ケン・ローチ監督の「ルート・アイリッシュ」を観た。イラクで活動する民間軍事会社を描いた映画だ。民間軍事会社といわれてもピンとこなかった。自分の無知を反省した。現実を知るためにも、ぜひこの映画を観たいと思った。
民間軍事会社――今、戦争はその多くの部分をアウトソーシングしている。この映画では政府要人や民間人(ジャーナリストなど)の移動にあたっての警備を請け負う会社を描いている。警備といっても、いつ武装勢力から襲われるかわからない状況下での警備だ。襲われたら交戦する。従来なら軍隊がやっていた仕事を民間委託しているわけだ。ケン・ローチ監督の言葉によれば、戦争の「民営化」だ。
ルート・アイリッシュとはバグダット空港から市内の米軍管轄区域(グリーンゾーン)を結ぶ12キロの道路のことだ。世界でもっとも危険な道路といわれている。この映画はそこで起こった事件とその後の展開を描いたものだ。
その事件とは――市内の道路で民間軍事会社の警備員(コントラクターという)が警備をしているとき、1台の車が近づいてきた。これを危険と感じたコントラクターが激しく発砲した。車内の全員が死亡した。なかには子どももいた。
映画では2007年9月1日と設定されている。これは同年9月16日に起きたブラック・ウォーター事件をモデルにしていると思われる。その事件は、民間軍事会社ブラック・ウォーター社のコントラクターが、近づいてきた車に発砲し、さらに周囲にいた人々にも無差別に発砲した事件だ。当時のCNNのニュース記事によれば、発砲は約20分続いて、15台の車が破壊され、17人が死亡したという。
このような事件は当時よくあった。インターネットで検索すると、いろいろ出てくる。しかも治外法権の状態だった。だから、罪に問われることもなかった。さすがに今では法の整備はおこなわれたようだが。
映画では、市民に発砲したコントラクター(A)にたいして、同僚のコントラクター(B)が激しく憤る。その数日後に(B)は謎の死を遂げる。少年時代からの親友だった元コントラクター(C)は、(B)の死の真相を追う。
実はこの構図は企業あるいは国家の「闇」を追うサスペンス映画に似ている。古い革袋に新しい酒を盛った観がなきにしもあらずだが、それはともかく、民間軍事会社の存在をしっかり伝えてくれる映画だ。
(2012.4.26.銀座テアトルシネマ)
民間軍事会社――今、戦争はその多くの部分をアウトソーシングしている。この映画では政府要人や民間人(ジャーナリストなど)の移動にあたっての警備を請け負う会社を描いている。警備といっても、いつ武装勢力から襲われるかわからない状況下での警備だ。襲われたら交戦する。従来なら軍隊がやっていた仕事を民間委託しているわけだ。ケン・ローチ監督の言葉によれば、戦争の「民営化」だ。
ルート・アイリッシュとはバグダット空港から市内の米軍管轄区域(グリーンゾーン)を結ぶ12キロの道路のことだ。世界でもっとも危険な道路といわれている。この映画はそこで起こった事件とその後の展開を描いたものだ。
その事件とは――市内の道路で民間軍事会社の警備員(コントラクターという)が警備をしているとき、1台の車が近づいてきた。これを危険と感じたコントラクターが激しく発砲した。車内の全員が死亡した。なかには子どももいた。
映画では2007年9月1日と設定されている。これは同年9月16日に起きたブラック・ウォーター事件をモデルにしていると思われる。その事件は、民間軍事会社ブラック・ウォーター社のコントラクターが、近づいてきた車に発砲し、さらに周囲にいた人々にも無差別に発砲した事件だ。当時のCNNのニュース記事によれば、発砲は約20分続いて、15台の車が破壊され、17人が死亡したという。
このような事件は当時よくあった。インターネットで検索すると、いろいろ出てくる。しかも治外法権の状態だった。だから、罪に問われることもなかった。さすがに今では法の整備はおこなわれたようだが。
映画では、市民に発砲したコントラクター(A)にたいして、同僚のコントラクター(B)が激しく憤る。その数日後に(B)は謎の死を遂げる。少年時代からの親友だった元コントラクター(C)は、(B)の死の真相を追う。
実はこの構図は企業あるいは国家の「闇」を追うサスペンス映画に似ている。古い革袋に新しい酒を盛った観がなきにしもあらずだが、それはともかく、民間軍事会社の存在をしっかり伝えてくれる映画だ。
(2012.4.26.銀座テアトルシネマ)