平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

天使のくれた時間

2007年08月28日 | 洋画
 ジャック(ニコラス・ケイジ)は「金にしか興味のない男」「資本主義の申し子」「高層ビルのオフィスから世界を見下ろす男」「すべてを把握して疑問も迷いもない男」。
 13年間の恋人・ケイト(ティア・レオーニ)との空港での別れ。
 1年間のロンドン赴任。
 これが彼の運命を大きく分けた。
 結局、ケイトとは音信不通になり彼は現在の地位に上りつめて。
 しかし13年前、ケイトと別れずにいたら。
 この物語は天使によって、そんなifが現実に起こされてしまう話だ。
 この物語は人生にとって何が大切かを考えさせてくれる。

 さて、そのif。
 ケイトと別れなかったジャックの人生・生活とはどの様なものか?
 それはニュージャージーの小さな町に住む決して豊かでない生活。
 タイヤの販売を行っていて家のローンも十年ある。
 マンハッタンのお金に溢れた生活とは180度違うものだ。
 当然、ジャックはパニックに陥る。
 「いい女が下着姿で微笑みかけてくれる生活」から離れなくてはならない。
 「今までの自分は、今の自分より1000倍も格が上の男だったのにそうではない」という現実。門前払い。
 ジャックは落ち込む。
 タイヤを売って、子供の送り迎えをして、犬の散歩をして、その繰り返しの単調な生活に耐えられない。
 以前は気軽に買えていた2400ドルのスーツを我慢しなければならない。
 そのことで不満を言うと、妻のケイトは「以前のジャックは2400ドルのスーツなんかなくても満足してた男だった」と言う。
 このせりふには含蓄がある。
 人の幸せとは満足。
 何に満足するかは人それぞれだが、「2400ドルのスーツなんかなくても満足できる人間」の方が上等の様な気がする。
 ジャックもそのことに気がついていく。

 例えば
 チョコレートケーキを奪い合ってケイトとはしゃぐ生活。
 ケイトの誕生日に「アイ・ラブ・ユー」と歌える生活。
 結婚記念日に贅沢をして妻に喜んでもらえる生活。
 レストランで妻とダンスできる生活。

 ジャックは結局、ケイトとの生活を一番大切なものと思い、元の世界に戻ってもケイトととの生活をしようとするが(元の世界ではケイトはやり手弁護士でキャリアウーマンだった)、この作品は見る者に「あなたはどちらを選びますか?」「あなたは何が大切ですか?」と問いかけてくる。

★追記
 ジャックと娘のアニーとのやりとりが可愛い。
 アニーはジャックが以前のパパでないことに気がついている。
 宇宙人がパパに入り込んだと思っている。
 そして質問。
 「宇宙人さん、あたしの頭に何かを埋め込まない?」「子供は好き?」「チョコレートケーキミルクの作り方はわかる?」
 ジャックが「頭に埋め込まないし、子供は時々好きで、チョコレートミルクの作り方は何となくわかる」と言うと、アニーは「じゃあ、許してあげる」と言う。
 また、ジャックが家族が自分にとって一番大切なものだとわかった時、アニーは言う。
 「お帰りなさい、パパ」

★追記
 ジャックに近所のイベリンという女性と浮気を持ちかける時のせりふもなかなか。
 「今まで以上の関係を望んでいるなら、答えはイエスよ」
 「赤いドレスを着たのもあなたのため。娘をアニーと同じバレー教室に通わせたのもあなたに近づくため」
 「使わないタイヤを4つも買ってガレージにしまってあるのもあなたのため」
 ジャックは心揺れるが、友人に「大事な物を壊す気か」「火遊びならいいが、大火事になるぞ」と言われて思い留まる。

★追記
 妻のケイトの人物造型も深い。
 ジャックとの生活に満足している様に見えるケイトが本音を洩らす。
 「わたしだって自分の人生がこれでいいのかって思う時はあるわ。あなたほど人生に失望していないけどね。でも、あなたと結婚しなかったらどんな人生を歩んでいたかを考えることは、大事な宝物が消えてしまうことなんじゃないかって思うの」
 ケイトも現在の生活について葛藤することがあったのだ。
 これでキャラが薄っぺらでなくなる。


コメント (2)
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