波打つような屋根の造形、深い藍色のガラスウォールが印象的な九州国立博物館。
周囲の木々が壁面のガラスに映り込んで、自然との一体感が感じられます。
160m×80mとサッカーグランドがらくらく一面すっぽり入る大きさで、屋根は高い部分で36mあるそうです。

この日の展示は「三国志」…………魏・蜀・呉が激しく覇を競った騒乱の時代。
およそ1800年前、数々の英雄たちが躍動した歴史を垣間見ることができる、パンフレットのキャッチコピーどおりリアル三国志の展覧会です。

三国志展は昨年10月1日から始まっていたのですが、ようやく出かけたのは12月22日。
この日は年内最終日で、しかも日曜日とあって、オープン前から行列ができていました。

3F特別展示室に入ってまず目に入るのは、精悍で威厳に満ちた表情で周囲を威圧する関羽像。

劉備と曹操の戦いで、単騎戦場を駆け抜け劉備の子、阿斗を救い出す趙雲。趙雲の懐に抱かれている、あどけない表情の幼子が阿斗。

特別展示「三国志」は、プロローグ「伝説のなかの三国志」、第1章「曹操・劉備・孫権~英傑たちのルーツ」、第2章「漢王朝の光と影」、第3章「魏・蜀・呉~三国の鼎立」、第4章「三国歴訪」、第5章「曹操高陵と三国大墓」、エピローグ「三国の終焉~天下は誰の手に」という7部構成となっていました。

後漢の衰退を招き、三国志の時代を迎えるきっかけとなった黄巾の乱。
後漢末期に専横の限りを尽くした董卓。正史三国志の著者である陳寿に「歴史上の人物でこれほどの悪人はいない」とまで酷評された武将です。
展示物のみならず、さまざまな歴史解説が加えられているのも本展示の特徴のひとつでした。

張将軍という有力者の墓に副葬された儀仗俑(ぎじょうよう)。張将軍は、董卓の配下の武将であった可能性が指摘されていました。

同じく張将軍の墓から出土した酒樽。皇帝の御用品並みに豪華なもので、一級文物(日本で言う国宝)に指定されています。
お墓に酒樽を埋葬するなんて、よほどの酒好きなんでしょうか。そう言えば、三国志の英雄たちは、酒の面でも豪傑ぶりを発揮する逸話が多いですね(笑)

左は網代文陶棺(土製の棺桶)。右は柱上部の丸い部分に鏡を置く鏡台。【一級文物】

青銅と木を組み合わせた弓矢の発射装置、弩。【一級文物】
弩や弓といった飛び道具は三国志の時代の主力兵器のひとつでした。

三国志演義「赤壁の前哨戦」では、諸葛亮孔明が幕と草の束を張った20隻の船を囮にして曹操軍に無数の矢を放たせ、大量の弓矢を調達した話が伝えられています。横山光輝の漫画三国志で見たこのシーンは、今もうっすらと覚えています。

約1000本の矢を使って、その様子をイメージした飾りつけが行われていました。

石碑の一部。

河南省安陽市から出土した、副葬品目を記録した石の札。一番右の石札に刻まれた「魏の武王(曹操)愛用の虎をも倒す大戟」との銘文が、この墓こそ曹操高陵であることを決定づけました。曹操高陵は1800年の時を越えて、三国志の時代と現代を繋ぐトンネルのようです。【一級文物】

こちらが実際の曹操高陵の写真。現地は立ち入り禁止だそうですが、特別展示室の中にその様子が実物大で再現されていました。

曹操高陵から出土した白磁。6世紀後半の隋の時代に誕生したと考えられていた白磁が曹操の墓(3世紀)から出土したことは、学術的に大きな発見と言われています。【一級文物】

龍や鳳凰、鬼面や仏像などが描かれた盤口壺(左)と、墳墓内部での礼拝用に製作されたと推測される仏座像(右)。【一級文物】

大半は蜀の支配地域の墓から出土する揺銭樹。四方向に伸びる板状の枝葉には、不老不死の西王母、鹿に乗る仙人、400を越す銅銭が飾られており、なんらかの信仰上のものと考えられています。【一級文物】

1982年から84年にかけて放映されたNHKの「人形劇 三国志」に登場した人形も展示されていました。
劉備玄徳と諸葛亮孔明。これらの人形を製作した川本喜八郎氏は2010年8月23日に逝去されましたが、この日は奇しくも、諸葛亮孔明の命日でもあるそうです。

