国の至宝がイギリスに流出してしまうというニュースを見ました。
 なんでも、考古学分野で最大の学会、日本考古学協会で保管している約五万六千冊の蔵書が、年間約100万円の保管費用が大変で受け入れ先を募集していたところ、国内からは皆無で、唯一、イギリスのセインズベリー日本芸術研究所、というところが応募してきたので、そこに寄贈することに決めたのだそうな。かつて、市川考古博物館というところに保管していたそうですが、その当時で蔵書の利用は年間数人程度。ただ、中には弥生時代研究を大きく進展させた登呂遺跡のものなど貴重な遺跡発掘報告書があり、協会会員からは、この寄贈を「文化資産の損失」と反発する声が上がっているのだそうな。
 私が驚いたのは、わずか年間100万円の保管費用が負担になって学会が積みあげてきた貴重なデータを海外に出さざるをえない、という考古学会の現状です。100万円というのは、段ボール箱に詰めて積み上げている、とある倉庫の賃貸料だそうで、きっちり整理して閲覧できるようにしようと思ったらはるかに多額の費用がかかるとのことですが、これだけ考古学や遺跡発掘に対する国民的関心が高まり、しばしばニュースネタにもなるような時代を迎えているというのに、何故に文化庁や政府はそれくらいの費用を学会に拠出してやらないのでしょうか? 建物だって、例えば地方にはかつて子どもが急増したときに立てた小学校や中学校、高校が要らなくなり、空き家になっているところが結構あります。そういうところにちょっと手を入れてやれば、本くらいいくらでも詰め込めるでしょう。我が奈良県こそ歴史文化研究の先進地として、そんな知恵のひとつも出して、資料の保管先に名乗りをあげるくらいのことはできなかったのでしょうか? 
 一方学会も学会で、一括で蔵書を寄贈する先を探したそうですが、千冊づつ位に小分けして全国に呼びかければ、とか、あるいは、文化庁や文部科学省に掛け合って調査報告書をデジタル化するようなプロジェクトを立ち上げるとか、もう少し知恵を絞って保管方法の検討を本気でやるべきだったのではないか、とも思います。
 いずれにせよ、決めるのは学会の方々ですからこちらは黙って成り行きを見守るよりないわけですが、我が国の中枢も、また我が奈良県なんか特に、歴史文化に対する興味や意識が低すぎる気がいたします。

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もう来年のスギ花粉予測がでていました(泣)。

2010-10-14 21:46:58 | Weblog
 昨日は懇親会で少しビールを飲み過ぎたようで、昼間に体重を測ったら2キロ増体しておりました。まあこれは一時的なもので、いつも1週間ほどで普段の体重に戻るのですが、体の方にもそれなりに負担があったのかして、睡眠時間はそれなりに確保していたにも関わらず、特に昼過ぎころから眠くて眠くて、身体が露骨に休養を要求している様がよく分かりました。幸いなことに今週末はどうやら休日返上しなくても済みそうなので、ゆっくり休むことも叶うでしょう。一方で連載小説も基本骨格となる話の流れは最後まで書き切りました。あとはそれに肉付けして文章にするばかり。コミトレまでにまとめて推敲して場合によっては加筆修正して、という時間をとりたいので、残りは一気に仕上げて週一の連載ペースも上げていくかもしれません。まあ、今週末の執筆状況次第ですね。

 それはそれとして、早くも来年のスギ花粉情報が出てましたね。ウェザーニュースの話ですが、来年は今年の猛暑を反映して、今年の7,8倍から10倍くらいの飛散量になるのだとか。この数字をみるとなんだかげんなりしそうですが、よく良く考えてみると確か今年は記録的に花粉量が少なかった年だったはず。ブログを読み返してみるとやっぱりそうで、例年悩まされる私が今年は医者にも行かずにシーズンを乗り切っていますから、その10倍、と言われても、平年並位なんじゃないか、と感じられます。まあ、平年並みならそれなりに備えは必要ですので、今から覚悟しておかねばなりませんね。
 ヨーグルトがいいとかお茶がいいとか言いますが、どちらも毎日食べて飲んで、多分平均的な日本人より多めに摂っているはずの私は今のところその効果の程は実感できないでいます。体質とか遺伝的なものとか、色々理由もあるんでしょうが、早く根治療法が開発されないものでしょうか。そうすれば暑苦しいマスクを付けたり、眠くなる薬に頼らなくてもすむようになるのですが。

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今更国会に出せというのもどうかと思いますが、どうせなら公開まで一気にやって欲しいものです。

2010-10-13 22:42:08 | Weblog
 今日は京都でお仕事、と言っても京都駅至近で開かれた会議に出席して、そのご懇親会に参加しただけなので、北野天満宮前のお団子や北大路駅近隣のうどんやさんはおろか、駅前のソフマップやビッグカメラも寄らずじまいでした。昼イチの会議だったので、昼食は京都駅前地下街の洋食屋で済ませました。メイン料理はそれなりでしたが付け合せできたトマトまるごと1個使ったサラダがなかなかに美味でした。機会があれば、このトマトをメインにした料理でも食べてみたいです。

