Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ノセダ/N響

2023年06月12日 | 音楽
 ジャナンドレア・ノセダが指揮するN響を聴くのは4度目だ。前回2015年1月から8年たっている。ずいぶんいい指揮者になったと思う。前3回も鮮烈な印象を残したが、今回はそれに増して、粗さが消え、アンサンブルがしなやかにまとまっている。照度の高い色彩感と鋭角的なリズム感は変わらない。むしろ一層研ぎ澄まされている。

 1曲目はプロコフィエフの交響組曲「3つのオレンジへの恋」。前述のようなカラフルな音色とシャープなリズムはこの曲にうってつけだ。奇想天外、諧謔性に富む音楽が十全に描かれた。それにしてもこの音楽は、プロコフィエフでなければ書けない音楽だ。プロコフィエフ以外のだれがこんな音楽を思いつくだろうかと‥。

 私事だが、2002年5月にベルリンのコーミシェオーパーでこのオペラを観た。それはわたしのオペラ体験の中でも忘れられない体験のひとつだ。こんなに洒落たオペラがあったのかと思った。序幕で芝居見物人たちが現れ、それぞれ勝手な希望をいう。やがて芝居(オペラ)が始まる。芝居見物人たちはヤジを飛ばしたり、批評したり、笑い転げたりする。今でもその舞台がうっすらと記憶に残っている。演出はアンドレアス・ホモキだった。指揮はミハイル・ユロフスキー(現バイエルン州立歌劇場の音楽監督ウラディミール・ユロフスキーの父親だ)。

 2曲目はプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番。ピアノ独奏はウズベキスタン出身のベフゾド・アブドゥライモフBehzod Abduraimov。当初はアレクサンドル・トラーゼが予定されていたが、昨年亡くなったので、アブドゥライモフに代わった。

 プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番は前日に、阪田知樹のピアノ独奏、大植英次指揮の日本フィルで聴いたばかりなので、どうしても比較してしまう。結論的にいえば、アブドゥライモフのほうが、第4楽章(最終楽章)のパッチワークのように錯綜する楽想を、余裕をもって丁寧に描き分けていた。阪田知樹は肩に力が入っていた。

 アブドゥライモフのアンコールがあった。バレエ「白鳥の湖」のナポリの踊りをピアノ独奏用に編曲したものだ。軽やかなリズムが楽しかった。チャイコフスキーの「こどものアルバム」作品39に入っているという。

 3曲目はカゼッラの歌劇「蛇女」からの交響的断章。第1組曲と第2組曲からなり、第2→第1の順に演奏された。ド派手な部分もある賑やかな音楽だ。カゼッラはレスピーギと同様に、ムッソリーニの率いるファシスト党を支持した。レスピーギは途中から政権とは距離を置いたが、カゼッラは支持し続けた。
(2023.6.11.NHKホール)
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