こちらは、魏の曹操と嫡子 曹丕。人形劇には、ストーリーテラーとして島田紳助・竜介が出演していたことも、今は懐かしい思い出です。

敵対していた蜀軍と戦い、七度捕らえられ七度放され、孔明に心服した孟獲。

横山光輝の長編漫画、三国志(1972年~87年連載)の原画。『桃園の誓い』

『曹操の死』

曹操高陵の出土品は海外初出展だそうです(日本では東京に次いで二番目)。写真撮影OKだったのでたくさん撮ってきましたが、とても全部は載せられません。「地球の歩き方」福岡特派員ブログ『リアル三国志の世界へ~九州国立博物館特別展示「三国志」』にも投稿していますので、興味のある方は併せてご覧ください。
三国志展を観た後は「第7回みゅーじあむ寄席 年忘れ落語会」を聴くため、1階ミュージアムホールへ。
春風亭一之輔さんと三遊亭天どんさんの二人会でしたが、橘亭門朗さん(前座)と遠峰あこさんも出演し、たっぷり2時間楽しめました。

九博の次の展覧会、「フランス絵画の精華~ルネ・ユイグのまなざし」のパンフレットを貰ってきました。
ルネ・ユイグはフランスを代表する美術史家で、31歳の若さでルーヴル美術館絵画部長に抜擢され、2次大戦中、ナチスドイツの略奪からルーヴルの貴重な絵画コレクションを守った人物だそうです。

今回の特別展「三国志」は、中国で発見・発掘された実際の出土品を展示するもので、言わばリアル三国志。この展覧会を通じて、私たちが親しんだ三国志と言う英雄たちの歴史物語が、1800年という時の流れを越えてぐっと身近に感じられました。(既に終了した展覧会の紹介ですみません)
九博の次期展示「フランス絵画の精華(2月4日~3月29日)」は、時代は17世紀から19世紀半ばまでということで、印象派が含まれないのが残念ですが、フランスのみならずイギリスやドイツ、日本からもフランス絵画の傑作が集結するということですので、是非こちらも観に行きたいと思います。ルーヴルやオルセー美術館で私たちが観た絵も含まれるでしょうから、それらとの再会も楽しみです。
《お知らせ》
周囲の木々が壁面のガラスに映り込んで、自然との一体感が感じられます。
160m×80mとサッカーグランドがらくらく一面すっぽり入る大きさで、屋根は高い部分で36mあるそうです。

この日の展示は「三国志」…………魏・蜀・呉が激しく覇を競った騒乱の時代。
およそ1800年前、数々の英雄たちが躍動した歴史を垣間見ることができる、パンフレットのキャッチコピーどおりリアル三国志の展覧会です。

三国志展は昨年10月1日から始まっていたのですが、ようやく出かけたのは12月22日。
この日は年内最終日で、しかも日曜日とあって、オープン前から行列ができていました。

3F特別展示室に入ってまず目に入るのは、精悍で威厳に満ちた表情で周囲を威圧する関羽像。

劉備と曹操の戦いで、単騎戦場を駆け抜け劉備の子、阿斗を救い出す趙雲。趙雲の懐に抱かれている、あどけない表情の幼子が阿斗。

特別展示「三国志」は、プロローグ「伝説のなかの三国志」、第1章「曹操・劉備・孫権~英傑たちのルーツ」、第2章「漢王朝の光と影」、第3章「魏・蜀・呉~三国の鼎立」、第4章「三国歴訪」、第5章「曹操高陵と三国大墓」、エピローグ「三国の終焉~天下は誰の手に」という7部構成となっていました。

後漢の衰退を招き、三国志の時代を迎えるきっかけとなった黄巾の乱。
後漢末期に専横の限りを尽くした董卓。正史三国志の著者である陳寿に「歴史上の人物でこれほどの悪人はいない」とまで酷評された武将です。
展示物のみならず、さまざまな歴史解説が加えられているのも本展示の特徴のひとつでした。

張将軍という有力者の墓に副葬された儀仗俑(ぎじょうよう)。張将軍は、董卓の配下の武将であった可能性が指摘されていました。

同じく張将軍の墓から出土した酒樽。皇帝の御用品並みに豪華なもので、一級文物(日本で言う国宝)に指定されています。
お墓に酒樽を埋葬するなんて、よほどの酒好きなんでしょうか。そう言えば、三国志の英雄たちは、酒の面でも豪傑ぶりを発揮する逸話が多いですね(笑)