 さて、尖閣諸島沖での中国漁船体当たり攻撃ビデオ、衆院予算委が国会に提出するよう沖縄地検に要請することを全会一致で決めたそうな。全会一致とは衆院では多数を占める民主党も勿論コミの話なはずですが、それほどまでに民主党は一枚岩になりきれないでいるのか、はたまた、このまま地検に持たしていたらいつ「誤って」リークしてしまうか判らないから国会で厳重に預かってわずかでも世に出る可能性を封じよう、という画策なのか、なんとも不思議な話ではあります。
 まあ国会に出せ、というだけで公開するとも何とも言ってませんから、現状はまだ、だからどうした? というレベルの話でしかありませんが、中国では海上保安庁側がぶつかってきた、という話を定説化しつつあるそうですし、ここは遅まきながらでもビデオ内容を公開して、中国に対し馬鹿なことをいいなさんな、と釘をさすくらいのことはしても良いのではないか、と思います。

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ノーベル賞に経済学賞があることが、どうにも違和感を覚えてしょうがありません。

2010-10-12 21:43:15 | Weblog
 とりあえず仕事は山脈の最高峰に出て一息ついた、という感じのところまできました。後は尾根伝いにしばらく高低をやり過ごしながら、来週半ば頃にはなんとか下山することが叶いそうな、でもひょっとしたらそれは甘いかも? という位のところです。まあ予断は許しませんが、一山越えたことは間違いない事実ですので、今夜くらいはひとまずゆっくりと寝ることができそうです。

 さて、今年のノーベル賞が次々公表されています。化学賞の日本人受賞は素晴らしい!の一言に尽きますし、平和賞の見事さはもう激賞のあまり小躍りしたくなりながら、振り返って我が国の体たらくを見て意気消沈してしまったり、と忙しいものですが、経済学賞というやつだけは、いまだによく理解できないでいます。そもそも経済学とやらにノーベル賞が授与される価値があるのでしょうか? などと言い放ってしまうとまあ傲慢の極みだな、と自分でも思わないでもないのですが、いまだに私は、経済学が人類の進歩に本当に役に立っているのか、どうにも疑問が拭えないでいます。経済学の価値が理解出来ない社会学音痴な私ですので仕方ないところもあるのですが、翻って我が国にはたくさんの科学音痴がいらして、似非科学がはびこったりすることもママあったりするわけで、そういう方々からしたら、私が経済学に感じているのと同じような感覚で、化学や物理学を見ているのかもしれない、と思ったりもします。ただ、これらは、その内容が得体のしれない魔法のように感じられるとしても、無意味とか役に立たないとか思うヒトはまあ少ないだろうと想像されます。一方で私の経済学に対する感じ方は、そもそも無意味で役立たずなのではないか? ということであって、食わず嫌いのせいもあるのでしょうが、いまだにそれを払拭しうる、目から鱗が落ちるような、経済学の有用性を証明してくれる話を聞いたことがないのです。実際のところはどうなんでしょう? 天下のスウェーデン王立科学アカデミーがノーベル賞を授与するくらいなのですからきっとそれなりに意味がある学問なのだろう、とは思うのですが、その価値を理解できるような機会が、残りの生涯に私に巡ってくることが果たしてありうるんでしょうか?

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年をとると財布にも余裕ができる、と若い頃はなんとなく思っていたのですが・・・

2010-10-11 21:58:30 | Weblog
 今日は3連休の最終日、だったはずなのですが、初日の土曜日出勤してますし、今日も明日までに提出しなくちゃいけない書類を片付ける仕事があって、出勤しておりました。なんだか曜日の感覚も怪しげになってきているのですが、いずれこれらの分は代休で取り返せるはずなので、今は非常時と割りきっております。それにしても、金曜日にならないと詳細が決まらない中身の話の提出期限を火曜日に設定するだなんて、うちの職場もなかなか無茶なことをやってくれます。

 さて、そんな中ではありますが、とりあえず昨日は無事連載小説のアップすることができました。もうラストがはっきりと見えて来るところまでやってきましたが、一方で、某掲示板を使ってキャラ設定も着々と進行し、ぼちぼち年明けのコミトレに向けて、本の体裁を考えていくべき頃合いになってきた感があります。小説も結構行き当たりばったりで連載続けてきたおかげで流れがいまいちギクシャクしているように見えるところもありますので、話を一本にまとめながら、新しいキャラ設定にあわせて一部書き足したり話の順番考え直したりして流れを整えていかねばなりません。そんなこんなで11月を終えたら、いよいよ本格的に本作りに突入ですね。
 でもコミトレの応募もしておかねば。応募締め切りまであと1ヶ月強ありますが、油断していたらあっという間の時間しかないと考えておかないと、思わぬ痛い目をみそうです。思い立ったが吉日ですから、今すぐにでも申し込みしておけば何の心配もなくなるのですが、誠に残念なことに、このところ出費が嵩んで、少なくとも月末までは申し込み自体無理な財政状況なのです。ううむ、色々とやむを得ない状況とは言え、この歳になって4500円ぽっちが自由にならぬとは。一体私の財布はどうなっているんでしょうか?(苦笑)

