Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

シューマン生誕200年

2010年09月27日 | 音楽
 N響の9月定期(Aプロ)はネヴィル・マリナーの指揮でシューマン生誕200年プログラムだった。
(1)シューマン:序曲、スケルツォとフィナーレ
(2)シューマン:ピアノ協奏曲(ピアノ:アンティ・シーララ)
(3)シューマン:交響曲第3番「ライン」

 マリナーは現在86歳。高齢の指揮者は多いが、マリナーもその一人だ。穏やかで角のとれた音楽。はったりは一切ない。こういう指揮者がバロックから古典派、ロマン派をへて近代現代の作品まで幅広く演奏するのは納得できる気がする。

 「序曲、スケルツォとフィナーレ」は1841年、いわゆる「交響曲の年」の作品だ。堂々とした交響曲第1番「春」の直後にかかれた小規模な曲。この曲は1845年に改訂されている。佐藤英(さとう・すぐる)さん執筆のプログラム・ノートによれば、改訂はおもにフィナーレを中心におこなわれたらしい。たしかにフィナーレは先行2楽章にくらべて音が厚い。

 ピアノ協奏曲も、その原型となる「幻想曲」がかかれたのは1841年。時期的にも「序曲…」と一部重なっている。「幻想曲」がピアノ協奏曲に拡大されたのが1845年。つまりこの曲は「序曲…」と同じ歩みをたどっているわけだ。独奏者のシーララは今年31歳だが、もっと若いころは内向的な演奏だった記憶がある。今は過度期のようだ。

 「ライン」はシューマンの交響曲のなかでもオーケストレイションに手を加えられることが多い曲のようだ。私は昔クレンペラーのレコードを愛聴していた。あれもそうとう手が加えられていたらしい。この日の演奏はどうだったのだろう。全体的にもやもやした音だったので、シューマンのスコアどおりだったかもしれない。ほんとうはそのことをプログラムに明記してくれると助かるのだが。

 閑話休題。月刊誌「フィルハーモニー」に上記の佐藤英さんのエッセイ「オペラ作曲家としてのシューマン」が載っていた。シューマンはオペラの作曲に意欲をもっていて、候補に選ばれた題材も多数あったそうだ。そのなかには「トリスタンとイゾルデ」、「ニーベルングの歌」、「ワルトブルクの戦い」(タンホイザー)、「アルトゥス王」(ローエングリン)も含まれていたというから驚く。

 考えてみると、シューマンは1810年生まれ、ワーグナーは1813年生まれなので、同じ文化的環境にあったわけだ。しかも2人のドレスデン時代はダブっていた。事実、交流があったらしい。上記のエッセイには交流のエピソードや、シューマン版の「トリスタンとイゾルデ」(全5幕)のあらすじが紹介されていて興味深かった。
(2010.9.25.NHKホール)
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