左は網代文陶棺(土製の棺桶)。右は柱上部の丸い部分に鏡を置く鏡台。【一級文物】

青銅と木を組み合わせた弓矢の発射装置、弩。【一級文物】
弩や弓といった飛び道具は三国志の時代の主力兵器のひとつでした。

三国志演義「赤壁の前哨戦」では、諸葛亮孔明が幕と草の束を張った20隻の船を囮にして曹操軍に無数の矢を放たせ、大量の弓矢を調達した話が伝えられています。横山光輝の漫画三国志で見たこのシーンは、今もうっすらと覚えています。

約1000本の矢を使って、その様子をイメージした飾りつけが行われていました。

石碑の一部。

河南省安陽市から出土した、副葬品目を記録した石の札。一番右の石札に刻まれた「魏の武王(曹操)愛用の虎をも倒す大戟」との銘文が、この墓こそ曹操高陵であることを決定づけました。曹操高陵は1800年の時を越えて、三国志の時代と現代を繋ぐトンネルのようです。【一級文物】

こちらが実際の曹操高陵の写真。現地は立ち入り禁止だそうですが、特別展示室の中にその様子が実物大で再現されていました。

曹操高陵から出土した白磁。6世紀後半の隋の時代に誕生したと考えられていた白磁が曹操の墓(3世紀)から出土したことは、学術的に大きな発見と言われています。【一級文物】

龍や鳳凰、鬼面や仏像などが描かれた盤口壺(左)と、墳墓内部での礼拝用に製作されたと推測される仏座像(右)。【一級文物】

大半は蜀の支配地域の墓から出土する揺銭樹。四方向に伸びる板状の枝葉には、不老不死の西王母、鹿に乗る仙人、400を越す銅銭が飾られており、なんらかの信仰上のものと考えられています。【一級文物】

1982年から84年にかけて放映されたNHKの「人形劇 三国志」に登場した人形も展示されていました。
劉備玄徳と諸葛亮孔明。これらの人形を製作した川本喜八郎氏は2010年8月23日に逝去されましたが、この日は奇しくも、諸葛亮孔明の命日でもあるそうです。

こちらは、魏の曹操と嫡子 曹丕。人形劇には、ストーリーテラーとして島田紳助・竜介が出演していたことも、今は懐かしい思い出です。

敵対していた蜀軍と戦い、七度捕らえられ七度放され、孔明に心服した孟獲。

横山光輝の長編漫画、三国志(1972年~87年連載)の原画。『桃園の誓い』

『曹操の死』

曹操高陵の出土品は海外初出展だそうです(日本では東京に次いで二番目)。写真撮影OKだったのでたくさん撮ってきましたが、とても全部は載せられません。「地球の歩き方」福岡特派員ブログ『リアル三国志の世界へ~九州国立博物館特別展示「三国志」』にも投稿していますので、興味のある方は併せてご覧ください。
三国志展を観た後は「第7回みゅーじあむ寄席 年忘れ落語会」を聴くため、1階ミュージアムホールへ。
春風亭一之輔さんと三遊亭天どんさんの二人会でしたが、橘亭門朗さん(前座)と遠峰あこさんも出演し、たっぷり2時間楽しめました。

九博の次の展覧会、「フランス絵画の精華~ルネ・ユイグのまなざし」のパンフレットを貰ってきました。
ルネ・ユイグはフランスを代表する美術史家で、31歳の若さでルーヴル美術館絵画部長に抜擢され、2次大戦中、ナチスドイツの略奪からルーヴルの貴重な絵画コレクションを守った人物だそうです。

今回の特別展「三国志」は、中国で発見・発掘された実際の出土品を展示するもので、言わばリアル三国志。この展覧会を通じて、私たちが親しんだ三国志と言う英雄たちの歴史物語が、1800年という時の流れを越えてぐっと身近に感じられました。(既に終了した展覧会の紹介ですみません)
九博の次期展示「フランス絵画の精華(2月4日~3月29日)」は、時代は17世紀から19世紀半ばまでということで、印象派が含まれないのが残念ですが、フランスのみならずイギリスやドイツ、日本からもフランス絵画の傑作が集結するということですので、是非こちらも観に行きたいと思います。ルーヴルやオルセー美術館で私たちが観た絵も含まれるでしょうから、それらとの再会も楽しみです。
《お知らせ》
「地球の歩き方」福岡特派員ブログに『太宰府から発信する九州ブランド~九州ヴォイス』をアップしました。併せてご覧いただければ幸いです。