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08 原日本人の秘宝 その2

2010-10-10 20:43:10 | 麗夢小説『夢の匣』
「何を怒る麗夢。たかが土人形共に虚仮にされたのは貴様も同じだろうが。感謝してもらっても良いくらいだぞ」
 ルシフェルが浮かべる人を小馬鹿にするような傲岸な笑みが、麗夢の怒りに火薬を放り込んだ。
「それとこれとは話が別よ! たとえ彼女らがヒトでなくても、あなたに生命を左右されるいわれはないわ!」
「だったらどうする?」
「こうするのよ!」
 麗夢は両手を突き出し、胸の前でまだ見ぬ刀剣の束を取った。
「はああああああああぁぁああっ!」
 同時に、自身を悩ます目眩を振り切り、裂帛の気合を込めて全身の気を奮い立たせる。たちまち凄まじいまでの夢のエネルギーが炸裂し、真っ白な光が、ミニスカート姿の服を内側から吹き飛ばした。まばゆい光がようやく薄れた頃、青白く輝く一振りの大剣を両手に握る、一人の戦士がその場に姿を現した。赤を基調とした肌もあらわなビキニアーマーに身を包む妖艶な戦乙女。ドリームハンター麗夢が、持てる力の全てを開放したのである。
「ニャーン!」
「わん!ワンワンワン!」
 それに呼応するかのように、アルファ、ベータが飛び降りてきた。麗夢の左右にピタリと着地すると同時に、これまた目を眩ませる燭光を放って、巨大な猫と狼に変身する。
「アルファ! ベータ!」
 力強い味方の参戦に、思わず麗夢の声に喜色が漲る。対するルシフェルは、大して驚きもせずひとりごちた。
「麗夢の使い魔共か。まあ、今更何が出てこようが大した違いはない」
「違いがないかどうか、その身で試してみたら!」
「「グワァヴッ!」」
 麗夢は一声叫ぶと、唸り声を上げるパートナー達と共に、脱兎の如くルシフェルに飛びかかった。一足飛びに間合いを詰めた麗夢の剣が、大上段から一挙に振り下ろされる。と同時に、俊敏な動きで不規則に交差しつつ飛びかかったアルファとベータが、ルシフェルの左右から突っ込んだ。逃げ道を塞ぐ瞬速の包囲攻撃に、さしものルシフェルも咄嗟には反応できないかに榊には見えた。だが……。
 麗夢の剣の切っ先が、キイイィイン! と鋭い金属音を木魂させて地面を断ち割った。アルファの爪とベータの牙も、捉えるべき相手を見失って虚しく空を切り裂く。
「どこを見ている、麗夢」
「えっ!」
 驚いて顔を上げた麗夢は、ありえない光景に一瞬自分の目を疑った。今さっきまでと全く変わらない姿、荒神谷皐月の小さな身体を踏みつけるルシフェルの姿が、10mも離れたところに、そのまま立っていたのである。
「はあっ!」
 麗夢は疑問をかなぐり捨てて、もう一度ルシフェルに突進した。アルファ、ベータもそれに続く。だが、三位一体の攻撃は、再びルシフェルを捉え損ね、そのふてぶてしい姿が、またも10m離れた先で憎たらしい笑みを浮かべて立っているのを見えるばかりであった。
 麗夢は、素早くアルファ、ベータと目を合わせた。二匹が軽く頷いて麗夢の考えに同意する。今度こそ絶対に逃しはしない! 麗夢は三度ルシフェル目がけて突進した。続けてアルファ、ベータが洞窟の壁に飛びつつ麗夢を追い抜き、ルシフェルをも飛び越えてその背後を厄する。絶対に後ろに逃がさないように、と瞬時に前後からの挟撃へ切り替えた麗夢、アルファ、ベータだったが、その刃の切っ先が届く瞬間、ルシフェルの姿がふっと消え、再びそれぞれの獲物が何も無い空を刈り取った。そして、きっと睨んだ10m先に全く変わらないその姿を見出した時、麗夢は不思議な光景に気がついて、あっと驚いた。ルシフェルの直ぐ目の前に倒れる円光の姿が目に入ったのである。
 さっき一回目に斬りかかった時、ルシフェルのすぐ近くに倒れていた円光を飛び越えたことは憶えている。2回目に攻撃した時は、衝撃のためか円光がどこに居るか確かめようともしなかった。そして今回。
 麗夢は唖然としてさっと後ろを振り返り、更に驚きを深くした。力を失い、跪く榊、鬼童の呆けたような唖然とした顔が、ほんの数メートル先に見える。今、ルシフェルめがけおよそ10mづつ3度も跳びかかったというのに……。
「し、縮地の幻術だ……」
「円光さん!」
「……惑わされてはならぬ……麗夢殿……」  
 苦しげに息をつきながら、変わらぬ位置で倒れ伏す円光が、呆然とする麗夢に呼びかけた。縮地? 幻術? しかし、ルシフェルの姿ははっきりと麗夢の視覚に移り、そして何よりも、その禍々しい瘴気が麗夢の超感覚に捉えられている。それはアルファ、ベータにしても同じであろう。その、夢を護る為に授かった超感覚さえ、今のルシフェルの前では通用しない、ということなのか。
「れ、麗夢さん! 特殊なフィールドが、ルシフェルを、覆っています。恐らく、あ、あの箱の力、です。死神を、目標にしては、いけません……」
 今度は鬼童が、這いつくばりながらも、榊の助力を得て自身の装置を動かし、麗夢に注意を促した。そうか、あの箱! そう言えば、初めて荒神谷皐月を追って南麻布学園初等部に誘い込まれた時も、どう頑張っても小学生の皐月に追いつくことが敵わなかった。あの箱が生み出す夢の場の力は、榊や鬼童、円光から力を奪い、麗夢やアルファ、ベータに、無視できぬ不快感と圧迫を与え続けている。だが、どうやらそれだけではないらしい。距離感を狂わせ、物理的な距離をないがしろにし、行けども行けどもけして捕まえることのできない蜃気楼のように、行使するものの姿を夢幻に隠し続けるようだ。鬼童が元気なら、これを夢のフィールド制御による3次元空間への干渉、とでも呼んだかもしれない。麗夢はようやくその実相に気づいたが、ではそれをどう破り、ルシフェルに一太刀浴びせるか、その攻略方法が見つからない。
「どうした? もう終わりか?」
 ルシフェルが、変わらぬ格好で、余裕の笑みをたたえつつ麗夢に言った。
 麗夢は怒りに歯ぎしりしかけて、ふとあることに気づいた。
 そう言えば、何故ルシフェルは、あの強大な力を攻撃に使わないのだろう……。
 麗夢の感覚では、あの力で襲われたら、今の自分で果たして受けきれるかどうか判らない。いや、正直に言えば、あの力を駆使して襲われたら、とても勝ち目がありそうには思えないのだ。先手必勝で先制攻撃を仕掛けはしたが、かなり贔屓目に見て、防戦に徹するならなんとか持ちこたえられるかも? 位の力の差があるように、麗夢には思える。まあどうなるにせよ、かなり苦しい戦いを強いられるのは間違いない。そんな力を発揮する箱をルシフェルが手にして操っている今のルシフェルなら、麗夢やアルファ、ベータ、円光をまとめて屠ることができるはずだし、そうやって邪魔者を一層したところでやりたい事をやった方が、ことはスムーズに進むはずではないか。それなのに、ルシフェルは何故嵩に懸かって攻めて来ようとしないのか?
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ロックミュージシャンも偉大な先人達と同列に語られる存在になったのですね。

