Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ヴォーン・ウィリアムズ「ロンドン交響曲」

2011年03月07日 | 音楽
 ヴォーン・ウィリアムズというと、ブラスバンドに熱中していたわたしのような人間には、「イギリス民謡組曲」の作曲家というイメージが浮かぶ。同曲とともにホルストの組曲第1番と第2番が入ったフレデリック・フェネル指揮イーストマン・ウィンド・アンサンブルのLPは宝物だった。

 最近では2006年にロジャー・ノリントン指揮のN響が交響曲第5番を演奏した。どこまでも澄みきった音の世界に触れて、ヴォーン・ウィリアムズとはなんであるかの啓示をうけた。前半に演奏されたベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が、ノリントン流にデフォルメされた演奏だったのと(それはそれで面白かったが)正反対だった。

 先週末には大友直人さん指揮の日本フィルが「ロンドン交響曲」(交響曲第2番)を演奏した。これもまた澄みきった音の世界。全4楽章からなり、第2楽章は緩徐楽章、第3楽章はスケルツォのパターンなので、定型を踏んではいるが、そこに盛られた音楽はヴォーン・ウィリアムズならではのもの。若いころにはラヴェルに師事したそうだが、いかにもと思える透明感だ。

 演奏にも快い緊張感があった。楽章を追うにしたがって、「これはひょっとしたら重要な演奏会に立ち会っているのではないだろうか」という気がしてきた。この演奏会は日本フィルの横浜定期の一環。東京にかぎらず全国のあちこちで重要な演奏会が開かれていて、これもそのひとつ、そのひとつに立ち会っている気がした。

 大友さんは若いころ日本フィルの正指揮者をつとめた。わたしはヴォランティアで機関紙のお手伝いをしていたので、インタヴューをしたことがある。そのとき、謙虚で、まっすぐな感性に、すっかり魅了された。当時はまだイギリス音楽に傾注してはいなかったが、その後、東京交響楽団にポストを得るとともに、イギリス音楽のレパートリーを開拓した。今ではすっかりスペシャリストのイメージを確立し、今回の「ロンドン交響曲」では風格さえ感じられた。嬉しいことだ。

 休憩後、2曲目はエルガーのチェロ協奏曲だった。チェロ独奏はソロ・チェロ奏者の菊地知也さん。菊地さんは以前にも、たしかソロ・チェロ奏者就任のさいに、同曲を演奏したと記憶している(それがいつだったか……)。あのときは鮮明な印象を受けたが、今回は印象が薄かった。

 最後は「威風堂々」第1番。アンコールに「グリーンスリーヴスによる幻想曲」。くつろいだ雰囲気を楽しんだ。
(2011.3.5.横浜みなとみらいホール)
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