Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

原田慶太楼/N響

2022年01月17日 | 音楽
 3日連続の演奏会通いになった。疲れるが、どれも定期会員になっているオーケストラなので仕方がない。3日目は原田慶太楼指揮のN響。最近評判の原田慶太楼だが、わたしは初めてだ。どんな指揮者なのか。

 ホールに入って驚いたが、ほぼ満席だ。びっしり埋まっている。東京ではオミクロン株の影響なのか、新規感染者数が急増しているが(そのためかどうか、往復の山手線は空いていた)、そんな懸念はどこ吹く風だ。

 1曲目はショパンの「軍隊ポロネーズ」をグラズノフがオーケストレーションしたもの。なんというか、つまらないのだが、なぜつまらないかというと、リズム感がちがうからではないだろうか。ひとりで弾くピアノの前へ、前へと進むリズム感と、数十人で演奏するオーケストラの、アンサンブルを揃えるリズム感のちがい。そこからどうしようもない「もったり感」が生まれる。

 2曲目はショパンの「夜想曲 変イ長調 作品32‐2」をストラヴィンスキーがオーケストレーションしたもの。これはおもしろかった。なぜおもしろいのか、聴きながら考えた。考えついたことは、この編曲がショパンの原曲から離れて、完全に(といっていいかどうか、自信がないが)別の曲に生まれ変わったからではないか。まるで映画音楽のような、夢見るように甘い曲になっている。

 3曲目はパデレフスキ(1860‐1941)の「ポーランド幻想曲」。ピアノ独奏が入る曲で、ピアノ独奏は反田恭平。前述のとおり客席がほぼ満席だったのは、反田人気に負うところが大きいのだろう。

 反田恭平のピアノ独奏は、音の美しさ、タッチの多彩さ、楽曲把握の確かさなど、見事というしかない。だが、いかんせん、曲がおもしろくなかった。冒頭の物々しい音楽では、おっと思ったが、その後は(こういってはなんだが)凡庸な音楽が続いた。演奏時間約24分(プログラムの記載による)の大曲だが、わたしは持て余した。アンコールにショパンの「マズルカ ハ長調 作品56‐2」が弾かれた。曲が短すぎて、留飲を下げるには至らなかった。

 4曲目はストラヴィンスキーの「火の鳥」(1910年版)。目の覚めるような演奏だった。鮮やかな色彩感と躍動するリズム。生きのいいことこの上ない。若さの特権かもしれない。原田慶太楼の運動能力の高さが誇示される。たとえば中間部の鐘の連打が、舞台裏で連打され、その音がPAで増幅されてホール中に響きわたるなど、派手な演出もあるが、それがさまになっている。聴衆とのコミュニケーション能力も高い。会場は大いに沸いた。
(2022.1.16.東京芸術劇場)
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