2010-10-09 22:19:41 | Weblog
 今日は業務カレンダーでは休みのはずなのですが、そうは言ってられない事情があり、朝からいつもどおり出勤して、一日仕事に精を出しました。おかげで一応のめどは立ったので、明日と明後日は特に呼び出しでもない限りは休みが取れるはずです。まあ、週明けにはまた忙しい日々が始まるわけですが。

 さて、チリの落盤事故、救出用竪穴が早くも坑道に届いたそうですね。以前は11月になる、という話を聞いておりましたから、1ヶ月早い貫通には驚きと共に大きな喜びを覚えました。これから補強工事を経て救出作業に入るそうですが、ここまで頑張ったのですから、是非無事に全員地上に帰還してもらいたいものです。
 
 ところで今日はジョン=レノンの生誕70年の記念日なのだそうですね。存命なら70のおじいちゃんの誕生日、というところが、こうして記念日として取り上げられるなんて、まさにその劇的な生涯を物語っているようです。
 それにしても、一人のロックンローラーが古えの芸術家達と同じように取り上げられるのを見ていますと、ついにロックミュージックも一つの文化として万人に認められる存在になったのか、と感慨深いものがあります。実際のところ、ビートルズもジョン=レノンも、私のもうヒト世代上の方々の音楽というのが正しく、私自身は実はあんまり知らないのですが、それでも例えばカラオケで選べる歌が幾つかあったりしますし、今改めて聞いてみても、すんなり耳に入って来る親和性の高さを感じます。それに今の音楽も彼らの音楽の血を引いているところがあるでしょうし、何かで読んだ記憶がありますが、彼らの音楽からして、遠くクラシックから連綿と伝わる音楽の系譜に連なるところがあるそうです。ロックがクラシック音楽ほどの寿命を保ちうるかどうかはずっと未来にならないと判りませんが、少なくともその存在は、しっかりと人類の音楽の歴史に1ページ分刻みつけられているに違いありません。
 明日も雨だそうですし、たまにはジョン=レノンでも聞きながら、連載小説の続きを書いてみるといたしますか。

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今日は京都・下鴨神社にお参りしました。

2010-10-08 22:00:25 | Weblog
 右手小指の痛み、今朝になってようやくマシになってきました。まだ軽い痛みというか、違和感が残るのですが、少なくともキーボードを打つときに気を使う必要はもうなさそうです。

 さて、今日は仕事で京都まで行ってきました。下鴨神社の近くのとある事務所に用事があって出かけたのですが、少し時間があったので、折角きたのだから、と下鴨神社にお参りしました。広大な浄域を森が覆い、その中に小川が流れ、ちょっとした自然公園の趣きのある中にお社や生垣で囲んだ大木の株があったりして、その雰囲気はまさに京都!を実感させるものがあります。御祭神は大穴牟遅尊で、我が奈良県最古の神社三輪山と同じ。神気に触れて仕事も上手く行けばいいな、と思いつつ、時間が来たので目的の場所に向かいました。
 仕事の後は、これも折角京都まで出て来たので、バスに乗って北野天満宮へ移動です。京都市内は、場所にもよるのでしょうが、大阪や東京の環状線や地下鉄並に大量のバスが走っているので、移動にはすこぶる便利に出来ています。チト時間がかかるのが難ではありますが、その手の公共交通機関に恵まれない隣県の住民としては、羨ましいインフラだと思います。
 さて、天満宮に行ったのは参詣が目的ではなく、その鳥居の前、道を挟んだ向かいにある、『粟餅』を売るお店へ寄るのが目的です。
ところが!
…………既に売り切れていました。
 うーん、前回は木曜定休を知らずに行って空振りし、今回は折角行けたのに既に売り切れとは。
 全くもって残念です。
 来週、また京都に出向く用事があるのですが、果たして3度目の正直、を試すだけの時間的余裕があるかどうか。でもそんなことより、今日の用事と来週の用事のおかげで、今回の3連休がいくらか仕事に消えてしまいそうなことの方が、当面は大きな問題かも。
 この間で大きな山は越えた、と思っていたのですが、今は、峠を越えた途端、その行く手に巨大な岩峰が聳えているのを発見した、という気分です。


