Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

高関健/東京シティ・フィル

2022年01月16日 | 音楽
 高関健指揮東京シティ・フィルの1月定期。プログラム全体はオーソドックスなものだったが、手ごたえのある演奏会となった。

 1曲目はブリテンのオペラ「ピーター・グライムズ」から「4つの海の間奏曲」。期待していた曲目だが、硬い演奏だった。もっと柔軟性がほしい。また高関健/東京シティ・フィルのどっしりした音は、ブリテンのスリムな音とは齟齬があった。

 2曲目はラロの「スペイン交響曲」。ヴァイオリン独奏は戸澤采紀(とざわ・さき)。コンサートマスターの戸澤哲夫との父子競演となるので、注目を集めたが、感心したのは高関健がプレトークでそのことには一言も触れなかったことだ。プライベートなことと演奏とを切り離す潔さが感じられた。

 戸澤采紀の演奏はすばらしかった。太い音でぐいぐい攻める演奏だ。スリリングで、圧倒されるようだった。楽器もよく鳴る。プロフィールには年齢が記載されていないので、正確な年齢はわからないが、東京芸大を卒業後、現在はドイツのリューベック音楽大学で学んでいる。まだ若いヴァイオリニストだ。飾らずに自分の音楽をやる、堂々としてスケールの大きな、本格派のヴァイオリニストだ。

 オーケストラも張りのある音で応えた。シンフォニックな演奏だった。もちろんコンサートマスターのお嬢さんを支える特別な気持ちはあったろうが、それが余計な気配りにはならずに、遠慮なくオーケストラも攻めた。戸澤采紀も負けずに渡り合った。そのせめぎあいが見事にかみ合う演奏になった。

 戸澤采紀のアンコールがあった。クライスラーの「レチタティーヴォとスケルツォ・カプリス」だった。これも太い音でスリルのある演奏だった。

 3曲目はメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」。がっしりしたアンサンブルが崩れない演奏だった。のびのびと楽器を鳴らすが、どんなときでも音が濁らず、ニュアンスも豊かだ。最近の高関健/東京シティ・フィルの好調ぶりが実感された。というよりもむしろ、このような演奏が常時できる実力を、このコンビが身に付けたことが感じられた。

 個別のパートは省略するが、ひとつだけ挙げると、第4楽章(最終楽章)のコーダでのホルンの朗々たる響きに感銘を受けた。すぐれた一番奏者の音というよりも、パートとしてまとまった充実した響きが聴こえた。その響きは高関健/東京シティ・フィルのチーム力の象徴のように感じられた。
(2022.1.15.東京オペラシティ)
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