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遺伝子組み換えを巡る2つのニュースを拾いました。

2010-10-07 22:46:05 | Weblog
 なんだか先々日から右手小指の先が妙に痛くて悩ましい限りです。痛みの状況からみると、引き戸の類で挟んだか誤って金槌で打ってしまったか、要するに爪の上から強い圧迫を加えたかのような痛みが続いているのですが、ではそんな事故があったかというと全く記憶になく、一昨日突然、気がついたら指が痛くなっていた、という不思議な状況です。ひょっとしてひょっとしたら、実は何かやって指に打撃を与えたのにすっかりそれが記憶から飛んでいたりするのではないか、と疑っているのですが、いくらなんでもこれほど長引く痛みを与えるような衝撃で、記憶が全くない、というのもありえなさそうな話とも思います。
 いずれにしても原因を探りようもないので一刻も早く痛みが引いてくれるのを願っているのですが、なんとなく、しばらく続きそうな予感も致します。

 さて、海外のニュースを渉猟していましたら、遺伝子組み換え関連で二つの記事が引っかかりました。一つは、アメリカの食品医薬品局(FDA)が、遺伝子組み換えサケの安全性問題などの検討をしているとのニュースです。アクアバウンティ・テクノロジーズ社という会社が開発したサケで、その名も「アクアアドバンテージ」。なんでも、太平洋産のキングサーモンの成長遺伝子を導入して、生長期間を半分に短縮したサケなのだそうです。もちろん人間の食用に作られたわけですが、もし認可された場合、初の遺伝子組み替え食用動物になるのだそうです。
 植物では、既に大豆やトウモロコシなど遺伝子組み換え作物が利用されていますが、動物ではまだ食用で遺伝子組み換えは実用化されていなかったのですね。私は遺伝子組み換えに不安はありませんし、多分この検査も特に問題なく認可されることになるんじゃないか、と楽観的に予測しているのですが、世の中には遺伝子組換えなどまかりならん!という考えもあること位は知っています。でも、海外だとなかなか過激な行動に出るものらしく、もうひとつのニュースは、ちょっと古くて8月の話ですが、フランス農学研究所を、遺伝子組み換え作物に反対する活動家グループが襲撃、100万ユーロに上る大損害を与えたのだそうです。「自発的な収穫者たち」というグループ約70人が、70本のブドウの木を抜いてバラバラに切り刻んだのだそうで、警察は約60人を拘束したとのことです。デモくらいならまあありうるとは思うのですが、市民団体が政府機関に殴り込みをかけ、暴力を振るうというのは、さすがに我が国ではなかなか考えられないのではないでしょうか?
 それにしても、なんでこんなに遺伝子組換えを目の敵にするのでしょう? 宗教的な譲れない一線でもあるんでしょうか?

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毒キノコが普通にお店や食卓に並びかねない時代なのでしょうか。

2010-10-06 22:02:43 | Weblog
 「はやぶさ」のカプセル内にどうやら地球外のものと思われる超微粒子が存在していた、というニュースとか、ノーベル化学賞を日本人研究者二人が受賞したとか、うれしいニュースが連日続いていますが、一方で毒キノコが堂々店先に並んで、購入してしまったお客が出た、というニュースの方にも、無視できない興味を覚えます。近所のスーパーでも、地元の農家の方の直売コーナーが設けられ、更に売り場面積が拡充されたり、国道沿いの直売所が賑わっていたりしておりますが、東京と長野のニュースも、そういうところに持ち込まれたキノコで、食用にそっくりな危険な奴が混じっていたのだそうです。買う側からしたら、日頃よく行くスーパーに並ぶ商品については、その店を信用して買うわけで、そこに毒物が並んでいる、というような認識はまずしないと思われます。買って帰ったヒトが食べる前に気づくことを祈るばかりです。
 それにしても、毒キノコ、というと、素人が山でキノコ狩りして誤って採ったり食べたりして起こるもの、という認識をしておりましたが、こうしてお店に並ぶとは実に珍しい出来事なのではないでしょうか。ためしにググッてみても、この2件の話題ばかりで、過去店売りのキノコに毒キノコが混じっていた、とか言うような話は1件しか見つかりませんでした。まあキーワードの選択が悪かったからかもしれないのでこれをもって過去ほとんど販売事故は無かった、と結論づけるのは尚早という気も致しますが、これだけ全国で直売所や直売コーナーが立ち、秋には様々なキノコが持ち込まれているというのにあまり事故らしい事故を聞かないところをみると、やっぱり珍しい出来事なのではなかろうか、と思うのです。
 このところ涼しくなって秋らしくなってきたせいか、うちの職場の近辺にも、名も知らぬ怪しげなキノコがそこかしこに生えているのが見られます。多分大抵は毒に相違あるまい、と思うのでもちろん手出しはしませんが、こう言うのをちゃんと鑑定できる知識が持てたらいいのにな、といつも思ってしまいます。他にも、食べられる野草と危険な毒草とか、触っても大丈夫な毛虫と、触ると死ぬほど痛い毛虫の見分け方とか、できたらいいな、と思うスキルは色々あるのですが、山中で仕事していてもあんまり外にでない日常では、簡単には経験値は向上しそうにありませんね。

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最近、車に乗っていてブレーキが利かない、という夢を頻繁に見ています。

2010-10-05 21:34:42 | Weblog
 今日はすんなり秋晴れの天気になるのか、と思っていましたら、以外や以外、いきなり雨は降ってくるわ、ほとんど日が差さないわで寒々しい一日になりました。 この間の晴れの日に干した毛布も、これまで使う機会がなかったのですが、昨夜から今朝にかけてとうとう引き出して使わないと寒くて寝られない有様でした。まさかこのまま冬に直行、ということもないとは思うのですが、一体穏やかな秋晴れは、いつになったら拝めるのでしょうね。

 さて、最近立て続けに見ている夢があります。
 それは、車の夢。
 自家用車を運転しているのですが、なぜか下り坂で停止しているときにブレーキが効かず、大慌てで何度もブレーキを踏み直したり、ギアをローやバックに入れたり、サイドブレーキを引いたり、というバタバタを演じているのに、車がゆっくりずり下がっていく、という悪夢です。あの、言うことをきかない浮遊感というか、ぬるっとしたような車の動きがいかにも悪夢という感じで、怖気を誘ってくれます。ブレーキが利かない夢は、気力や体力の消耗していたり、過激な方向へ突っ走りたい気持ちと、それを抑制しようとする理性との戦いが脳内で演じられているのだそうですが、車で下り坂を行くのもエネルギーの低下を意味するそうですし、多分気力体力の消耗の方だと思われます。このところは大分体力的には持ち直してきているようなのですが、まだ朝の目覚めは快調とは言いがたく、最近よく真夜中にトイレに行きたくなって目がさめるので、今朝もきっとまだ3時頃だろうと思って起きてみたら既に起床時間の6時だったという体たらくで、3時に目が覚めて用を足した後、二度寝するのをある意味楽しみにしていた私としては、これでもう起きないといけないのか、と気力が萎える気がいたしました。そんなワケですから、まだもう少し体力回復には時間がかかりそうです。
 それとは別に、最近ネットで見る動画で、車載カメラによる事故や事故未遂映像てのをよく見かけるようになりました。1分とか長くて2分程度の短い動画なのですが、順調に走っている車に突然ふりかかる悪夢、という具合で、いつもドキドキしながら再生ボタンをクリックしております。自分も長いこと車やバイクに乗っているので、事故ったりニアミスしたりすることはそれなりに経験しているのですが、それでも年何度もあることではありません。でも、こんな動画ばかり見ていますと、世の中にはもっととんでもない事態が起こっていて、いつかは自分もこういう事態に巻き込まれる日が来るのかもしれない、と人知れずビビってしまったりしています。ブレーキが利かない夢、というのも、体力低下もあるのでしょうが、案外こういう小心な自分が夢に反映しているだけなのかもしれません。


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我が国では未曾有のデモ行進が報道されない不思議。

2010-10-04 20:30:56 | Weblog
 連載小説もようやくここまできたか、という感じがいたします。今回の敵役である新あっぱれ4人組(旧あっぱれシスターズ)の正体については、設定最初期の段階では考えておりませんでした。ただ、私は原作重視の立場から、自分の同人小説で、勝手に新たなレギュラー、もしくは複数回にまたがって登場しかねないような準レギュラーはなるべく作らず、新キャラは一回使いきりを心がけていたため、ここで彼女らを敵役に定めた以上、どうしても消えてもらう必要がありました。と言って小学生を死なせるのはさすがに心苦しい。というわけで、色々考えた末、このような設定にした次第です。ただ、まだラストまでは一捻りするつもりでおりますので、今正体がバレたからと言って話がすんなり終わるわけではありません。なにはともあれ、いよいよ最終決戦の時。秋のうちに全てのケリをつけるつもりです。

 さて、ネットで見て始めて知ったのですが、東京で大規模なデモがあったそうですね。尖閣諸島での問題に対する内閣の対応ぶりに業を煮やした市民が、東京・渋谷に集結し、およそ2時間にわたって行進、怒りのシュプレヒコールをあげて、中国や内閣を批判したそうです。その数約2600人。ロイターやCNNなどの著名海外メディアでも取り上げられ、世界的な反響が広がったそうなのですが、なぜか日本の報道機関は全く報じていなかったというのが、まことにもって奇妙奇天烈な感じを覚えました。
 渋谷といえば天下の公共放送のお膝元。ネットニュースによるとその直下も練り歩いたそうですから、少なくとも我が国を代表する報道機関は眼下にその光景を見ていたと思われます。それで何の反応も示さないというのも奇異な話で、これは一体どうしたことなのか、私にはワケが分かりません。単にあまりに突然の動きで対応が間に合わなかったのか、あるいは何か意図するところがあって無視することに決めたのか。外交判断まで下す地方検察といい、例の衝突ビデオの公開を渋る政府といい、妙に反応の鈍いマスコミといい、今、我が国の中枢は全くのまひ状態なのか、はたまた怪しげでけしからぬ思惑が渦巻く魔の都と化してしまったのか。田舎でネットの情報を渉猟しているだけでは見えない何かが、今の都会にはあるようです。

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08 原日本人の秘宝 その1

2010-10-03 16:09:00 | 麗夢小説『夢の匣』
 にわかに切迫した麗夢の焦りに、冷水を浴びせかける声が洞窟に響き渡った。
「遅かったな麗夢!」
 思わず振り返った四人は、地面に横たわる三人の傍らにいつの間にか佇立する、漆黒の姿を捉えた。闇を体現するマントが翻り、その腕に抱き抱えられた、小さな身体が垣間見えた。
「その子を、荒神谷皐月さんを放しなさい!」
 真っ先に麗夢が飛び出して、脇のホルスターから拳銃を抜くと、宿敵、ルシフェルの眉間に狙いをつけた。榊、円光、鬼童も、それぞれの獲物を取り直し、麗夢の背後に駆けつける。だが、死神は沸騰する四人の戦意など歯牙にもかけない様子で、抱えていた皐月の身体を、無造作に三人の仲間の上に放り投げた。
 うぅっとうめき声がして、気を失っていた四人が息を吹き返すと、ルシフェルはうつ伏せで三人の上に乗る皐月の背中を右足で踏みつけた。皐月の顔が苦しげに歪み、下敷きになった三人のうめき声が、小さな悲鳴に変化した。
「ふふふ、これでいいかな? 麗夢」
「おのれ死神!」
 激怒した円光が、灼熱の気を錫杖に込め、ルシフェル目がけて打ちかかった。まるで時間を切り取ったかのように、一瞬で肉薄する円光がルシフェルに錫杖を突きつける。だがルシフェルは、全く避ける素振りも見せずに余裕の笑みを浮かべていた。円光のあまりの速さに反応する時間すら得られなかったのか、と、榊がルシフェルの敗北を幻視したのも無理はない。だが、両者が瞬きする間もなく交錯した瞬間、息を切らし、その場に突っ伏したのは、攻撃された側ではなく、今まさに必殺の攻撃を繰り出した方であった。その脇に、力なく錫杖が転がり落ち、哀しみを奏でるように輪環の打ち合う音が洞窟にこだまする。円光は、腕に残る耐え難い衝撃に顔をしかめつつ、ルシフェルに言った。
「な、何をした……」
「馬鹿め。もはや貴様の力が、ほんの僅かでもわしに届くことはない」
 円光の一撃は新型戦車の複合装甲すら貫くほどの力がある。だが、愛用する錫杖の突端がルシフェルに届いたと感じた瞬間、円光は、漲る自分の力が風船がしぼむかのように唐突に消え失せたことに愕然となった。まるで、自分の体がずっと幼い子供のように、そう、さっきまでの悪夢の中で演じていた小学生ほどの力しかなくなったように、感じたのである。円光の鍛え上げた錫杖は、見かけよりもはるかに重く、頑丈である。小学生の握力や腕力では、持ち上げることすら敵わない。円光は、たちまち衝撃と重量に耐えかねて錫杖を取り落とし、自身はルシフェルの負の圧力に屈して、その場に伏せたのだった。
「円光さん!」
 麗夢が叫ぶと同時に、榊も拳銃の狙いをルシフェルに向けた。だが、信じられないことに、その拳銃が榊の手から滑り落ちた。
「榊警部!」
 足元に転がる拳銃に鬼童が驚いた途端、今度は鬼童の抱える巨大なラッパのような装置が、ガシャン、と耳障りな不協和音とともに地面に転がった。榊と鬼童は自身を襲う異常な感覚に愕然となった。円光を襲ったこの感覚。自分の力が、まるで子供のように小さく弱々しいものに変化してしまったことに、二人は戸惑いを隠せなかった。
「警部、鬼童さんも、どうしたの!」
 力を失い片膝ついた榊と鬼童に麗夢が慌てて振り返った。途端に、麗夢も頭のすぐ横で大鐘を鳴らされたかのような違和感を覚えた。もの凄い力の心的圧力が直接脳を揺さぶり、心を握りつぶしに掛かっているかのようだ。麗夢は強烈な目眩を覚え、思わず目をつぶってその場に跪いた。あの、初めて荒神谷皐月以下4人の小学生に翻弄され、『南麻布学園初等部』に誘い込まれた時と同じ、妙な夢の波動を感じる。だが、そのパワーは格段に強い。
「ふふふ、これくらいで意識を飛ばすのではないぞ麗夢。今から面白いものを見せてやるのだからな」
「なんですって……?」
 麗夢は、顔をしかめながらなんとか目を開けてルシフェルを見た。ルシフェルは、4人の小学生を踏みつけながら、懐から小さな箱を取り出してみせた。
「そ、それは!」
 今はルシフェルの足元に踏みつけられる少女に何度も見せつけられ、麗夢を翻弄したあの錦の小箱。玉手箱、と言われたその箱を、今はルシフェルが持っていた。
「……か、返して……」
 ルシフェルの足元で、息を吹き返した皐月が、震える手を伸ばした。ルシフェルはわずかに嘲笑を浮かべると、ぐい、と一段と踏みつける力を加えた。4人の悲鳴が更に上がり、下側の3人が次々と力尽きて再び気を失う。それでも皐月だけは必死に耐え、なおもルシフェルに届かぬ腕を伸ばそうとした。
「所詮貴様らには過ぎた道具なのだ。わしが存分に使ってやるから、安堵して元の姿に戻るがいい」
 元の姿? 麗夢が疑問を感じた瞬間、皐月の顔色が驚愕に一変した。
「だ、ダメ! 止めて!」
「いい音色だ。人間でないのが惜しいくらいにな」
 ルシフェルは、皐月の悲鳴と懇願を気持よさそうに聞き流し、箱の上蓋を開けた。
 途端に、辺りを圧する夢の気配から、「何か」が急速に薄くなった。鬼童の計測機器が正常なら、その変化を測定できたかもしれない。それは、いうなれば夢の波動のごく一部を減衰させ、消去したようなものだったからだ。そしてそれは、荒神谷皐月達4人を現世に支える、最も重要なエネルギーでもあった。
「……な、なんと……」
 最も近くにいた円光が、思わず目を瞬いて眼前に生じた変化に驚愕のつぶやきを漏らした。少し離れた麗夢、榊、鬼童も、信じがたいものを目の当たりにして、上げるべき声を失った。
 それは、皐月を除く、3人の、元少年・少女の姿だった。煉瓦色の、粘土を焼いて固めた小さな姿。一般に、埴輪と呼ばれる土製の人形が三体、皐月の体の下に並んで転がっていたのである。
「あの子達、4人組の妹じゃなかったの……?」
 麗夢のつぶやきに、「弟だ!」と言い返す声ももう聞こえない。榊も、自身取っ組み合いをしてギリギリのところで組み伏せた狼の本体が、ただの土人形と知って半ば呆然となった。
「……どういうことだ……。鬼童君、あれは一体……」
「……多分、あの玉手箱の呪的能力なのでしょう。かつてのあっぱれ4人組が一つずつ所持していた物だったりするのではないでしょうか」
「じゃあ、皐月ちゃんも?」
 麗夢の質問に鬼童が答えるより早く、ルシフェルの哄笑が地下洞窟にこだました。
「その通りだ! 原日本人が遺した最大の秘宝、夢匣の放つ強力な夢の波動が生み出した、夢幻と現実との狭間。その狭間に仮りそめの生を受け、小癪にもうろつき回ったのが此奴等というわけだ。だが、この箱をわしが持つ限り、もはやその茶番も終わりだ」
「お願い! 返して!」
 皐月は、更に抗ってルシフェルの手からその小箱を取り戻そうともがいた。
「馬鹿め。これはもともと夢守が操ってこそ最大の力を発揮する。貴様ごとき人形に、使いこなせるものではないわ!」
 ルシフェルが更に足に力を込めた。皐月は手足を踏ん張ってその圧力を支え、自分の体の下にある3体の埴輪を守ろうと頑張った。だが、その力の差はあまりに大きかった。皐月の力の限界付近でわざと手加減し、いたぶり苛んでその苦痛を楽しんでいたルシフェルは、もう飽きた、とばかりに思い切り体重をかけて皐月の背中を踏みつけた。それでも限界を超えて皐月は耐えたが、もう一度ルシフェルが力を込め直すと、それに抗う力はその細い四肢には残っていなかった。皐月の胸の下で、バリバリと薄い陶器が割れ砕ける音が鳴り、あえなく皐月は地面に這い付くばった。皐月の目に涙が溢れ、ポロポロと地面にこぼれ落ちた。ルシフェルは満足気にその姿を見下ろすと、追い打ちをかけるように皐月に言った。
「フフフ、貴様には散々虚仮にされたからな、仲間と同じように土に返す前に、これから行うわしの偉業に充分絶望を堪能する時間をやろう。ありがたく受け取るがいい!」
「ルシフェル!」
 眦を決した麗夢が、目眩に抗いながらすっくと立ち上がった。
「もう怒ったわ! 絶対に許さない!」
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室町時代のお寿司、どうみても泥団子に見えてしまうのは仕方ないですね。

2010-10-02 22:29:40 | Weblog
 先週は何かと忙しかった週末ですが、今週は全ての時間を自由にできる、文字通りの休日を過ごしました。疲労が蓄積していたのか、朝9時半まで寝て、明日から雨、という話だったので布団を干し、ついでにそろそろ出しておこうと思っていた毛布をとりあえず1枚引っ張り出してきて、一緒に干しておきました。部屋に軽く掃除機をかけ、色々雑事をこなしているうちに日も傾いて、後は滞っていた小説を書いて、今、夜10時半になって、眠くてたまらない、という状況になっています。疲れをとるには眠るのが一番だとつくづく感じます。明日は朝から雨が降らなければ町内会の掃除に参加しなければなりませんが、雨が降り出すかどうかは今のところ微妙です。もし降ったら小説の続きを書いて、雨の音でも聞きながら、本の1冊でも読んでみることに致しましょう。

 さて、鳥取県の大山寺というお寺の発掘現場から、室町時代の押し寿司の遺跡(化石?)が出土して話題になっているそうです。これが押し寿司と確認されれば、国内最古の寿司の遺物ということで、食物文化史上の貴重な発見になるのだとか。押し寿司の歴史は、文献的には平安時代まで遡ることができるそうですが、ごはんが千年近くも分解せずに残ることはまずありえず、今回のものも、寿司がそのまま土にうもれて残ったのではなく、火事か何かで焼けて炭になったために残ったものなのだそうです。
 そのニュースには遺物の写真が載っていたのですが、どうも写真で見ている限り、子供がママゴトの時に土や泥で作った料理のようなものに見えて、とても寿司というイメージではありません。実際に身近に触れて観察すればひょっとしたら寿司という印象を強く持てるかもしれないのですが、鳥取県ではそうそう簡単に観に行くわけにもいきませんし、博物館かどこかで後悔でもされない限り、行って見せてもらえるとも限りませんから、今は調査・研究の進展を静かに待つよりなさそうです。多分私がいだいている押し寿司のイメージとは随分違い、何百年も昔なら、米だって品種も違えば炊き方なども違うんじゃないかと想像されますから、ご飯自体も随分異なったものではないかと思われますし、近くで見ても、やっぱり寿司には見えないかもしれませんね。
 でも、こうして曲がりなりにもむかしむかしの食べ物がどんなものか、知る機会がある、というのも楽しい話です。個人的にも、今連載している小説の次は、出来れば平安時代を取り上げたいと思っておりますし、そのような昔の情報が新たに出てきてくれるのは大歓迎なのです。

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